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第26話 お守りの力ってすごいね



「な……に?」


 洋太は俺の言葉に目を丸くした。


 よし、こっちに意識が向いたな。今だ、逃げよ――――ん!?


 拳が迫ってきた――――――。


「ギャフン!」


 俺は思いっきり殴られた。

 避けきれなかったぁ……。


 俺の作戦はこうだった。

 警察に不良達が捕まる位の時間まで適当に逃げて走り回り、相手の体力を消耗させ取り押さえるか時間稼ぎをする。

 そう思って洋太を挑発したのだ。が、


「ひぃぃぃ」


 思った以上に手が早かった洋太に顔面を殴られてしまった。


「テメェかぁああああ!!」


 ボコボコに殴られる。

 逃げようとしたが襟元を掴まれて逃げられない。


「テメェのせいでぇぇええええ!!」


「ほげぇぇぇ」


 殴るだけではなくなった。蹴りも躊躇無く入ってくる。

 中学生にボコられる24歳会社員。俺。


「死ねぇぇえええ!!!」


 殺意満々だ。

 どう育ったらこうなるんだよ。

 彼も悪霊の一種なのか?

 そう考えていると、違和感を覚える。


 でも……あれ? なんか痛くない。


 今まで鬼畜主人公の神命、そして羽間、紫藤、半田と完全な変態悪役達は例外なく人外の強さを持っていた。だが、洋太は化け物じみた力は無いようだ。

 狐の仮面を着けた巫女さんが言うには悪霊だか化け物……。魔物だったかな? になっている影響とのことだったが、どうも洋太の場合は当てはまらないみたいだ。

 まぁ、巫女さんがくれたお守りの力もあるかもしれないが……。


「キエェェェェェェェ!!!」


 奇声を発する洋太に対し冷静さを取り戻した俺は、ガードに徹することにした。


「クソッ! どうなってんだテメェ! 何で効かねぇ!」


 洋太はそう言ってスマホを取り出した。


「洋太! もう止めて! なんてことをするの!!」


 坂江さんはそう言って洋太に縋るが、振り払われてしまう。


「おい、クソ野郎! 今仲間を呼ぶからな。テメェは今からリンチされるんだよ!」


 と、洋太からご丁寧な説明が入る。

 だが、そんな事はさせない。


ポカッ!


「ガッ!?」


 と、一発洋太の頭を殴る。

 おかしいな。それほど力を入れていないはずなのに叫び声が聞こえたぞ?

 まぁいい。とりあえず俺に怪我は無いから適当に挑発して時間稼ぎをするか。


「はっはっは。効かねぇな! お前んとこのボスを見りゃ分かるぜ。お前等はクソ雑魚の集団だってな。ははは、見せてやりたかったぜぇ。お前のボスが泣き喚きながら警察に捕まるところをよぉ!

 奴等はこう言って叫んでたぜ。ママァ~、助けてよママァってなぁ! ぎゃははははは」


 これは言い過ぎか?

 何だかこっちが悪役っぽいぞ。

 ちなみに不良達が捕まった瞬間は見ていない。デタラメな情報である。


「テメェ!!」


 再び洋太の攻撃が始まった。

 ふはははは。うまくいった。

 俺はただひたすら耐えるだけである。


「クソッ!」


 手ごたえを感じないことに腹を立てたのか家の外に止めてあったバイクにあった木刀を手にして襲い掛かってきた。

 あ、流石にヤバイ。

 そう思って回避した。が、


バシン!!


 なんかプロっぽい切り替えしで胴体に叩き込まれた。

 流石は剣道一家の息子!


「ひぃぃ」


 俺はわき腹を押さえていると、今度は頭上に木刀が叩き込まれた。

 多分あれが面とかかな?


バコンッ。


 と、いい音が鳴る。

 これ防御力高められていない状態だったら頭割れてますよね?

 いくら防御力が高くて痛みが無くてもちょっとフラっと意識が揺れた。

 頭を強く揺らされたことが原因だろうか?

 最初に殴られたわき腹もそんなに痛くは無いのはまだわかるけど、木刀で殴られても大丈夫って凄いなぁ。

 巫女さん。お守りをくれてありがとう!

 だが、この容赦の無い攻撃は……、


「ひでぇな!」


 俺はそう苦情を言い、一発殴り返してやりたくて殴りかかったが、避けられてしまう。

 さっき当たったのはまぐれだったのか……。


「て、テメェは一体何なんだよ!!」


 殴っても殴っても倒れない俺に恐怖したのか、引きつった顔で洋太は俺に聞いてきた。


「知るかバーーーカ!! バーカバーカ」


 もうヤケクソだ。

 とにかく洋太をこの場に留めることができればいいのだ。


「やってられっか!」


 すると、いくら殴っても倒れない俺の事は諦めたのか、スクーターに跨ってしまった。

 あ、ヤバイ。

 もたついている間に一歩出遅れた。


 洋太はそのままエンジンを掛け、発進してしまう。

 俺はそれを食い止める為、洋太へ飛び掛った。


「あ、何してんだよ!! ギャァ」


「ぐぎゃ」


 俺と洋太は転び、スクーターは道路に投げ出される。


「うぅぅ……」


 チャンスだ。洋太はスクーターから離れた為、今スクーターを奪えば彼の移動手段は無くなる。


「よっしゃぁあ!! 頂きぃ」


 テンションが上がった俺は素早くスクーターを起こす。

 これさえ奪い、……いや、破壊してしまえばいい。

 そう思って適当な場所へ捨てようと思ったが、俺はスクーターの扱い方を誤った。

 車の免許は取っているが、スクーターに跨ったのはもう何年も昔である。

 焦っているこの状況に加え、普通であれば絶対にしないであろう行為をしてしまった。


 俺はおもいっきり手首を捻ってしまったのだ。


 鳴り響くエンジン音。

 スクーターの後輪が勢い良く回りだす。

 前輪が上がり、俺はそのままスクーターに引きずられて坂江家に突入した。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「きゃぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!」


 間一髪坂江さんは避けてくれたが、坂江家の門を潜り屋敷の敷地内に突入し、植木に直撃した。


「ひぎぃぃぃぃ……」


 既に俺は半泣きの状態である。

 だが俺は気力を振り絞って洋太の所へ戻る為に起き上がって歩いた。

 俺がヘマをしている間、洋太が逃げてしまっていたら元も子もない。


「あっ」


 幸い洋太は先ほどと同じ位置に寝転がっていた。

 が、状況は悪い方向にあった。


「貴様ぁあああああ!!! よくも尾野君を傷つけたなぁあああああ!!!」


 髪を振り乱し、洋太に馬乗りになった状態の三田川さんが、洋太の顔面をボコボコに殴っていた。

 隠れていろって言ったのにぃ!


「ぎゃぁぁぁぁ!!」


 洋太は悲鳴を上げている。


「いやぁぁぁぁぁ!」


 坂江さんも悲鳴を上げている。


ボゴォ!


バコォ!


ズゴォン!


 うわぁ。すげぇ重そうな音と痛そうな殴り方。

 三田川さんってもしかして喧嘩慣れしてんの?


「ちょちょちょちょ!! 何してんの!?」


 俺は慌てて三田川さんを止めた。

 そうしなければ三田川さんは洋太を殺しそうな勢いだった。


「こいつがぁぁぁああ!!!」


「三田川さん! 止めてぇぇ」


 坂江さんは先ほどからそんな言葉しか発していない。

 あなた、剣道やっていて強いでしょう? もう弟に遠慮せずボコボコにやっていれば話が早くて済むのに…。


 俺はそんな事を思いつつも、三田川さんを引き剥がそうとした。

 ここで洋太が死んだら意味ないでしょぉ!


「よいしょぉお!!」


「このガキィィィ!!」


 しかしようやく三田川さんを洋太から引き剥がしても、興奮状態にある彼女は尚も洋太に襲い掛かろうとしている。

 坂江さんにも手伝って欲しいんだよなぁ!


「えぇい!」


 俺は三田川さんに抱きつくようにして、動けなくしようとした……が、


「あっ」


 と、三田川さんは小さく声を出した。悲鳴というより甘ったるい声である。

 うん。思いっきり手が胸に当たっちゃったね。

 というかこれじゃぁ揉んでいる状態だね。

 だけどこれは洋太を助けるためであり、仕方がない事なのでありますっ!


「尾野君……」


 なんで三田川さんは嬉しそうなの? 嬉しいのはこっちだよ?

 一方洋太はというと、


「カハッ!ゲホッ!このっ、クソアマ。殺してやる―――ギャッ!?」


「んだコラ?」


 なんかウザかったので足蹴りをしておいた。

 すると、洋太はピクピクと痙攣し動かなくなってしまった。

 ヤベッ! 殺しちゃったか?


「ひぃっ」


 坂江さんは小さく息を飲んで唖然としている。


 慌てて三田川さんから離れて洋太の脈を確認する。


 ……おぉ! 良かった脈はある!

 気絶しただけか……。


「このぉぉぉ」


 ヤバイ。三田川さんの怒りが復活した。


「どうどうどう。落ち着こう。一旦落ち着こう」


 俺は再び三田川さんを取り押さえる。


「あっ」


 ……。また胸を揉む状態になっちまった……。

 不可抗力だけど、これでもう三田川さんは暴れないだろう。

 そう、これは不可抗力なのだ。決して狙って三田川さんの胸を揉んでいるわけではないっ!!


 と、俺が安心しかけたところで、




「何をやっているんだ! 騒がしいぞ!! ―――――っ!?」




 と、怒鳴りながら坂江家の中から新たな人物が登場した。

 いかにもというか厳しそうな顔つきの年配の男性だ。


 この状況から想像が簡単につく。

 目の前の男は坂江さんと洋太の父親だろう。

 髪の色は娘や息子と同じ茶髪だ。


 怒鳴りながら家から出てきたその男は、伸びて道路に大の字になっている息子を見て目を見開き驚いているようだった。

 はぁ……。とりあえず文句の一言でも言っておきましょうかねぇ。


「……!?」


 あっ、目が合った。

 ん? なんかこっち見て驚いている?

 あぁ、そうか。三田川さんの胸を揉みっぱなしだった。

 家の前で息子が倒れ、その近くで女子高校生の胸を揉んでいる男子高校生。


 客観的に見ても異様な光景だ……。


 俺は落ち着いたと判断した三田川さんを横へと移動させ、


「あ、ここに伸びてるクソガキのお父さんですか?」


 そう聞いた。すると男は、


「チッ」


 と、舌打ちをして、


「そんな軟弱な男は知らん!」


 と、言い放った。

 なんか感じが悪いぞ。

 あ。俺、頭に来たよ。


「ありゃ。そうでしたか。これは失礼を致しました。いやぁ、いきなりこのクソガキがこの家から出てきたと思ったら殴りかかってきましてね?」


「な!?」


 おや? どうやら事の顛末は知らなかったらしい。

 そりゃそうか。家の中にずっと居て見ていなかっただろうし。


「正当防衛として気絶させたんですよぉ」


 正当防衛になるのか知らないが、適当にそう言ってみる。


「いやぁ~。どういう親に育てられたらこんなゴミが出来上がるんでしょうねぇ。最近多いですよねぇ~。馬鹿なガキがガキを作るだけ作ってろくに教育をしない。だからこんな突然一般市民に襲い掛かるようなゴミ屑が出来上がるんですよ。全く何処に居るんでしょうかねぇ。このクソガキのゴミ親はぁ~」


 言いたい事を言ってやった。

 ちょっと興奮して洋太の髪を掴んでアスファルトに軽くガンガンと打ち付ける。


「うっ! ガッ!? い、いってぇ!」


 あ、ヤベっ。調子乗りすぎた。

 ってか洋太が気が付いた。


「そ、そうだったのか!? いや、そうでしたか。申し訳ないことをしてしまった」


 およ?

 なんか急に態度が柔らかくなった? ってか素直になったような気がする。


「おや? どうしましたか? このガキは貴方に関係があるのですか?」


「……そいつは私の息子です。私は貴方を息子が最近つるんでいる不良連中の仲間かと思いましたが、どうやら違うみたいだ。連中のように髪を派手な色で染めていないし、服装も普通の格好だ」


 派手な髪色ならアンタも娘さんも同じだろ。

 ゲームの世界の中だから仕方がないかもしれないが、茶髪の親子を見てそう思った。


「はぁ……そうでしたか。勘当でもしたんですか? いえ、他人の家の事情に深くは突っ込みませんけどねぇ。周りの人間に迷惑をかけるような真似をするガキを放逐するようなことは止めてくださいよ」


「……はい」


 んん~……。素直だなぁ。もっとこう年長者のプライドとかが邪魔して、謝ったとしても今ほど丁寧な言葉は使わないと思ったんだけどなぁ。


「ふざけん……なよ」


 気絶状態から戻った洋太が、父親の方を睨みながら低い声でそう言った。


「お前ぇぇえ! 勘当した直後に父親面かよ! そうやって世間の目ばかりを気にして良い父親を演じやがって!!」


 あ、爆発した。

 というか、やっぱり勘当していたんだ。


「いつも教育教育で! ダチも選べとかいつも上から目線でよぉおお!! 世間の目がそんなに気になるのかよ!! テメェは世間の目を気にしなきゃ生きていけねぇのかよ!!」


 洋太は今までの鬱憤を晴らすかのように父親を怒鳴り散らした。


「テメェも何なんだよ! 偽善者面して楽しいのかよ!」


 今度は俺にターゲットを移してきやがった。


「うるせぇ!!」


「ゴア!?」


 何故俺が怒鳴られなきゃいけないのかと思い、頭に来た俺は洋太の顔面を殴る。


「ふざけんなよ!? さっきから聞いてりゃおかしなことばかり言いやがって! 親が教育を勧めるのは当たり前だろ!? 悪い友人を作らないように気にかけるのは当たり前だろう!? 世間の目を気にするだぁ!? そんなのお前が悪いことをしたなら家族全員が白い目で見られるんだから当たり前だろぅがぁ! 偽善者面が楽しいかってかぁ!? 当たり前だろうが! 楽しいしこれから俺が幸せになるからと思ってやってるんだろうが! なんで絶望を感じながらこんな事すると思ってんだ!! 馬鹿かお前は!?」


「!?!? は、はぁああ!? ふざけんな! テメェのことなんて知らねぇが、この父親は異常だって言ってんだよ! 遊びは許さない。不良でもなんでもないダチを馬鹿とは付き合うなと言って来るんだぞ!? 姉貴にはそんな事は言わねぇし。何が長男だよ! 何が跡継ぎだよ! ふざけんな!!」


 洋太は負けじと反論をしようとするが、俺も言い返してやる。


「お前なぁ。父親に何も言えずに大人しく従うような性格のやつならまだしも。これだけ不良仲間と悪さできる行動力あるなら、そんな言葉は無視して時間を決めて遊んでりゃ良かったんだ! 勉強の時間、遊びの時間。それをきっちり自分で決めてなぁ!」


 うん、俺の意見は合っているのかどうかなんて知らない。

 完全に勢いで言っています。


「それが許されなかったから言ってるんだろうが! 知ったような口叩きやがって! こいつはなぁ、俺が少しでも反抗すると勘当するとかほざいていた屑なんだよ! 俺が買った漫画やゲームを全て捨てたんだぞ!」


「ならものを大切にしないクソ親父の物も捨てりゃ良かっただろうが!! 追い出されたなら窓ガラスを割ってでも入りやがれ! 警察署を襲撃するぐらいの武力があるなら親父を殴ってでも自分の意思を通しやがれ!!」


「は、はぁああ!?」


「ちょっと待て。それは違うんじゃないか?」


 洋太と父親が揃って何言ってんだという顔をする。


「だからぁ! 世間様に迷惑かけるよりはいいだろうが!」


「意味わかんねぇよ!!」


 俺も何を言っているのか分からない。


「警察署襲撃して他人様に迷惑かけるよりは何倍も良いだろうが! あれか? 父親に勝てねぇってか!?」


「くっ……。チッ」


 おや? 図星だったかな。


「だったら知恵を使ってでも道具を使ってでもいいから抵抗しろよ! そのスクーターは何のためにあるんだ!? いくらお前の親父が強いって言ってもあの鉄の塊をぶつけりゃ誰だって大人しくなるだろうが!」


「そんな無茶苦茶な!」


 坂江さんは何を言っているんだという顔をしながらそう言った。


「「お前はどっちの味方なんだ!!」」


 一方洋太とその父親は親子揃って俺にそう言ってきた。


「あえて言えば警察の味方だよ!! 面倒な事件起こそうとしやがって!! この馬鹿親子が!」


 当然そう答える。

 別に俺はこの馬鹿親子どちらかの味方というわけではない。


プルルルルル。


 あ、佐々木刑事から電話だ。


「おい。お前、本当に警察署に押し入ろうとしていたのか!?」


 ん? 父親はその話は知っていたが本気にしていなかったのか?


「うるせぇよ! だったらなんだっていうんだよ!」


「お前等ちょっと黙れ! 俺の大好きな警察から電話だ!!」


「「!?」」


 今このゴタゴタを聞かれてしまってはまずい。

 俺は二人を黙らせた。


「はい。もしもし。佐々木刑事ですか?」


 俺はネコなで声で電話に出た。


「<ども。尾野君かな? ようやくこっちも片付いてね。今回は情報提供ありがとう。君の情報通り襲撃があったよ。人数は三十人くらいだった。もしかしたら君にも話を聞きに行くかもしれないから>」


「はい、分かりました。幸い明日から土日で連休なので時間はありますから」


「<あぁ、頼んだよ。それじゃぁ>」


 そう言って佐々木刑事は電話を切った。


「ふぅ。おい、クソガキ。テメェらの仲間捕まったってよ。良かったな。お前は無事で」


「そ、そんな!? くぅぅ~~~……」


 あ、洋太は泣き出してしまった。

 中学生を泣かしていい気になる24歳会社員。


「そんな……。本気でそんな事をしようとしていたのか……」


 父親は膝から崩れた。

 マジで本気にしてなかったのかよ。このオタンコナスは。


「とにかくこれで一件落着だ。おい、クソガキ。俺はお前の件は警察には黙っておいてやる。お前はまともな人生を歩め。もし逃げ出そうなんてしたら警察と連携して地の果てまで追いかけてやるからな」


 俺はそう言った後、父親の方を向く。


「おい、息子の不始末はアンタにも原因がある。もし今後息子に対し縛り付けるような教育を続け、爆発させるようなことがあれば、今回の事を紙に書いて、近所の方々に送りつけてやるからな。あ、そうそう。もしあんたの息子を追い出したり逃げ出したりした場合、俺は捕まえるけど、捕まえるのに掛かった費用は全部あんたに請求するから」


 俺がこうも洋太を家に居させようとする理由は、坂江さんがゲーム内でもっとずっと一緒に居たかった。と、言っていたからだ。

 結果的には願い通りだが、これで良いのだろうか? なんか違う気がするけど、まぁいいよね?


「う……。ぐっ……。分かった……」


 父親は納得してくれたようだ。

 チラッと横を見ると、


「…………」


 放心状態の坂江さんが居た。


「うぅぅ……」


 玄関の方では座り込んで鳴いている女性が居る。

 恐らく坂江さんの母親だろう。


「……帰るかな」


 俺はそう言って自宅の方向へと歩いた。

 三田川さんも俺の後に着いてくる。


 はぁ。なんか疲れた……。









 坂江家から少し離れた所で、


「流石ね尾野君……」


 歩きながらそう三田川さんが言ってきた。


「それは嫌味?」


 ベストとは言えないだろう解決方法に対しての感想だったので、俺はそんな風に疑った。

 はっきり言ってこれは無茶苦茶なやり方だ。どう考えても間違っている。


「いいえ、本心からそう思える……」


 嘘だろ!? こんな過激な方法が!?


「そうか……」


 この子は大丈夫だろうか?

 もっと違うやり方はあったのかもしれないが、今回この現実ではない世界では十分な結果だろう。

 ただ単に俺が元の世界に戻る為に手っ取り早く事件を解決しているだけだ。

 俺はそう思うことにした。


 そういえば、ご近所さん達にこれだけ騒いでも通報とかされなかったな。

 半田の時は夜中にも関わらず外に出て野次馬と化していたのに。


 これはアレかな? 単純にかかわりたくなかっただけなのかな?


「それはそうと……。さっきの続き、いつでもしていいから……」


 さっきの続き?

 もしかして、さっき胸を揉んだ事の話しか?

 本当に何を言っているのかなこの子は?


「そういうのは恋人同士じゃなきゃ……」


 女性からのお誘いをお断りするのは無粋だと思うが、今そんな関係になって浮かれている場合じゃない。いや、揉んどいて今更なんだけどさ……。

 だけどもし、元の世界に戻れなかったら、この子に彼女になってもらおうかな! などと、ゲスな事をチラッと考えてみる。


「……わかった」


 三田川さんはそう言って笑顔を見せてくれた。

 それはどういった笑顔なんだろう……。

 その笑顔に俺は少しだけ期待をしてしまうではないか。




 それよりも、俺のやり方の事件解決って、これで本当に良かったのかなぁ。






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