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とりあえず、説明から。

ズイッと八坂さんが体を進めてきた。

「よく、いろんな雑誌やテレビで″これをやると体にいい″とか、″〇〇で✖✖が治る!″なんて特集をやってますよね。確かにそれで効果があった方がある程度おいでたからこそ、その方法は評判になったんでしょうけれど。でもその反面、全然良くならないとか、逆に体調が悪くなったなんて方もいる」

視界の隅で、景子がコクリとうなづくのが見えた。見えたのだがそれよりも、私は″我が意を得たり″といきなりテンションの上がった八坂さんに目が釘付けで。

「その差ってどこにあると思いますか生田さん」

座った目のまま句読点なしに問われ、言葉に詰まる。唖然とする私を置き去りに、八坂さんは自分で振ったのをスルーして話を続けた。

「それは、″その人には必要のなかったケアだったから、なんです」

「え・・・」

「必要ない、なんて言い切ってしまうと、ちょっと乱暴ですけどね。でも例えば、完全な下戸でお酒が飲めない人に、幾ら特別な日のプレゼントだからってワインだの祝い酒だのを贈る事ってそうないですよね」

「あ。はい、それはそうですね」

「小麦アレルギーのある人に、美味しいからってお蕎麦を勧める事もないですよね」

「だったらパスタでもうどんでも、別の麺食えよって感じですよね」

「そこです!」

ビシッ。いつの間にやら立ち上がり、机の上に片足上げてバニーは私に人差し指を突き付けた。

「正に今、生田さんが仰った通り!いくら世間でいいと認められている物での、その人に必要なければ、もっと言えば、害になる物ならやったって意味がない。だったら同じ効果を、その人に必要な物を使って出せばいいんです。麺類は蕎麦だけじゃない!ミーフェンもメンジェンもトンフェンも、みんなみんな生きているんだ友達なんだ!」

「・・・・え・・・。えーと・・・あの・・・」

な・・・何?何だそれは、何語なんだ。新手の呪文か。ミー何とかがどうしたって?とりあえずバニー、パンツ丸見えです・・・。

「ですから、東洋医学ではまず最初に″証″と呼ばれるその方の体質をチェックして、体質の特徴やウイークポイントなどを理解し、トラブルがあればその原因と対処法を探っていきます」

「なる程。″戦略″を立てるんですね」

「んも~、生田さん、トレビア~ン!」

「ヘッ⁉」

感極まったように叫ぶとバニーはハートマークを激しくまき散らせながら、私の手をがしっと握りしめた。

「素晴らし~い!あなたは話のポイントを的確に、端的に掴んでいらっしゃる!」

大きな瞳をキラキラと輝かせ、バニーはブンブンと握ったままの手を振った。

えーと・・・。何かどうも、何だろうこのテンション。悪い虫でも飼ってるんだろうか。

最初はおっとりはんなりしたお嬢様って感じの人だなあと思ったんだけど。どうもなんだか、何て言っていいか分かんないけど、えーと、とりあえず誰か・・・。

「あ・・・」

助けを求めて周囲を見回すと、景子とダンディはちゃっかり「治療」という名の緊急避難した後で。

一番奥のカーテンの向こうから、楽しそうな景子の声が聞こえる。景子・・・お前、ダンディ目当てか・・・。

すっかりスケープゴートとして取り残された私は、再びちらりとバニーに目をやった。







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