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一条兼定奮闘記  作者: 鉄の男
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第五話 不穏

そろそろ日刊がきつくなってきました。

精神的な意味ではなく、仕事的な意味です(苦笑)

でも完結を目指していますので、へたらずに頑張ります!

「監物、奴らの様子はどうか?」


ここは西土佐の少し北にある山が多い地帯。

ここに房基は陣を立てた。陣の位置はなだらかな山岳地帯で、少し歩けば中村御所の周りを囲うように建っている街並みが見える。

そんな場所から房基は各地にいる豪族たちを討つための命令を下していた。


「はっ、どうやら奴らはまさか自分たちが討たれるとは思っていなかったという感じで連携は全く機能しておりません。各個撃破すれば問題ないかと。」


羽生監物はそこで言葉を区切り、そしてまた話を続けた。


「ただ少数ですが奴らは何やら妙な道具を使っておりまする。その道具は何やら大きな音がすると同時に味方が倒れていきます、遺体を見たところ胸に小さな穴が空いておりました。」


「むぅ、矢ではないのは確かだな。しかしその道具とはなんなのだろうか?」


房基は敵が少なからず変な物を使っていると聞いて頭を抱える。

それは見た事も聞いたこともない様な物で大きな音がすると味方が倒れると言う笑えない出来事だからだ。もしそんな物がずっと使われるようでは味方の士気に関わるし、なにより気になる。だが数は少ないと聞く、ならば早く敵を潰してそれを使えないようにするだけだ。房基は事が早急な問題であるとわかると各地に散らばっている各武将達に伝令を出すことにした。


「監物、急いで各地にいる味方武将連中にこの事を伝えよ。恐れる事態ではない事をちゃんと伝えるのだ。」


「かしこまりました。」


羽生監物はそういうと急いで陣を出ていった。どうやら監物自身なんとも言えない胸騒ぎがするのだろう。なんせ敵は見た事もない珍妙な物でこちらを倒してくるのだから。房基は一人で深く考え始めた。


(何故奴らはそんな物を持っているのだ?もしその変な物が世に出回っているのであれば儂も知っているはず・・・・。だが儂が知らない物を使っておるという事はまだこの世の中に出回っている可能性が低いだろう、逆に考えればそのような珍しい物は簡単に手に入るものではなく、ましてや一豪族でしかない奴らではとてもではないが手に入るシロモノではないだろう。では何故奴らがその様な物を持っているのかという事だ。)


房基は考えながら徐々に肩を震わせていく。それはつまり誰かが奴らに対して裏で支援しているという事を指している。誰か第三者がこの西土佐を狙っているという事に他ならない、そしてそれは妙なシロモノを扱えるほど経済力があり、この西土佐を狙えるほど軍事力に余裕のある者でしか有り得ない、つまり国人達ではない事が分かるのだ。


「・・・これは豪族撲滅という甘い考えだけでは済ませられぬ事態かもしれんな・・・・、もっと大きな大きな輩が陰に潜んでいるやもしれぬ・・・」


房基はそう結論付けると文を書き始めた。宛て先は息子の万千代に対してだ。

なぜ万千代なのか、それは自分では理解できない事態だから。

万千代ならばもしかすると事の問題が分かるかも知れない、もし万千代が分からなくてもそれは仕方がない事だ。それほどまでに今回の出来事は大きすぎる。

何故ならその第三者が「分からない」のだ。強いて近隣国で可能性があるとするならば、まずは大友家だが、かの家は千代の家であり婚姻同盟を結んでいる。ありえない。

次に名を上げると大内家だ。だがこれも違うであろう、何故なら奴らにこんな事をしても利がない。もし仮に支援していたとしても殆ど損しか生まれない。

ならば一体誰なのか。儂に毒を盛ろうとする意味は万千代から聞いた。だがそれは豪族達がしでかしただけであり第三者の考えではないのであろう。


房基は考えながら文を書き終えた。


「この文を万千代に届けよ。事が急だ、なるべく急いでくれ。」


そう言われ渡された兵士は「はっ!」と答えると直ぐに馬に乗って中村御所へ駆けていった。


______________________



そのころ主人公・・・万千代は中村御所で宗珊と槍の稽古をしていた。

先の呼びつけの時に余りの体力の無さに落ち込んでしまい宗珊に槍の稽古を頼み、尚且つ理由を話すと宗珊は「お任せ下され!!体力だけではなく若を四国一の槍使いにしてみせますぞ!!!」と意気込んでいた。なぜ天下一ではないのか理由を聞くと「若、この世に天下一など存在しませぬ。存在するのは天下に名だたる人物のみ。天下一の人物など今までに生まれた事はなく、これからも生まれませぬ。仮にこの日ノ本を統一したとしても、それは日ノ本一であり天下一ではござらん。天下とはこの日ノ本の海の先すら統べる者にございまする」と答えた。妙に納得してしまった万千代は流されるまま宗珊に槍の稽古を受けていた。


「若!、そのような腰では敵の首どころか女子すら落とせませんぞ!!」


そう少し酒飲みの変態オヤジみたいな事を話す宗珊に対して万千代は直ぐに反論する。文句というよりはお願いに近いものだった。


「宗珊、頼むからそんな事言わないでくれよ~、敵の首までは分かるけど女は関係ないだろ~?それに俺は言われる通りに槍を扱っているんだぞ?」


「かぁ~!若!某はそのような構えを教えては御座いませぬ!もっと腰を据え、そこから槍を斜めに振り下ろし、身体を捻りながら元の構えに戻るのでござる!、誰が股間の位置を前に突き出しながら槍を振り回すと教えもうしたか!」


宗珊は万千代の滑稽な構えに文句を言いながら万千代の腰に手を当て構えを元に戻す。万千代は渋々元に戻すがどうしても槍をおろす時に腰が前に出てしまう、途中から万千代は完全にやる気を失せてしまった。


「若!、何を休んでいるのですか!次の稽古を致しますぞ!」


「ま、まってよ!いくらなんでも初めからこんなキツイと気が滅入るよ!初めてなんだからもう少し優しくしてくれてもいいじゃないか!」


「なりませぬ!某は若の母上、千代様より厳しく躾ける様お願いを受けておりまする!、それに若だけが辛いのではありませぬ。妹君の千姫様も千代様と共に毎日勉強しておりまする。若だけですぞ毎日毎日本を読んでいるのは!」


宗珊が逐一言う言葉に万千代はぐうの音も出なかった。

妹の千が毎日千代と一緒に勉強しているのは知っている、だが万千代はそれを上回るほど毎日本を読んでは飯を食べては寝てを繰り返している。つまり今の万千代は人の事が言えないのだ。


「分かってるけど俺だって忙しいんだよねぇ、これからの事を考えないといけないし・・・・」


「言い訳は結構!、さぁ稽古を続けますぞ!」


宗珊がそう言って練習用の槍を持った時、先ほど房基が走らせた兵士が万千代がいる庭に急いで入ってきた。流石の万千代もただ事ではないのが分かったのか、飛び起きて兵士に駆け寄る、同じく宗珊も駆け寄った。


「万千代様!房基様からの早文でございます!」


兵士は少し疲れた声を出しながら文を万千代に渡した。

宗珊はその兵士にぬるい茶を出し飲ませた、あえてぬるい茶を出す宗珊はやはり名将なのだろう。熱い茶だと急いで飲めない、ぬるいからこそ急いで飲めるし、何より直ぐにそういう気配りができる人はそうそういない。

兵士は茶を飲み干すと「ありがとうございまする」と土下座をしていたが、宗珊は「頭を下げるほどの事はしておりませぬ、頭を上げなされ」と言っていた。宗珊はお茶よりも文の内容が気になって仕方なかった。


「若、文にはなんと書かれているのですか?」


宗珊も少し顔をしかめながら文の内容に関して質問した。先ほどの怒りを持った顔ではなく、主君を案ずる不安そうな顔だった。


「なにやら豪族連中が妙な物を使って戦っているそうだ。それについて知っていることはないかと聞いている」


万千代はその妙な物が一瞬で分かった。文の中にはその妙な物の特徴が事細かく書かれていたので考える必要がなかった。妙な物・・・それは鉄砲しか有りえないだろう。しかし問題は鉄砲ではない。問題なのはそれを一豪族が持っているという事だ。たかが豪族、しかもこの西土佐でそのような物を持つことは不可能に近い。

誰かが、第三者が豪族連中に武器を流している・・・・。

万千代は急いで部屋に戻ると文を書き始めた。


「万千代様、もしかしてその妙な物が何かわかるのですか?」


兵士が文の内容を読んでも顔を歪めない万千代に対して疑問をぶつけた。

兵士は気になるのだ、自分たちを襲っている訳の分からない物が。

すると文を書き終えた後に万千代はその言葉に答えた。


「貴方が思っているほどまだ事態は大きくないよ。敵が使っているのは恐らく南蛮兵器だね。鉄砲てっぽうというものだよ」


その言葉に兵士と宗珊は目を見開いた。

兵士は見た事も聞いた事もないのに万千代が謎の物の正体をあっさりと突き止めた事に、宗珊は直ぐにその正体が分かるほどの情報が万千代の頭の中にある事に驚いたのだ。だが現代日本から転生をしている万千代からしてみれば鉄砲の存在など知ってて当然なので文の内容を読んだところで驚きはしなかった。


「鉄砲・・・ですか・・・?、それはどういう物なのですか?」


兵士はそう質問してきた。隣にいた宗珊も同じような考えなのだろう、首を前にだし話を聞く。鉄砲なんて知らない人からすれば当たり前だ。万千代はなるべく分かり易いように質問に答えた。


「そうだね~、簡単に言うと矢をより強力にしたものかな、まぁ矢よりは少し飛距離が短くなるけど。鉄砲は火薬と小さな丸い鉄の塊を使って撃つんだよ。矢とは違うのは、矢なら防げる鎧でも鉄砲だと簡単に鎧を貫いてしまうんだ」


簡単に言うとこうかな。そう万千代が言葉を締めくくると兵士も宗珊も口をパクパクさせた。当たり前である。鎧で防げない物からどうやって身を守ればいいのか、それとどうしてそんな事を万千代が知っているのか。兵士は万千代に礼を言うと万千代から預かった文をもって急いで馬に跨いで駆けていった。宗珊はまだ驚いてる様子だった。


「・・・若はどこでその事を?」


「あー・・・・、いや旅をしている人から聞いた事があるんだよ。俺が生まれた年に種子島という島にそのような物が伝来したってね」


その言葉を聞くと宗珊は微妙に納得のいかない顔をしながら練習用の槍を万千代の部屋に立て掛けた。すると宗珊は万千代に頭を下げながらお願いをし始めた。


「若、某にも簡単にで良いので鉄砲の事を教えて下されませぬか?先ほどの話、きっとこれからの戦国の世に必要になりまする。」


「いいけど俺もあんまり知らないよ?、聞いた話だから・・・」


「構いませぬ。少しでも良いので某に教えて下され、必ず今後の一条家の為に活用致しまする。」


そう宗珊が答えると万千代はうろ覚えの鉄砲知識を少しずつ宗珊に話し始めた。


しかし万千代は豪族達の後ろで誰が糸を引いているのか少しだけ気付いていたが、それは誰にも話さなかった・・・・・。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 一条家、というか四国が舞台になる作品はとても珍しいですね。なかなか焦点が当たらない武将や城が出てきて楽しいです。 [気になる点] この時代の「天下」は①室町幕府、室町将軍②山城国③畿内(+…
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