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第31話 ハヤシライス


「いや~。ここのハヤシライスはめっちゃ美味いよなぁ~」


 現在、昼食を食べる為に寄った洋食屋。上機嫌でハヤシライスを口いっぱいにほおばっている庄平を見て俺はげんなりとしていた。

 洋食屋はとても落ち着いた雰囲気で、穏やかなBGMが流れている。


 客はそれほど多くはないが、皆にこやかに食事をしていた。


「ん? どうした、食べないのか? お前好きだろ? これ」


 そう言った翔平は目の前にあるハヤシライスを食べてウキウキしていた。


「あ、あぁ。食べるよ」


 こともあろうに庄平は店に入って直ぐにハヤシライスを二人前頼みやがった。

 しかも大盛りを。

 恐らく友人設定の為、俺の好みを把握していたのだろう。


 ……訂正しよう。何故かこの世界での俺はハヤシライス好きとして設定されている。

 だが実際、俺はハヤシライスが苦手なのだ。


 いや、俺も別のものを食べたいと言ったんだよ? だけど、翔平から、


「えっ? 駿。もしかして具合が悪いのか……?」


 と、本気で心配されてしまった。

 そんな事言われたら、俺は不自然さを出さないために頼むしかないじゃないか!


「お前、そういえばこの店に来たら必ずハヤシライスを頼むよなぁ」


 俺にまた変なキャラ設定加えるんじゃねぇ!

 もう二度とこの店に来るものか!


 俺は意を決してハヤシライスをスプーンを入れて、口の中へと運ぶ。


「ぐぐぅぅ……」


 これは腹の音ではない。俺の声にならない叫びだ。


 味……。この甘さが嫌いだ。ご飯にかけるものは甘くなくていいのだ。あ、餡ころ餅は別ね。あれは別物と認識している。


 香り……。ケチャップを大量にかけられたかのような匂い……。ケチャップ自体は苦手ではないが、これほど匂いが強いと気持ちが悪い。


 歯ごたえがあるマッシュルーム……。結構大きな塊の癖にこいつ自体に味が無い。ある味と言えばハヤシライスの味だけだ。ただでさえ、きのこは嫌いだというのに……。


 とにかく俺はこのハヤシライスという料理は苦手なのだ。

 それなのに目の前に居るこいつときたら……。


「程よいコクと深みがある甘さ。食欲を駆り立てるこの芳醇な香り。そして歯ごたえのあるマッシュルーム。これらがバランスよく合わさり、究極の一品となっている。いやぁ~やっぱりハヤシライスは最高だよなぁ? 駿」


 俺と間逆の感想を言ってやがる。


「おう。そうだな」


 適当な返答をしておく。

 あぁ、店の正面にある牛問屋チェーン店の牛丼が食べたい。

 ホクホクのご飯の上にあるキラキラと汁の反射で輝くあの牛肉を……!!


「もぐもぐ。ちゅるちゅる。ぺちゃぺちゃ」


 ん? 何の音だ?


「じゅるる。じゅるるるる」


 うわぁ、庄平は皿を舐めるようにハヤシライスを食べてやがる!


 ってか汚い音を出すな!


「うっめ! うっめ。じゅるるっ」


 うへぇ~……。行儀が悪過ぎだろ……。

 食欲が更に無くなる。

 くっそぅ。俺はこいつを目の前にして嫌いな飯を食わなきゃいけないのか……。


「うっめぇぞぉ~。こいつぁ~うっめぇぞぉ~」


 うるせぇ! 黙って食えねぇのか!?







 食べ終わった後。

 そう。頑張って食べ終えた後、


「どうした? 悩み事か?」


 と、唐突に庄平に聞かれた。


「ん? 何でそう思う?」


 さっきまでお前の汚い食事姿に悩んでいたけどな。


「いや、難しい顔をしながら食べていたから」


 それはお前のせいだよ。


「いつもの駿なら、ハヤシライスを目にしたら発狂して涎やらいろんな液体を垂れ流しながら食べてたからなぁ」


「どこの駿だよそれは!!」


 そいつ明らかにヤバイ薬入りのハヤシライスを食べているだろ!!

 ってか、今の条件全てお前に当てはまるじゃねぇか!


「いや、だからお前だよ。今まで気付いてなかったのか……?」


「そんな食い方、今まで一度もしたことねぇよ!! ……はっ!?」


 まずい。ここは別の世界だ。あくまでもこいつの知っている尾野 駿の設定通りにしないとまずい。いろんな液体を出しながら飯は食いたくはないが、話を合わせる位のことはしておいた方がいいのでは……?

 俺はそう思い少し焦った。が、


「おっかしぃなぁ~。そうだったかぁ~? まぁいいか」


 と、庄平はそう首を傾げただけで、とりあえずは変にこれ以上疑うことはしなかった。

 よし、単純な性格で助かった!


 だがなんだ? この屈辱的な気分は……。

 怒りと悲しみを拳に込めて、今すぐそのトボけた面に叩き込んでやりたい。


「で、何かあったのか?」


 再びそう聞かれた。


「ん……あ、あぁ」


 ハヤシライス好きの設定はなんとか誤魔化せたが、別の何かがあるのではないかと庄平は疑ってくる。

 無駄に鋭い。


「最近、駿の身の回りでいろいろと起こりすぎて、気が休まる時が無いからかなぁ。と最初は思ったが、どうも違うような感じがしてな。また厄介な事件に首を突っ込もうとしているのか?」


 なんだこいつ。エスパーか?

 その能力で俺がハヤシライスを食べたくなかったと察して欲しかった。


「うっ。……ん……まぁ」

 俺はそんな曖昧な返事をした。


「まったく。お前はいつも無茶ばかりしやがって」


 呆れつつも苦笑いをしている。

 どうやら坂江さんや野和さんのように心配して怒るという事はないようだ。


 怒られるというのもありがたい話なのだが、俺の場合事件を解決しなくては元の世界に帰れないのだから仕方が無いと思う。


「いや、だけど今回は警察に任せたよ。多分今までのような危険なことにはならない……と、思う」


 完全に予想と言うよりかは希望だけど。


「そうか。もし危険なことになりそうだったら、遠慮なく俺を呼べよ」


「え?」

 俺は一瞬野次馬根性で庄平がこんな事を言い出したのかと思った。

 だが、目は真剣であり、決してふざけているようには見えなかった。


 彼なりに俺を心配してくれている。という事なのだろうか?


「あぁ……分かった。だけど最初に呼ぶのは警察になるかと思うけどな」


「そりゃそうか。ハハッ」


 庄平はそう寂しそうに笑った。

 自分では力が及ばないと突き放されたとでも思ったのだろうか?


 そうは言っても俺は庄平を巻き込むつもりはない。

 いや、だってそれは当然だろう? いくら目の前の庄平がデータであり、ただのNPC的存在だとしても、こんなリアルな世界でむやみやたらに一般人を盾にするなんてやりたくない。

 もっとゲームっぽい作りだったらやってたかも知れないと思うと、ちょっと自分自身に対し、嫌な感情が出てきてしまう。考えすぎだろうか?


 庄平が見るからに気持ちが沈んでしまっている為、俺は話題を変えた。


「そういえば、庄平。神命とか羽間や紫藤が捕まった時の様子知りたがってたけど、今教えようか?」


「良いのか!?」


 おぉう。見るからに気持ちが切り替わったな。


「あぁ、勿論だよ」





 それから俺は鬼畜主人公、ストーカーで捕まった羽間や、盗撮盗難の犯人紫藤。その他にも野和さんを付けねらっていたストーカーの話もした。


「あははははは! そいつら馬鹿だなぁ!」


 庄平は捕まった犯人達の最後を笑っていた。

 笑いのポイントは分からないが、楽しんでくれて何よりだと思う。

 ただ、もう少しボリュームを落として笑っていただきたい。

 周りの人達は気にしていないようだが、マナーが悪いだろう。


 こんなことならば彼を家に誘って、そこで話をすればよかったと、話し終えたから気付いた。





 さて、一通り話し終えたから俺は帰ろうかな。


 そう思った時、




「あら? 尾野君? それと、盛田君じゃない」




「「あれっ!?」」




 ここで、更に意外な人物が現れた。


「豊森先生!?」


「奈菜ちゃん!?」


 なんと、ここに来て俺のクラスの副担任であり、ゲームのヒロインの一人でもある、豊森 奈菜が姿を現したのだ。


 と、いうか庄平よ。お前も先生を下の名前で呼ぶのだな。

 完全に舐めてるだろぅ……。


 その点、俺は真面目な生徒であるため、ちゃんと苗字で呼んでいる。


「二人はもう食べ終わったのかしら?」


 そう豊森先生は聞いてきた。


「あっ、は――――」


 はい。と言おうとしたが、


「今から二杯目を食べる予定です」


「ひぇっ!?」


 なんと、庄平はおかわりを所望しているではないか。

 マジかよお前。

 俺と一緒に大盛り頼んでたじゃん!

 お前の胃袋どうなってんの?


「あら? そうなの? なら、私もご一緒してもよろしいかしら?」


「どうぞどうぞ」


 どうやら豊森先生は俺達と一緒に食事を取りたいらしい。


 完全に帰り損なったな……。


琴音:「はい、ということで今回もやってきました特別解説役の琴音です」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:雀の形をした式神、ちゅん太です。


琴音:「では今回の解説に参りましょう」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:よろしくお願いします。


琴音:「今回もちゅん太君から質問があるとのことですが?」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:はい。話の展開が早すぎて時系列がわからなくなってきました!


琴音:「ふむ。では、簡単にまとめてみましょう。内容は尾野さん視点です」


水1日目鬼畜主人公逮捕

木2日目豊森先生追跡

金3日目羽間逮捕

土4日目入院中

日5日目入院中、目覚める。

月6日目退院、三田川の件を相談。

火7日目三田川編入。不良達親玉捕まる。

水8日目紫藤死亡、野和さんと三田川さんと自宅に泊まる。榊家接触。

木9日目朝、半田雅人現れる。学校は休校。夜、半田雅人尾野家襲撃。

金10日目登校日。生徒会長にお礼を言われる。坂江の弟の犯罪を止める。警察署襲撃事件発生。

土11日目昨日事件の事情聴取。片仲議員の計画佐々木刑事に伝える。長友理音及び坂江さんが尾野家に。

日12日目ボイスレコーダー購入。帰り道庄平に合う。


琴音:「こんな感じかな? 間違っていたらごめんね」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:うぅん……こう見ると尾野さんは短い期間で何度も死にそうな目に遭っていますねぇ……。

 こうなるとますます僕の力が元の状態のままなら。と思っちゃいますけど、以前質問した時悪霊達に対抗できなかった理由を聞いた際何か隠していたようですけど、琴音様。一体何だったんです?


琴音:「……世の中にはね? 知らなくてもいい事というのがあるのよ。ちゅん太」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:こっちも命が掛かっているんですよねぇ。教えてくれませんか? 僕のクチバシが暴れる前に。


琴音:「ほぅ……、産まれたばかりの幼き雀が、大きな口を叩いたものだ。身の程をわきまえぬ物言いをする舌は切ってくれようか?」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:本性を現したな? 狐面の巫女よ。その心の奥底によほど暗い情意があるとみえる。魔を祓う為の存在としては更生してもらう必要があるようだ。


琴音:「吐かせ、ひよっこぉ! どちらの方が立場が上か、躾をしてやろうか!」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:よかろう。躾が足らんのは貴様の方だと知るが良い!


~巫女 VS 雀 の戦い勃発~

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