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第16話 元の世界へ戻る方法


「今の貴方は正確には魂だけこの場に居るのです。それが現状での限界です。もし魂だけでもよろしければ私達と一緒に帰る事ができますけど……」


「いやいや。そんな事をしたら体を置いていくって事になるじゃないか!」


「そうなりますね」


「…………」


 そんなのは選択肢は無いと一緒だ。


 ゲームのデータではなく、ヒロイン達の魂があの世界で苦痛を受けるシナリオならば改変を続けていくしかない。

 悪人共の行為に対し、指をくわえてみているなんて胸糞悪すぎるしな……。


「さて、話を続けましょう。

 "改変"というよりも"本来のゲームのシナリオ"に戻ってきていると言った方がいいかもしれません。魔物達も必死に抵抗しているようですけど……」


「抵抗?」


「えぇ、報告ではストーリーが進むにつれ敵の身体能力が高くなっていたり、急所を銃で撃たれない限り平気だったり。ゲームが進行する度にその抵抗が酷くなっているようですね」


「それは、確かに思った」


 鬼畜主人公は殴る威力が結構高かっただけだが、羽間に至っては人間一人を壁まで吹き飛ばす位強かった。更に今日の紫藤に至っては完全に人外そのものだった。


「これからどんどん酷くなっていくと思います」


「えぇぇ……」


 巫女さんはしれっと言ったが、それに巻き込まれる俺は堪ったものではない。

 次の性犯罪者はビームでも吐くのだろうか。


「身が持たない。はっきり言うと死んでしまうかもしれない」


 俺は正直にそう言った。


「えぇ、普通の人間には難しいでしょう。ですから私達は今まであの世界に助っ人キャラのデータを送ったり貴方を強化したりしました。

 本物の生き物以外であれば何とか送ることができたんですよ」


 そう誇らしげに言う巫女さん。


「えっ? 俺を強化!?」


 助っ人よりも気になる発言があった。いつの間に俺は強化されていたんだ!?


「はい、基本的には防御能力しか向上できませんでしたけどね。記録では『羽間』という人物に殴られていたでしょう? あんな威力で殴られていたら本当なら内臓が一つや二つおかしくなってましたよ」


 あぁ、確かに。


「うん、それは俺も思った。ゲーム内のご都合主義とか思っていたけど、そうか、君達が強化をしてくれていたからか……」


「そのお陰で、あなたをここに誘導することもできました。なんとかあなたの精神が不安定になった時を見計らい、意識に接続できないかと頑張っていたんですよ? まぁ、そのせいでここまで来るまでに所々がおかしくなって、貴方の思考もまともじゃなくなってたけど」


 おい、ちょっと待て。


「それじゃぁ、紫藤が死んでから俺がおかしくなったのは貴方達のせい……」


「てへっ☆」


「……」


 いや、狐面のを被ったまま"てへっ☆"ってされても……。


 そりゃ突然女子二人を自分の部屋に連れて来て泊まらせるなんてねぇ。どこの色男だよ。

 それにここに来る前は言語能力も低下していたような気がする。

 あれ? 結構ヤバイ状態だったんじゃないか? 俺。


「と、いうか。助っ人キャラって何です?」


 そんな奴居たか?

 あれか? 庄平の事か?

 あいつなんだかギャルゲーのヒロインの情報を教えてくれる情報屋ポジションみたいだからな。

 全く役に立ってないが。


「えっと、今貴方と接触した助っ人キャラは刑事の佐々木さんと、雀のちゅん太ですね」


 ちゅん太? 雀!?


「はい?? 佐々木さん? 雀?」


 佐々木刑事は助っ人キャラだったのか?

 てっきり職務に忠実な刑事さんだと思っていたけど……。

 それと、雀……。

 すっごく心当たりがあるぞ。


「佐々木さんは現実世界でも私達に協力してくれる人でして、一番信頼ができる刑事さんという事で人格データを送りました。あと、ちゅん太は本来強力な鳥型の式神を送る予定だったんですが、魔物にいろいろと妨害されたようで、小型化された上に性能まで落とされちゃいました。それでも貴方の家からこちらへ繋ぐ道を1週間で作り上げる程には優秀だったようですね」


 まさか、朝一心不乱に庭の地面を突きまくっていたのはここに来る為の入り口を作っていたからなのか!?


「ちゅん太は私達が魔物を倒すという事を記憶しているようですね。佐々木刑事はあくまでも一般人としてのみの記憶しか有していないようで、魔物やらゲームの世界だのと言っても『何言ってんだこいつ?』って思われてしまうかもしれません。事件的な事ならば積極的に協力はしてくれているようですが……」


「はははっ。まさかそんな事が……」


 いろいろと情報が入りすぎてパニックになってしまいそうだが何とか自分を押さえ、


「俺はこれから残りの屑共を倒さなければ、あの世界から出られないって事か?」


 と、確認をした。


「うん。まぁ、倒すっていうか警察に捕まったりザマァな展開にすれば勝ち。だと思います。

 我々も奴等を倒したいのですが、魔物達の妨害が酷くて……。

 もちろんこちらも全力でサポートをしますし、ようやくあちらの世界でのサポートがしやすい環境と戦力が整ったところです」


 そう巫女さんは自信なさげにそう言った。


「サポートがしやすくなった。ですか」


 だが、サポートがしやすくなったという点はありがたい。

 これからはもっと期待しても良いという事だろうか?


「とにかくあの魔物達に負けを認めさせることが重要ですね。貴方の活躍で半分以上の負のエネルギーが我々が制御できる状態になっています」


 鬼畜主人公、羽間、紫藤。それに三田川さんを虐めていた上級生や女子生徒達か……。

 残り半分……。半分? 人数的にはゲーム後半になればもっと敵がいた気がするが、事件毎に1組目、2組目とカウントしているのか?

 ちょっとだけその部分に引っ掛かりを覚えたが、大方これからの活動方針が決まった。


「ちなみに、もう一つ聞きたいんだが、敵は自分達がゲームの中の世界にいることは理解しているのか?」


 俺がそう聞いたのは理由がある。

 もし連中が自身がゲームの中の世界にいるとわかっているならば、俺をもっと妨害してきたはずだ。


 俺はいるはずがないキャラクターなのだからな。


「おそらく、ゲームキャラクターとして活動している者達は記憶が封印されているのかと思います。調べたところ、ゲームの流れ自体に意思があるようなので、それが今まであなたを危険な目に遭わせていたのかと思います」


「敵キャラを強化したり……とか?」


「そうです。ですが、逆に言えば敵キャラを全て倒せば、あなたはもう危害が加えられることはないと思われます」


 うーん。敵を倒すという行為自体、危険なことだからやりたくはないが、事件を解決しなくちゃ帰れないならば仕方がないのかもしれない。


「私達ができることが少なくて申し訳ないと思っています」


 と、巫女さんは謝るが、


「いや、あなた方が謝ることじゃないでしょ? ……分かった。それじゃぁ俺はこれから助っ人と共に奴等を倒していくよ。ははっ、俺も早く帰りたいしね」


 俺がそう言うと、


「ありがとう。ここで取り乱したり拒否されてもどうしようもなかったから貴方の決断に感謝いたします。私達もできるだけバックアップはするつもりです」


 どんな手助けをしてくれることやら。


「おや? そろそろ時間ですね……」


 と、突然巫女さんは残念そうにそう言った。


「ん?」


 時間?


「そろそろあなたをこの狭間の世界に留めておける時間が迫ってきたようです。

 魂だけこちらの世界に連れてきている状態なので、残した体に後々影響が出てしまうかもしれません」


 そう言って巫女さんは、立ち上がって障子を開け、俺に部屋から出るように促した。

 時間が経てば経つほど体に影響があるってヤベェな。


「貴方には更に強力な防御を付けておきます。はい、これ」


 そう言ってスッと長い紐が付いたお守りを渡された。

 どうせなら攻撃力アップのお守りが良かったな……。

 まぁ、贅沢は言ってはいられないか……。


「いくら防御力が上がったからといって、大砲で撃たれたら死にますのでご注意を」


 あのゲームに大砲なんて出てこないよ。

 ……出てこないよな?


「はい……。ありがとうございます」


 俺は立ち上がってお守りの紐の輪を首に通し、服の中に入れる。


 何だか神聖な感じがするお守りであった。

 素人である俺もわかるから、きっとかなりの力があるんだろう。


「あ、それと……」


 巫女さんは何かを思い出したかのように俺を引き止める。


「なにか?」


「えぇ、重要な事を一つ伝え忘れていました。貴方は攻略中、できるだけゲームで登場した場所。今貴方が住む場所から離れないで頂きたいのです」


「ん? どういう意味だ?」

 俺が住んでいる場所意外は悪霊だか魔物の巣なのだろうか?


「えぇっと、あの世界は基本的にゲームを基にして作られている世界なんです。つまりゲームの舞台となっている貴方が住む市内以外は結構適当な作りで、国外に出ると更にその異常性を感じると思います」


 なるほど。そういう意味か。


「じゃぁ、もし何らかの要因で離れてしまった場合どうなるんだ?」


「正直に言うとそれはわかりません。予想になってしまいますが、あの世界を作った元凶の神が貴方に与えた加護が薄くなると思います。つまり、貴方自身が崩壊してしまうかもしれません」


「え!? 俺、加護ついてんの??」


 意外な事実であった。

 巫女さん達がつけてくれた加護なら分かるが、まさか元々あの世界を作った神様の加護が付いているとは思わなかった。


「はい、やはりあの神も救いを求めていたのかもしれないですね……」


 そう巫女さんは悲しそうな雰囲気を出しながら言った。

 もしかしたら知っている神様なのだろうか?

 そうだとしたら神様が知り合いとかすごいな。


「そうだったんですね。まぁ、頑張りますよ。何かあったら手助けしてください」


 一人で戦うなんて心細すぎる。


「勿論です。この事件が解決した時には、貴方にも私達から何かプレゼントをしますね」


 先ほどの暗い雰囲気から打って変わって少女のような可愛らしい仕草で巫女さんはそう言った。

 プレゼントってなんだ? 報奨金とかかな?


「では、お帰りはあちらで……」


 ここで狐面の神主さんっぽい人が俺がこの世界に来た際通ったトンネルを指した。


「あ……はい」


 またあの暗いトンネルの中に入るのか……。

 あれ、ちょっと怖いんだよな。

 憂鬱な気持ちになりながら、俺は美しい風景の水と岩の柱の世界の道を歩いて行った。











 彼女の言葉は果たしてどこまで信じた方がいいのだろうか?


 仮に嘘だとしたら?


 何の為に嘘を?


 ところどころ納得できるものはあった。

 だが、どこまでが真実なのだろうか?


「…………」


 考えてもわからない。

 一般人にこんなおかしな世界の推理なんて無理ゲーすぎるぞ。


 今は、あの巫女さんの言葉を信じてみるしかないかな。

 とにかく、ヒロイン達を救い続けるという方向は変わらないんだ。


 なら、変態共を倒し続けるしかない。


 俺はそんな事を考えながら前へと進み続けた。




 ちなみにトンネルの中には再び家の扉が出現していた。



 俺はその扉のドアノブに手を掛け、ゆっくりと開いた。



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 尾野 駿が水と岩の柱の世界からゲームの世界へ戻っていく姿を見た狐面の神主風の男は、


琴音ことね様……彼はうまく生き残ることができるのでしょうか」


 と、心配そうに言った。


「確かに危険ではあるでしょう。ですが、私達は必ずあの人を生還できるようにサポートをするのです。さかき家の全力を持ってね」


 さかき 琴音ことねという巫女の少女はそう心に決めて前を見据える。


「まったく。あの神様も厄介な事をしてくれますね……」


 と、今度は神主風の男が愚痴を言った。


「そうねぇ……。だけどそれだけあの"家族"が大切だったのでしょう。人間である私達の方がその感情、理解し易いと思いますよ?」


 と、琴音は男の愚痴に反応した。


「そうですね……。勿論それは分かるのですが……」


「無関係な人間を巻き込むような事はしてほしくなかった。ですよね?」


「はい……」


 男は自分の意見が琴音に肯定された事に安堵する。


「まぁ、不可抗力でしょう。彼の場合は。……問題は、あの"神"が用意している結末の方です」


「あぁ……。確かにそうですね」


 男は大きく頷く。


「あの神が描くハッピーエンドにはさせるつもりはありません。私達が納得できる形で利用……いえ、結末を用意して差し上げましょう」


「……」


 男はゾワリッと背筋を振るわせた。

 仮面で隠れて表情は見えないが、巫女の少女からは禍々しい雰囲気が出ていたからだ。


「おっと、いけないいけない……。神澤かみさわさん、今のは見なかったことにしておいてね?」


 琴音はおどけた様子で口元を手で押さえる仕草をした。

 それに対し神澤と呼ばれた男の方は今更であると思ったが、決して口には出すことはなかった。


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 前回も含め、今回の説明回は上手くまとめられたか心配です……。


 以下まとめ。


世界A:神命による強姦事件発生。世界Aの神が自分が作ったゲーム世界に多くの平行世界の神命の魂を取り込み、お仕置き予定だった。様々な事情で天国へと行けなかった被害者達も救出目的でゲーム世界へ入れた。

 しかし、神命がゲーム世界を乗っ取る。

 そして、神命は様々な並行世界で自分が活躍するゲームを発売するように人間達を誘導。


世界B:この世界の神命達悪役は既に死亡。世界Aの神に世界Bの神が協力し、悪役達はゲームの世界に取り込まれる。

 呪われたゲーム発売! 何故か尾野駿がゲーム世界へ取り込まれる。

 退魔師の榊達がそれを察知し、対策及び尾野駿救助活動を行う。


 以上まとめるとこんな感じです。


 尾野駿がゲーム世界へ取り込まれた理由は今後物語が進むにつれ判明する予定です。


 ちなみに榊達は尾野駿救出と共に、この状況をとある事に利用しようと考えています。


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