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陽炎隊  作者: zecczec
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第6話  チカン発見、即退治

 ルティに館の中を案内されて説明を受けるとやっと全体像がつかめてきた。

 まず館の一日は6時起床。 7時まで部屋の掃除や身支度。 それから1階にある食堂で朝食。 9時から午前の学び、午後一時からは午後の学びがあるが、学びが無いときは仕事をする。


 仕事は館内の清掃が主。 本館、白の館と相当広いので十分忙しいらしい。 慣れてきたらお針子や洗濯、家畜の世話、庄園の手伝い、調理や髪結い、好きなものを手伝う事ができる。

 授業は前日に1階の中央フロアの掲示板に翌日の授業が何時からどこの教室であるか貼ってあるから、それを見て必修科目と自分が受けたいものだけを受けることになっている。

 空いている時間は他の専門職の手伝いをしてもよし、さぼってもよし。 らしい。

 授業3時以降には行われないので3時を過ぎれば通いの者は帰宅して構わないことになっている。 泊まりの者は3時からはその日使用した教室の掃除等をしているらしい。

 そこでリトは4階に人が少ない訳に納得した。 なぜなら他の階では、多くの女官が掃除をして忙しそうにしていたからである。 つまりぶっちゃけ、マーヴェ達は掃除手伝いをしないで部屋に帰ってきていた、という訳である。


 ルティは新人が来ているので途中で切り上げて部屋に戻ったようだった。 ついでに分かった事は、マーヴェもロッティも自宅は城のすぐ近くの城下町にあるそうで、白の館に来てさほど日は経っていないらしい。

 普通は遠方者が泊まり組だが、彼女達は親子共々考えるところがあるらしく年頃になった今、特例として白の館で寝泊まりをしているらしい。

 昔からの名門貴族出身。 家庭教師を雇うから学校などに通ったこともなく、蝶よ花よと育てられており温室育ちのせいでなかなか馴染めないらしい。 食事も館の食事より自宅の食事を食べたいのだが、基本的に外食は禁止であるので、「仲良くなった友人を家族に紹介する場合は自宅で夕食の招待及び参加は可」という例外をフルに活用し、しょっちゅう誰彼誘っては自宅で夕食を食べているらしい。


 特例で白の館にいるくせに、それを私が知るわけないじゃない、


とリトは思ったが、普通であろうと特例であろうと、自分達のことについては他の人はすべて了解していて当然、という考えをする貴族もいるらしい。 由緒ある私達に興味があるから知っていて当然、って感じらしい。 とてもついていけないと思ったが。


「今日はラムール様が休暇でいらっしゃらないから、ついてなかったね。 普通はラムール様が説明して下さるんだ。 あの方でないと入れない場所があるから。 だからきっと明後日にでも私が教えてあげられない事は教えて下さると思う。 ……そっか。 それでマーの奴、それも狙って。 ふふーん」

「ル、ルティ?」

「ああゴメンゴメン」


 話の流れから「マー」というのがマーヴェらしいのはなんとなく分かったが、何を狙っているかとかは全く見当もつかなかった。


 それにしても、ラムール様、か。


 ルティといい、家臣といい、とてもとても尊敬している感じでその名を口にするけれど、マーヴェを見たせいだろうか、同じように皆からもてはやされて、自分を中心としか考えないような特権意識の固まりの人間の可能性もあって。

 正直、白の館に来たら会えるかもというは好奇心はあったが、だからといって今度きちんと説明してくれる、という一対一の関係が待っていると思うと、なんとなく気が晴れないのだった。


「まっ、だいたい説明は終わったかな? 他、分かんないとこある?」


 再び4階に戻ってきてルティは尋ねた。

 とりあえず今はなんとかなりそうだった。


「ああ、お風呂場の場所教えるのまだだったね。 教えるからついてきて」


 ルティはお風呂の事を思い出したらしく、フロアの中央から広間へと入り、つきあたりの扉を開けた。 そこは脱衣場になっており、左斜め正面に大浴場入り口、さらにその左隣は細い通路になっていて、つきあたりを左に曲がるとシャワー室になっていた。


「シャワー室はいつでも使っていいんだよ。 大浴場は夜の5時から10時までね」


 シャワー室を見たあと再び脱衣場に戻り大浴場の扉を開け中に入ってみる。 大浴場は白の館の角部屋にあたるため、50人はゆうに入れる位の台形の形をした広い浴槽が窓際に添って作られていた。


「ひろーい!」


 思わず歓声を上げる。 これはとても入り心地の良いお風呂である。

 開けられた窓から見える外の風景がとても美しい。

 緑の木々、その向こうに見える青い空と白い雲、そして。

 窓枠の中央を上から下へと垂れる一本のロープ


 ……。


 ロープ?


 ロープは揺れている。

 そして窓枠の上の方から足が見えた。

 足が全部。

 どこかで見たような。

 腰まで出た

 胸、

 肩

 顔……

 そこには、どこかで走り回ってきたのか髪の毛は乱れ、はね、きらきらと悪戯小僧のように輝く瞳をした、同い年くらいの少年。


 しょうねん。


「あ」


 リトは指をさす。 そこにいたのはさっきの掃除夫だった。


「あ」


 少年も思わず声が出る。


 ……。


「ちっかぁ〜〜〜んっっっっ!!!!」


 パコォォォォオォォオォン!!!!!!!

 小気味いい音を立てて宙に舞うはリトが投げつけた木製の洗面器

 負けないくらい良い音を響かせたのは少年の頭。

 リトの目に映るは顔を後ろにそらせて、ロープから手が外れて下に落ちていく少年。


「きゃああああああ!!!」


 背後でルティの悲鳴が聞こえた。 そして

 ヒューーーーーーーーーーン

 ザッポオォォオォォン!!!!!!

 と、大きな音と水しぶき。

 窓から身を乗り出し下を見ると、館に添って作られていた池に落ちた少年が一人。


「こ、んのぉ、エロガッパァ!!!」


 リトは力の限り叫んだ。


「ちょ、ちょっと、リト!!」


 慌てて後ろからルティが来て窓から身を乗り出し、叫んだ。


「大丈夫ですか??? デイ王子っっっっ?????」


 と……。 




 王子ぃい???

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