SAYONARA
始めは一目惚れだったの。
一目見て好きになった。
好みのタイプだった。
もっと知りたいと思ったの。
傍にいる彼女を知っていたから、彼女に頼んだの。
彼女はにこやかに微笑みながら、紹介してくれた。
「とてもお似合いよ」
そう言われて浮かれた。
「大好きだわ」
告白はストレートに。
正直に告げたから、あたしは貴方を手に入れた。
優しく抱きしめたら柔らかくて優しかった貴方。
貴方に似合うメイクをした。
ルージュは赤よりオレンジが合うって言われたから、オレンジのルージュにした。
髪型だって貴方に似合うようにがんばった。
ストレートよりウェーブの方が上品に見えるって言われたから、美容室でウェーブヘアをあてた。
背の低いあたしは貴方に似合うように、ヒールを履いたわ。
ほんの少し背伸びした。
いろんな所に一緒に行った。
映画は夢中になって一緒にポップコーンを食べたっけ。
カフェで一緒にお茶もした。
ウェイトレスが貴方を素敵って言ったこともあったわ。
いやね、貴方はあたしの物なのに。
素敵な貴方、大好きよ。
空の色は日によって違う。
季節はその日々の繰り返しで動いていく。
貴方との時間はゆっくり流れていったの。
季節の変わり目を感じた。
風が少し冷たく感じた。
もう、終わりなの?
貴方が小さく見える。
あんなに好きで好きで仕方のなかった貴方が、あたしを拒絶した。
突然、ドラマが終わりゆく。
もう、ダメなの?
あたし達もう一緒にはいられないの?
「あんたほんとこの二三ヶ月で太ったね」
「ぐっ!」
母の一言だ。
当たっているだけに言い返せない。
「せっかくお気に入りの服だったけど、もう着られないんじゃない?」
「うるさい!」
「もう温かくなったから丁度いいじゃん。片付けな」
「捨てないでよ」
「痩せたら来シーズンも着られるけどね~」
あたしは服に別れを告げた。