第29話 悪徳政治家の陰謀を阻止せよ
明日も投稿予定です。
その後は3日後となります。
翌日。土曜日。
ゲーム内生活11日目。
俺は昨日の件で反省をしていた。
焦りすぎた上に、興奮しすぎて我を忘れるなんて間抜けすぎる。
反省する点の一つ目。ゲームをプレイしていた時の情報で、不良達が銃器を持っていないことは知っていた。
だが、洋太がナイフ等の武器を所持していた可能性はある。
いくら俺自身の防御力が高くなっているとはいえ限度を知らないので、俺はナイフを防御できる体なのかどうか知らない。
二つ目。洋太は魔物化していないという自信はあったが、根拠が無かった。
あの時頭に血が上っていた事もあり、冷静さを欠いていたが、どうして鬼畜主人公達と洋太は違うといえるのだろうか?
変態度? まっさかぁ~。どこにそんな根拠があるってんだよ。
この世界は化け物化したゴミ共や、強すぎる雀のちゅん太、人格がちゃんとあるのか疑わしい警官等いろいろとおかしい要素が存在する。
雀と警官達は味方で良かったが、この世界に入り込んでいるゴミ共の数はまだまだ居るはずだ。
「残りは……あと2組」
残りの2組は俺の手には負えない。
今までのような単なる変態共とは違う。
単純に残りの2組の勢力が大きすぎるのだ。
ほんと、鬼畜主人公はよく倒せたと思うほどだ。
来週以降から起こりうる事件について、佐々木刑事に連絡をしなくてはいけない。
今日か明日話を聞きに来る"かも"しれないと言っていたが、本当に来るのだろうか?
既に次の事件が起きるまで時間が無いかもしれないのだ。
こちらから話してみるか?
そんな事を考えていると、
プルルルルルル。
スマホが鳴った。
おぉ! 佐々木刑事じゃないか!!
なんて計ったかのようなタイミングだ。監視でもされているのか? 俺は。
「おはようございます。尾野です」
俺は通話ボタンを押して挨拶をする。
「<あぁ、おはよう。今時間良いかな?>」
「えぇ、もちろんです」
佐々木刑事の話は単純だった。
俺が昨日少しだけ話したトイレで不良達の話を聞いた。という件をもう一度詳しく聞きたいとの事だった。
「丁度良かった。僕も昨日伝え忘れていた事があったんですよ! ちょっと周りに聞かれちゃまずい内容なんです」
「<ん? そうなのかい? わかった。直ぐにそっちに迎えに行くよ>」
「分かりましたー」
俺はそう言って電話を切ると、早速出かける準備を開始した。
そして、今現在。俺は警察署に居る。
本当は自宅で話を聞くつもりだった佐々木さんに、俺は家では話せない内容があると警察署に連れて来てもらったのだ。
最初に軽く不良達がトイレで話していた内容をでっち上げた後、俺が話したかった事へと移行する。
「それで? なんなのかな? 周りに聞かれちゃ拙い話ってのは」
佐々木刑事が不安そうな顔をしながらそう聞いてくる。
そんな顔をしないでほしいものだ。
「えっと、国会議員の長友さんってご存知ですか?」
「あぁ、勿論だよ。この市の出身の議員さんだからねぇ。しかもあの長友財閥会長の息子さんでしょう? それが何か?」
「実はその長友議員の娘さんが、僕が通っている学校の1年生なんですよ。名前は『長友 理音』といいます」
そこまで言うと、佐々木刑事は納得したようで、
「あぁ! なるほど。もしかしてまたストーカーかな? はぁ、まったく。君の通っている学校は変態による被害が多いなぁ」
と、悲しそうな目をしながら同情された。
「実はちょっと違うんですよ」
変態被害が多いことは否定はしない。
「ん?」
佐々木刑事は今日の相談についてどこか楽観視しているようだが、今回の事件はそう甘くは無い。
「偶々。本当に偶々ですよ? 昨日学校へ向かう途中長友さんの後を付けていた怪しい二人組がとんでもない事を話しているのを聞いてしまったんですよ」
「はぁ? また君は危ないことをしてぇ!」
ありゃりゃ。佐々木刑事が不機嫌になってしまった。
「偶々聞こえてしまっただけですから。仕方が無いでしょ? まず、その二人の特徴は黒いスーツ姿でサングラスをかけたチビとノッポの二人組でした」
こうして俺は今度の事件の詳細を話し始めた。
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―尾野 駿の回想―
「親分の趣味は変態だなぁ」
最初にそう切り出したのはノッポの方だった。
ノッポとチビは学校で長友 理音の後をつけ、学校へ入っていく姿を見届けた後、二人は薄暗い路地へ入っていた。
「あれでも高校生みたいだぞ。見た目中学生位にしか見えないけど」
次にそう言ったのはチビの方だ。
「それよりも計画ってなんだっけ? あの子の監視だけだっけ? 俺、早く帰りたいんだけど」
「馬鹿かお前。まさかまた寝てたのか!?」
「す、すまん」
ノッポはチビに怒られ小さくなっている。
「あのな? まず片仲の親分が政敵の長友を賄賂の冤罪で陥れる。その後、政治家を辞職しろと迫り、それでもいう事を聞かなければ3日後にあの娘を誘拐して脅しをかける。そういう計画だっただろうが!」
「へ~」
「今知りましたって顔をしてんじゃねぇ!」
パシンとノッポは平手を食らわされる。
頭を叩こうとしたが手がそこまで届かなかったからだ。
「わ、悪かったって! ごめんよ~」
「ったっく。使えねぇ奴だよほんとにお前は!」
―尾野 駿回想終了―
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「ってな事を話してたんですよ」
「…………」
俺が伝え終わると佐々木刑事は黙ったままだった。
ちなみに今の台詞。ゲーム内での台詞であった。
もちろん俺がこの世界に来てからノッポとチビには会ってはいない。
実際は本来ゲーム内で鬼畜主人公が昨日だか一昨日、偶然聞いた内容だったのだ。
「…………」
佐々木刑事は俺を見つめたまま、尚も黙ってしまっている。
「あの……。大丈夫ですか?」
あまりにも反応がないので聞いてみた。
「なん……なんだ」
「え?」
ようやく話し始めたかと思えばうわ言のように呟いただけだ。
「なんなんだよぉおおお! 今まで変態共の処理だけしてたと思ったら、今度は政治家の陰謀を止めろだとぉぉおおおお!?」
「さ、佐々木刑事!?落ち着いて下さい!!」
やべぇ。佐々木刑事の気が狂った。
「しかも今の話で出ていた長友議員の政敵である片仲議員といえば、あの大物政治家の片仲 周蔵かぁあああああ!!?」
「そ、そうだと思います」
「ふざけるなぁぁあああ!!! そんなのどうやって止めるっていうんだぁああああ!!」
「ひぃぃぃぃ!!」
その後、騒ぎを聞きつけた別の刑事さんが止めてくれるまで佐々木刑事は発狂をしていた。
我に返った佐々木刑事は俺に醜態を晒したことを謝罪し、政治家の争いの件は何とかする。と言って俺を家まで送ってくれた。
「佐々木刑事もストレス溜まってるよなぁ……。ってアレは人格をコピーした式神なんだっけか? ……なら別にいいか」
深く考えないようにした。
俺は自宅の扉を開ける。
早く部屋に入って疲れを取りたい。
そう思い、玄関に入ると、
「あ、兄貴お帰り~」
「真希のお兄様! お久しぶりです。お邪魔しておりますわ」
「ただいま~。あ、どうも~久しぶ……え?」
長友 理音……だと?
ちっこい背で、赤い髪のツインテール。間違いない。長友 理音だ。
そこには長友 理音が妹の真希と一緒に立っていた。
何故だ? 何故ここに居る……!
俺は目の前に長友 理音が居ることが信じられなかった。
「どうしたんだ? 兄貴」
妹は目の前で固まっている俺を不思議に思ったのかそう聞いてきた。
「あ、いや。なんでもない。いらっしゃい長友さん。ゆっくりしていってくれ」
「フフフ。ありがとうございます」
長友さんは丁寧に頭を下げて礼を言ってきた。
訂正しないところを見ると、彼女はやはり長友 理音らしい。
あれ? なんかキャラ違くない?
実際に見た長友 理音は、そこに居るだけで気品が漂ってくる。という表現がぴったりな程、まるで物語の中の、貴族のお嬢様のようだった。
俺はそのまま2階の自室へ行く。
一方長友さんと真希は揃ってリビングへ入って行った。
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―佐々木刑事視点―
刑事の佐々木は尾野 駿を自宅に送り届けた後、警察署に戻り頭を抱えていた。
警察署内の休憩室で、コーヒーを飲みながら考え込む。
「どうしよう……。政治家の不正問題に手を出すべきか……」
佐々木は一瞬脳裏に出世問題や失敗した時のリスクが過ぎる為、悩んでいた。
「そんな事言っていられないか……。だが、彼の証言をそのまま鵜呑みにするのか?」
「(尾野 駿はただの高校生だ。だが、今まで……。この10日間程で数々の功績を上げている)」
上に報告すれば信用してもらえるかもしれない。
だが、握り潰される可能性もある。
「そもそも不自然なんだよなぁ」
この数日間、尾野 駿絡みで検挙した変態や馬鹿共は数十人にも及ぶ。
全員まとめてではなく個別の事案でだ。
明らかに異常な事だ。
佐々木はこの点が妙に引っ掛かっていた。
「だけど、彼が裏で糸を引いているとは思えない……」
仮に裏で糸を引いていたとしたら何の為に?
そう思ったが理由が思い当たらない。
「(もしかして、俺を過労死させる為の作戦か?)」
などと、馬鹿な考えが出てきてしまう。
「はぁ……」
ここで上司に報告をしたらどうなるかと思うと頭が痛くなる。
どうやって説明しようかと。
信用できる上司は本日出勤してきていない為、報告と相談は月曜日となる。
それまでに考えをまとめておこうかと考えた時、
「おや? 佐々木刑事でありますか?」
と、声を掛けられた。
「ん? あぁ、お前か」
声を掛けてきたのは警察官の制服を着た同僚。
ストーカーの半田を捕まえた時に協力してくれた後輩だ。
「悩み事でありますか?」
「うぅん。まぁな~」
「良ければ相談に乗るであります」
「そうか。実はな―――」
この時佐々木は頭の中にモヤが掛かったような状態になった。
まるで幻覚を見ているような……そんな感覚だ。
「と、いう事があったようなんだ。それで悩んでいたんだよ」
「そうでありましたか」
気付けば全てを話していた。
だが、不思議とそれが正しい気がしていた。
昔から信頼できる後輩であった。
なにか困りごとがあり相談すると力になってくれる存在だった。
「後の事は任せておくであります。佐々木刑事は本官達からの報告を待つであります」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
「では、失礼致します」
そう言って後輩警官は去って行った。
その後、佐々木刑事はすっきりとした気持ちになっており、先ほどの悩みは全て消え去っていた。彼は安心しきったのだ。
"全て彼に任せれば良い"
と。
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