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第25話 坂江由梨を救うには



 さて、ここで坂江 由梨に関する情報をまとめておこう。


 坂江 由梨は現在父、母、弟の4人家族で暮らしている。

 父は厳格な性格で、剣道の道場主だ。その影響からか、坂江さんと彼女の弟は幼い頃より厳しく躾られた。

 中でも坂江さんの弟は家の跡継ぎという名目で姉よりも躾が厳しかったそうだ。


 現代では滅多に見ない家庭環境だったが、やはりというか弟はそんな父に反発をした。

 弟は中学2年生になると非行を繰り返し、立派な悪餓鬼へと成長してしまう。

 姉が優秀だったことが性格の歪みに拍車を掛けることにも繋がったそうだ。


 そんな彼が心の拠り所にしたのは不良グループであった。

 原作……ゲーム内では三田川さんを虐めていた女子達がその不良グループに所属しており、その不良女子達を脅して大人しくさせた主人公の存在を不良グループが気付き一悶着あった。

 結果、不良グループ達の親玉及び不良女子達の彼氏は警察に捕まり、三田川さんは平和を取り戻したが、問題はその後。

 グループに所属していた弟は仲間と共に不良グループの奪還を計画。実行に移し、30人程で警察署へ武装して襲撃をした。

 武装と言ってもナイフや包丁、金属バット等だ。

 警官達は当然反撃をした。

 だが、警官達が銃を使った反撃をしたため、坂江さんの弟は帰らぬ人となってしまった。


 偶然家で弟と不良グループのメンバーがスマホで、リーダー奪還の話しをしているのを聞いてしまった坂江さんは、必死に弟の凶行を止めようとしたが無駄だったらしい。

 その後鬼畜主人公が放心状態となった坂江さんを良い様に扱い、自分に依存させてゆっくりと狂わせていった。





 俺の目的はこの流れを完全に壊す事だ。

 不良グループメンバーの詳細までは分からないが、坂江さんの弟一人ぐらいを助けることはできる。


 流石に乱闘騒ぎをしている現場に行って弟の弾除けになる気はさらさら無い。


 ならば助ける方法は、現場へ行く前に説得をするか縛ってでも行かせないかだ。


 詳しい時期はストーリーが変わってきてしまっているので分からない。今日かもしれないし明日かもしれない。

 ただ、ゲームでは坂江さんの様子がおかしくなってから1日後だったはず。


 行動するのは早いほうがいいかもしれない。

 佐々木さんに連絡をした後、今日からしばらく坂江さんの家の前で張り込みをしなきゃいけないかもな……。

 また俺はストーカー行為をしなきゃいかんのか?


「…………あっ」


 重大なことに気が付いた。


 俺、坂江さんの家を知らない…………。


 ……。

 …………。


 あ"あ"あ"あ"あ"!!!

 やっちまったぁあ"あ"あ"あ"!!!









 心の中で叫んでいても仕方が無いので、俺は家に帰って早速佐々木刑事に連絡をした。


「もしもし。佐々木刑事ですか?」


「<はい。佐々木です……>」


 何処となく警戒した感じの佐々木刑事が電話に出た。


「昨日はありがとうございました。お陰で彩香のストーカーが居なくなりましたよ」


「<いや、礼は不要だよ。我々警察は市民の為に当然の事をしたまでさ。それじゃあ―――>」


「いやいやいや、待ってください!! 何あっさり電話を切ろうとしてるんですか!?」


 逃げるように電話を切ろうとする佐々木さんを引き止める。

 そんなんでいいのか? 警察!


「<……。話を聞きましょう……>」


 こういうやり取りを挟まなきゃ話もできないのかねぇ?

 でも嫌々ながらも聞いてくれるというところには評価できるかな?


「近々そちらに殴りこみに行く若者達が居るそうです。どうやら3日前に捕まえた不良達を救出する目的らしくて」


「<えぇぇ……。それ本当ぅ?>」


「本当です。偶々学校のトイレの個室に入っていたらその計画が聞こえたんですって」


「<そうなのか……。クソゥ! 最近の若者元気良すぎだろ!! ってか、なんで不良共が居ないここに襲撃に来るんだ!>」


「そんなの知りませんよぉ」

 佐々木刑事の疑問はもっともだ……って、そっちに不良達が居ないって今知った。

 あれ? それは原作でもそうだったのか?


「トイレの個室に入って聞いていたんで顔までは把握してませんが、人数は30人位って言っていましたよ」


「<そんなに!?>」


「って事でよろしくお願いします!」


「<いやだぁぁぁ―――プツ>」


 俺が通話を切ると、すぐに別の電話が掛かってきた。

 表示される名前は本日登録したばかりの三田川さんだった。


「はい、もしもし」


「<尾野君? 情報は聞きだしてきたから>」


「おぉ、ありがとう。早かったなぁ。で、どうだった?」


 まだ30分も経ってないというのに野和さんから情報を聞き出してきたのか。

 スパイとしてとっても優秀ですね。


「<……正直私も貴方に話していいか迷った。だけど貴方ならきっとこの状況を何とかしてくれると思っているから話す>」


 うわぁ。随分と期待を込められているなぁ。そういうの重いから止めてほしい……。


「<今日、夜に坂江さんの弟が所属する不良集団が警察署に襲撃をかけるらしい。弟君が仲間と話しているのを偶々聞いていた坂江さんが止めようとしているけど言う事を聞かないらしいの>」


 今日かよ!


「そうなのか……。俺も止めたいのは山々だが、精々救えるのは坂江さんの弟ぐらいだ。他のメンバーもあわせて止めることなんて難しい……」


「<うん……。それは私も分かる>」


「坂江さんの家さえ分かれば弟君が馬鹿をやるのを止められるかもしれん。……だが、家がわからん」

 坂江さんの弟が暴走をしようとしているのは知っている。

 だが、肝心の居場所が分からない。


「<大丈夫。野和さんに聞いて調べた……>」


 すげぇ! 三田川さん優秀!


「おぉぉ!! ありがとう!! これで坂江さんの弟を止められるかもしれん!! ありがとう!」

 重いとか思って申し訳なかったぜ!

 俺は素直にそう礼を言う。


「<どう致しまして。それより聞きたい事がある……>」


「ん?なんだ?」




「<尾野君……。貴方はいったい何者なの?>」




「……へ?」


 一瞬何を聞かれているのか理解できなくなり、背中は氷が張り付いたかのように冷たくなっていった。








 何者か。

 普段なら……元の世界に居たならば「何言ってんだ?」と一言返せば済んだ。


 だが、この世界では明らかに俺は異物であり、何者かと聞かれたら正直に答えることは難しい。


 いや? いいのか? ここで正直に話して協力者を増やしてもいいのか?


 ……分からない。

 狐の面を被った巫女さんからはその点何も言われなかった。


 だが、ここで正直に話して協力者ができればいいが、頭がおかしい人と思われ今後の活動に支障が出ることもありえるかもしれない。


 ……。うん。とりあえず誤魔化そう。


「何者? どういう意味かな?」


「<…………>」


 三田川さんは黙っている。

 誤魔化せたか?


「<私は尾野君を見ていて不思議だった……。まるで事件が起きるのを知っているかのように行動をしているから……>」


「それは偶々だよ。自画自賛はしたくは無いけど、こういう事件性がある事には感覚が鋭いとか? じゃないの?」


 まるで事件を引き寄せる刑事ドラマの主人公や探偵みたいな奴だな。


「<そう……。まるで未来を知っているみたい……>」


 うぐぅぅぅ……。ぐいぐい攻めて来るなぁ。

 三田川さんこそ何者なんだ?

 どうしてそう鋭いんだ?


「そんな超能力者じゃあるまいし……」


 とりあえずそんな言葉を使って惚ける。


「<…………>」


「…………」


 沈黙が続く。

 誤魔化しきれないのだろうか?


「<わかった……。ごめんなさい、変な事を言ってしまって……>」


「いや、気にしなくていいよ」


 よし、何とか乗り切ることができたか?


「<私は貴方の忠実な下僕……。下僕がご主人様の事を安易に探ろうとしたことをお許し下さい……>」


「はい!?」


 俺は三田川さんの開いてはいけない扉を開いてしまったのだろうか。


「そ、それよりも坂江さんの家の住所を! 時間が無い!」


「<分かった……。案内するから外に出て。私は貴方の家の前に居るから……>」


 家の前に居るんかい!

 俺の家の前で下僕発言してたの? ちょっと近所の人に聞かれたらヤバイんだけどぉ!


 俺は慌てて外に出る。

 日は既に傾き始めている。

 原作だけの知識では坂江さんの弟が家を出て行く時間が分からない。だが、分かる情報と言えば時間帯は夜だったはずだ。

 坂江さんの家までどの位の距離があるか分からないから急がないと。







 幸い坂江さんの家まではそれほど遠くは無かった。

 三田川さんはスマホに入力した住所を頼りに案内をしてくれたので、一緒に来てくれていた。


 まだ空は若干明るい程度。

 これなら間に合っただろう。


「何があるか分からないから、三田川さんはそこに隠れていてくれ」


 俺はそう電柱を指差して三田川さんに指示をする。

 三田川さんは黙ってコクッと頷いて従ってくれた。


「よし」


 和風の大きい一軒家だ。

 家の隣にはこれまた大きい道場がある。


 そして外には場にふさわしくないスクーターと木刀が置かれている。

 少しだけ気後れしてしまうが、今はそんな事を気にしている暇は無い。


 俺は呼び鈴を鳴らし、家に居る人を確認する。


「…………」


 反応が無い。


 もう一度呼び鈴を押してみる。


ガチャ。


 今度はスピーカーの部分から音が鳴った。


「<はい>」


 坂江さんとは違う女性の声だ。

 坂江さんのお母さんだろうか?


「私、坂江 由梨さんの同級生の尾野 駿と申しますが、今、坂江さんはいらっしゃいますでしょうか?」


「<由梨のお友達ですか? すみません、今取り込み中でして……>」


 あぁ~。今必死に坂江さんが弟を説得しているのか。


「坂江 由梨さんの弟さんの件でお伺いしたのですが」


「<っ!?>」


 マイク越しでも息を飲む音が聞こえた。


「<待って! 行かないで!!>」


「!」


 マイクの向こうで坂江さんの声と思われる叫びが聞こえてきた。

 と、同時に家を飛び出してきた人物が一人。


 小柄の少年だ。

 見た目は中学生位。この子が坂江さんの弟だろう。


 だが、驚くべき事として服装が特攻服だった。


 今の時代に!?

 え? 今の時代でもこれ通用するの??

 あ、いや。そういえばテレビで見たことあったな。

 あの番組なんだったかな? 警察に密着するテレビ番組。『突撃警察168時間』だっけ?


「邪魔だ! 退け!!」


 そう見知らぬ人に乱暴な物言いをする坂江さんの弟と思われる人物。

 ここで怯んで通してしまっては来た意味がなくなってしまう。


「もしかして、坂江 由梨さんの弟かな?」


「あ"?」


 おぉう。すごく睨んでくる。が、なんだろう。小柄である為それほど恐怖を感じない。

 あれ? でもそうは言っても俺はかなりビビリな性格。こういう場合ならば直ぐに恐怖を感じていた気がするが……。

 あぁ、そうか。それ以上の恐怖をこの10日間で感じまくっていたからか……な?


 そりゃそうだよな。これでも身体能力が異常発達した変態共と渡り合ってきたんだ。


 変な納得をしていると、家からまた別の人物が飛び出してきた。


洋太ようた! って尾野君!?」


 飛び出してきたのは坂江さんだった。

 そうか。弟君は洋太って名前か。


「チッ!」


 姉が飛び出してきたのに気付いてか洋太は家の門から出ようとしたが、


「あ、えっと、君って警察に捕まった不良チームの仲間で間違いないかな?」


 と、俺は話しかける。


「だったら何だってんだ!! ぶっ殺すぞ!」


 おぉう。やっぱりちょっと怖い。


「洋太! 止めなさい!!」


 坂江さんは近寄ってきて洋太を宥めようとする。

 なんとかして洋太を俺の方へ意識を向けさせなくちゃいけないな。

 ならば……!


「聞けえぃ!」


 俺は声を張り上げた。


「「!?」」


 坂江さんと洋太は驚いて俺の方を見る。


「はははははは。

 俺はなぁ、君達のリーダー達を逮捕してもらうように通報した張本人なんだよぉ!」


 俺は堂々とそう言ってやった。



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