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第32話 二度目のランチ


 まぁいいか。


 ここは口直しの為にコーヒーとアイスでも食べておこう。


 豊森先生は席に着くと、「いいかしら?」と、俺達に断りを入れてからコールボタンを押す。


 位置は庄平の隣だが、庄平。空になった皿をいつまでも悲しそうな目で見ていないで、もうちょっと端に寄れよ!


 ほら、豊森先生窮屈そうだぞ。


 すると店員が素早く俺達が座る席にやってきて、


「ご注文でよろしいでしょうか?」


 そう聞いてきた。


「あっ。はい。私はハヤシライスで」


 と、豊森先生が。

 貴女もハヤシライスを食べるのですね……。

 次に庄平が空の皿を店員に渡しつつ、


「俺も同じくハヤシライス! 駿も同じでいいか?」


 などと勝手に決めようとする。

 ちょっと待て。


「よくねぇよ! 一杯食べりゃ十分だ」


 嫌がらせも程々にしろよテメェ。何杯食わす気だよ!


「「えっ!?」」


 すると、庄平と豊森先生が同時に驚愕した顔をする。

 何!? その表情。

 俺、なんか変な事言ったか?


「えっと、コーヒーとバニラアイスでお願いします」


 口直しだ! 口直し。

 苦いコーヒーと甘いアイスで色々と味覚を掻き乱すんだ。


「「??」」


 だからなんで二人は不思議そうな顔してるんだよ!


「駿。もしかして具合でも悪いのか?」


 心配しているといった表情で庄平がそんな事を聞いてくる。

 今の会話のどこに、俺を心配する要素があった?

 俺的にはお前の頭を心配したいが、


「いや、別にそんな事はないぞ」


 と、怒りを表情に出さないように配慮しながら、笑顔でそう答える。

 俺はできた大人なのだ。


「そ、そうか……。いつもだったら二杯は確実に食べていたからな……」


 食い過ぎだろ。


「そうね。尾野君、ハヤシライスの事になると目がないから……」


 だからどこの駿だよ、それは。

 というか、なんで俺がハヤシライス好き設定なのを豊森先生は知っているんだ?

 清高学園は給食制じゃないから、学校でハヤシライスを食べるような機会ないだろう。


 ま、まさか俺。弁当にハヤシライス持って行っているの設定なのか……?


 クソッ。どいつもこいつも俺にハヤシライスやキノコを食わそうとしやがって。


 もしかしてこれは、この世界を乗っ取ったという魔物の抵抗の一部じゃないだろうな?


 なんて陰湿な嫌がらせをしやがるんだ……。


「いや。ちょっと今日は気分を変えてみたかったんだ」


 等と、適当な事を言ってごまかす。


「それならいいけど……」


「尾野君。最近色々と大変なようだから……」


 二人は真剣に俺を心配してくているようだから、余計にタチが悪い。


「それよりも、今日は二人で遊んでいたの?」


 と、豊森先生は話を切り替えて、そう質問をしてきた。


「いんや、偶々そこで会ったんだよ。んで、俺が昼飯に誘ったんだ」


「へぇ、そうなんだぁ」


 庄平! タメ口ぃ!

 先生にタメ口使うなよ!


「んで、さっきまで、駿の無双した話を聞いてたわけ」


「無双した話?」


 なんの話だ? 俺はゲームの話なんてしてねぇぞ?


「あぁ、変態転校生や変態教師。それとストーカーとか色々と退治した話を詳しく聞いていたんだ」


「そ、そう……」


 おぉい! 庄平、お前目の前に被害者が居るんだぞ!?

 態々その被害者に辛い事を思い出させるような真似をするんじゃない!

 そんなんだからお前はモブなんだよ!




「うっ……」




「「!?」」


 一瞬豊森先生が頭を押さえ、苦しそうに顔を歪めた。


 辛い記憶を呼び起こさせてしまったのだろう。


「豊森先生。大丈夫ですか? おい、庄平。ここでするような話じゃないだろう」


「ん? おっと、悪い悪い」


 等と、平謝りをする庄平。

 本当にわかってんのかなぁ?


 すると、今度は、


「お待たせいたしました。ハヤシライスでございます」


 と、店員がハヤシライスを二つ持ってきて、庄平と豊森先生の前へ置く。


 豊森先生もいつの間にか苦しそうな様子から回復したようで、スプーンを手に取る。


 とても上品な手つきだ。


「うひょっ、最っ高。ベチャクチャベチャクチャ」


 しかしながら、庄平は犬のように食べ始めてしまう。

 やっぱりコイツ、バグってるわ。


「……」


 俺はなんとも言えない表情で見ていたが、


「うふふ」


 なぜか豊森先生は慈愛に満ちた表情で庄平を見ている。


 えっ? それどういう感情?


 豊森先生は普段どういった感性で世の中見てんの?


 俺は納得できない気持ちのまま、次に運ばれてきたアイスを食べることに集中した。













 家に帰ったのは午後3時を過ぎてからだった。


 食事代は全て豊森先生が払ってくれたが、現実世界では俺と同い年のはずなので、なんとも微妙な気分だ。



 思わぬところで時間を潰された為、帰ってからは自室に篭り、急いでボイスレコーダーの使い方を説明書で確認をした。


 決行するならば長友議員の賄賂疑惑がニュースで流れたその日の夜。




 いつニュースに流れるかがわからないため、今日かもしれないし、明日かもしれない。


 その為に早めに準備をしなくてはな。




 はぁ……。人生でこんな事でボイスレコーダーを使う日が来るなんて思わなかった。




 使わずに終わるならば良いんだけどな……。




 スパイ映画に出てくる主人公のような真似事、俺にはできないからな。





----------------------------------


―豊森 奈菜視点―


 今日、昼食の為に入った洋食店で私が副担任として受け持つクラスの生徒二人と偶然会った。


 二人の内、一人は今何かと学園内で有名な生徒である尾野 駿君だった。


 尾野君は何かと心配になる生徒だ。


 最近、野和さんの件に続いて私、三田川さん。そして学校中の女子生徒が被害に遭った盗難、盗撮犯の件。

 彼は短期間で続けざまに事件を解決し続けている。


 彼は事件を解決する度に傷つき、心をすり減らしているように見える。


 本当に、心配だ。



 私は二人に声をかけると、盛田君の方が先に反応し、一緒にお昼を食べようと誘った所、快く了承してくれた。


 私は注意深く尾野君を観察し、彼に変わった点が無いか確認をする。


 やはり食欲不振という影響が出ているようなので、酷くなるようだったら一度ご両親に相談した方がいいかもしれない。


 そして、今日はどんな会話を盛田君としていたのだろうか。と、少し気になり、二人に聞いてみると、



「あぁ、変態転校生や変態教師。それとストーカーとか色々と退治した話を詳しく聞いていたんだ」



 と、盛田君が答えてくれた。


「そ、そう……」


 私としてはあまり思い出したくない事。


 尾野君は私の気持ちを察してか、慌てているようだけど……。







ジッ――――――。ジジジッ―――。




「うっ……」




 突然、頭が痛くなった。



 そして急激に押し寄せられる記憶……。



 これは……きお……く?




「ぐひひひひ。そぉら。もう諦めなぁ!」


 羽間が不気味な笑みを浮かべながら私をベッドに押し倒した。



 これは……この記憶はなんだろうか……。



「いやぁぁ!」



 私は必死に抵抗している。


 なんだろう……。


 こんな事は起きてはいない。


 だって私はあの日、あの時、尾野君に助けられて……。



「ぐひひひひひ! 奈菜ぁ。お前の体最高だなぁ! これから毎日味わってやるぜぇぇ」



 あぁ……。そうか……。私はここで……。



ジジジッ―――。







「豊森先生。大丈夫ですか? おい、庄平。ここでするような話じゃないだろう」


「ん? おっと、悪い悪い」


 私は我に返った。


 あれ? 私は今、何を考えていたんだっけ?



「お待たせいたしました。ハヤシライスでございます」



 ハヤシライス……?


 あぁ、そうだった。


 私はお昼ご飯を食べようとしていたんだった。


 そういえば、なんで私はハヤシライスを注文したんだろう――――。






 隣で必死に食べている盛田君を見て、私は今、この場で平和な気持ちのまま食事を取れている事に感謝し、ハヤシライスを大切に味わった。









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―現実世界。妖怪界防衛基地の一つ―




 異世界へ連れて行かれた日本人を救出する目的で設立された組織、『日本異世界召喚対策室』に所属する串田は、現在妖怪界に置かれている軍事基地を訪問していた。


 ここは、榊 琴音によって要請を受けた基地の一つで、大きな滑走路が何本も存在する空軍基地の役割も持っている。


「これはこれは。異世界召喚対策室のお方がわざわざお越しいただけるとは光栄ですなぁ」


 と、斎藤を榊 琴音の所へ送り届けてきた串田を歓迎する基地指令『綱倉つなくら』大佐は、笑顔で串田を来賓室へと出迎えた。


「突然のご訪問申し訳ありません。初めまして。串田と申します」


 串田は軍からの歓迎は慣れていた。

 彼等日本異世界召喚対策室からもたらされる仕事は、軍にとって出世の近道となるものばかりである。

 なぜならば、異世界人と交渉した結果決裂した場合は、戦争へと発展する事が多々あるためである。

 日本人をわざわざ召喚しなければ保てないような世界の住人を相手にするのだ。それはもう楽な戦争となる事が多い。

 その為、日本異世界召喚対策室は戦争を発注するいい顧客となってしまっている。


 一方串田にとっては、そのお客様対応は自分達の交渉能力不足の現れを見せつけられているようなものなので、気分は良くない。


「さて、今日はどのようなご案件でしょうか?」


 どうやら綱倉司令は、串田が戦争の発注をすると思っているようだ。

 だが、今回の串田の目的は違う。


「榊家の要請にお応えしたようですが、その意図をお伺いしたいのです」


 そう串田が言うと、


「……と、いいますと?」


 何も裏が無い綱倉司令にとっては、串田の質問が理解できなかった。

 自分の質問がうまく伝わっていないと感じた串田は、丁寧に説明をする。


「この基地は、妖怪界における人間勢力の辺境地では、かなりの規模を誇っています。

 そこを前提としまして、今回榊家の依頼した内容の規模は異常だと感じました。

 基地の滑走路。格納庫や整備された土地全てを一時的に使用する許可を与えましたよね?

 これでは、いざという時対応ができないのではないですか?」


 串田の説明に納得した綱倉司令は、頷きながらその質問に答える。


「あぁ、その件でしたか。それならばご安心を。

 例えば、我々はあのような広大な滑走路を保有しておりますが、それは過去の事例から残しておいた方がいいと判断しているだけで、現在では滑走路を使用する機体なんて殆どありませんよ。

 我々妖怪界駐在軍は航空機であっても、人間界にあるような旧式なものではなく、垂直離着陸ができるよな機体ばかり。

 仮に滑走路が全ての航空機で埋まったとしても、いざとなれば倉庫の外から直接飛び出せばいいのですよ」


 あまりにも楽観した考え方をする綱倉司令に対し、串田は開いた口がふさがらない。


「それにですよ? ここ最近では、敵対する妖怪がこちらの勢力圏内に入ってくる事は少なくなりました。

 あったとしても、小鬼が月に数体程度。これではスクランブルする為の費用に見合っていない現状ですよ。ですので、我々としては、榊家の要請に答えるだけで、上層部への聞こえが良くなるというのが本音です。

 まぁ、仮にこの基地が使えなくなったとしても、最近この基地には滑走路や格納庫にも置けない"デカ物"が入ってきました。最新型ではなく中古ですが……。それさえあれば我々に怖いものなんてありませんよ」


 隠す気もなく出世の為とも答える綱倉司令。


「……榊 琴音は、一体何をこの基地に連れてこようとしているのですか?」


 これは上司である斎藤にも伝わっていない情報である。

 この基地司令が何か知っているのではないかと考え、串田は質問をした。


「式神……とだけは聞きましたよ?」


「式神?」


 榊家の主力武器は式神である。


 自身が作成した。もしくは過去の人間が作った媒体を元に仮の命を吹き込む、もしくは何かしらの原因で弱体化し漂う神をブチ込む術である。


「今回、作戦に参加している人物には、あの『榊 琴音』殿がいらっしゃるではないですか。

 期待の世代の人物である彼女であれば、数百どころか、数千の龍並みの式神を連れてきたとしても不思議ではありませんよ」


 そう言って綱倉司令は笑っていた。


「それはそうと、そちらの上司さんは、心配性ですねぇ」


「えっ?」


 串田は綱倉司令が何を言っているかがわからなかった。


「一応、彼等を呼び出すとは。

 私としては、この件は何かあった場合、この基地所属の者達を使いたかったので、別基地所属の者達は参加させたくはなかったのですが……」


「……」


 本当に何の事かわからない串田。


「まぁ、いいでしょう。これもあなたの上司、斎藤さんのご依頼です。そう言えば、先ほどその斎藤さんがお呼びしていた者達が到着したようですから、来てみては?」


「はぁ」


 とりあえず、自身の上司である斎藤が呼び寄せた人物達というのが気になり、確認してみることにした。








 その後、綱倉の部下に案内をされ、別の部屋へと向かった串田。


「失礼します」


 と、串田は扉の前で中にいる人物に声をかけ、部屋の中へと入った。


 そして、中にいる者達を見た瞬間。


「(嘘だろ……!)」


 絶句した。


 中にいた人物は二人。


 一人は田舎で農作業をしていそうな格好をした白髪だらけの老婆。


 二人目は顔が見えない程の色の濃いバイザーを付けたヘルメットを被った、特殊部隊隊員の格好をした者。


「(よりによってこの二人を……)」


「……くひひ」


 すると、老婆の方が串田を気味の悪い笑い声を出しながら見た。


「(斎藤さんは何を考えているんだ……)」


 串田は冷や汗を流しながら二人を見続けた。


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ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:先手必勝! 『雀の涙』!


琴音:「ほぅ。高圧水流による攻撃か。だが甘い! 結界防御『二十重結界』」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:なんと、防いだ!? だが――――。


琴音:「はっはっは。一枚の結界も破れないではないか。本編に登場していない技で虚をつこうとしたみたいだが、無駄だったようだな。ふふん、だが、鳥頭にしてはよく頑張った方じゃぁないか~?」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:クチバシドリル!


琴音:「なっ。まさか自ら出した水流に飛び込み加速して結界にクチバシ攻撃をするだとぉぉぉぉお!?」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:一枚、二枚、三枚ぃぃいいいいいい!!


琴音:「馬鹿な! 結界が破られていく!? くぅぅぅう! 流石は私が一から作り上げた式神。能力は落ちたといえど、その力は本物かぁああ!!」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:七枚、八枚、九枚ぃぃいいいいいい!!


琴音:「舐めるな。新米式神風情が! 私が呼び出せるのは貴様だけだとは思わぬことだ! いでよ、我が式神達! この愚かな新米式神に圧倒的な力の差を思い知らせてやるのだぁああああああ!!!」


~今日の『琴音とちゅん太のハートフル解説』は諸事情により中止になりました~

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