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一条兼定奮闘記  作者: 鉄の男
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第四話 潜む敵

なんか前回の最後に房基が死ぬっぽい感じで終わってますが、

少しの間は6歳の主人公の話で進めるので戦はまだ起こりません。

それと、公家大名の話は万千代が勘違いを起こしています。

大内義隆も土岐氏も共に武家です。公家かぶれの武家ですので、お間違いなきようお願いします。

「万千代~!万千代は何処におるか~!」


中村御所中に響き渡る声を出して俺を探しているのは親父だ。

そんな大きな声を出さなくても俺の場所が分かっているんだから叫ばなくてもいいのにと思う。全く一体どうしたと言うんだろうか、仕方がないから俺は急いで声のする場所まで走っていく。廊下には耳を抑えて顔を歪ませている小姓や侍女たちが、俺を見ながらそそくさと自分の仕事場へ戻っていく。そりゃ朝っぱらからこんな大きな声を聴きたくはないと誰もが思うだろう。

そんな事を脳裏の片隅で考えながら親父がいる部屋についた。

少し息切れが激しい。これからは真面目に体力づくりをしたほうが身の為だと思い知らされた、なんせずっと部屋で公家の書物を読んでいただけだ、身体なんて「寝る・起きる・飯を食べる」位しか動かしてない気がする。

自分の私生活についてその場で考え込んでいると襖が開いた。いつから襖が自動ドア式になったのだろうという訳の分からない事を思っていると目の前に親父が立っていた。


「・・・お主は何を襖の前で突っ立っておるのだ。」


親父が襖を開けたらしい。父親とはいえ主君が、入ってくる息子の為に襖を開けるというのは家中的に大丈夫なのだろうか?、そんなことにうつつを抜かす前に俺はサッと部屋に入る。部屋の中は俺が思っていた程公家色が強くない、寧ろ意外にも戦国武将色が部屋を飾っていた。


「父上の部屋って公家が好きそうなものばかりあると思ってた・・・・」


「何を言うかと思えばそんな事か。そうじゃのう確かに儂は公家出身じゃ、それはお主にも言えることよ。じゃが儂は京の公家風情が嫌いでな、本家の京一条家も公家色が強いがそれはそれじゃ。よくいうじゃろ?人は人、内は内とな」


ガッハッハ!と親父は笑って済ませているが多分ほんとは嫌なんだろう。本家には叔父の房通殿がいる。叔父は親父が幼い頃からこの西土佐に下向して親父に代わって政務をしてこの土佐一条家を支えた人だ。その時の恩があるのだろうから本家には何も言ってないのだろうが内心やめてもらいたいんだろうな・・・・。

確かに公家は長い帽子を被りお歯黒をして手には長い木のヘラみたいな物を持って日がな一日公家仲間たちと一緒に一句読んでるイメージがある。俺もそのイメージがあるせいで公家は嫌いだ。なにより直ぐに人を見下す傾向がある。現代でよく戦国ドラマをやっているのをちょくちょく見ていたが、公家は必ずと言っていいほど傲慢無知でどうしようもない楽観主義者が出てくる。この影響もあるのだろう。


公家で有能な人物と言われれば真っ先に出てくる人物は大内義隆だ。

彼は自身の大内家を日本の中国地方において絶大な影響力を持つほど拡大させた人物だ。あの毛利元就公も服従せざるを得ないほどの凄い人物だったが、尼子家に攻め入った時に大敗北を喫してしまい、しかも自身の息子をその戦で失ってからは覇気を無くし、後に陶晴賢に殺されてしまった悲しい人物だ。


なんか公家って碌な死に方しかしてない気がする。なんか傲慢無知な方が長生きできそうだ。俺だってそうだったし・・・・・あれだな、公家は戦国時代では生き残れないな。美濃の名門貴族土岐氏だって斎藤道三に乗っ取られて織田家に流れ落ちてるし・・・なんか色々ヤル気が失せてきた・・・・・。

いや、ここで根を上げてどうするんだ俺!逆に考えるんだ!公家で戦国時代を生き残れば後世の歴史教科書に一条兼定っていう人物が当たり前のように載るんだ!、

「公家大名で唯一勢力を伸ばし続け戦国時代を生き残った人物」として!

なんかそう考えてきたら俄然やる気出てきたぞ!よぉしやるぞ~!


「なんか分からんが何故腕を天井に突き上げておるのじゃ?」


あ、親父の存在を忘れていた・・・・すごく恥ずかしい・・・・。

ていうかそもそも俺が呼ばれた理由は何なんだ?早く聞くことにしよう。


「父上、どうして自分を呼んだのですか?、何かやらかしましたか?」


こう言って置かないといろいろ怖い。何を言われるか分かった物じゃない。

だが親父が言ってきたのはそんな小っちゃい事じゃなかった。


「万千代よ、内政をしてみぬか?」


・・・・は?えっ・・・?何を言ってるんだ親父は、いきなり何を言い出すんですか?。内政?内政ってあれだよね、国内の政務の事だよね?俺6歳ですよ?

とりあえずその心を聞いてみることにする。


「父上、なぜいきなりそんなことを?この一条家の事は父上が取り仕切っているではありませんか?」


すると親父は直ぐに答えた。少しは考えろよ・・・・・。


「ん?わからんか?、儂はお主に国の政務を任せてみたいと言うておるんじゃ。どうじゃ?してみぬか?」


その言葉本気で言っているのか?、俺はまだ子供ですよ?未だに少し夜中怖くなるとお母んの部屋でお母んと一緒にねるくらいビビりな子供ですよ?

いや、ただお母んと一緒に寝たいからそんな理由を作っている訳であって・・・、マザコンじゃないですよ?。美人と寝たいと思うのは男なら誰もが叶えたい夢だ、なら今の内にその恩恵を預かっておきたいのだ、つまりビビりではないという事に・・・・ってなんか訳が分からなくなってきた。

よし、まずは冷静になろう。話はそれからだ。まず深呼吸をしよう。


「スーハースーハー、フーハーフーハー」


「なんじゃ?この部屋が臭うのか?」


あかん。なんか誤解を招いてしもうた。

っていやいやなんか関西弁になってしまった。

しかしなんとか冷静さを取り戻してきたし、ここからは真面目に話をしよう。


「父上は本気で御座いますか?、まだ自分は子供で御座いますよ?それに内政を任される利が御座いませぬ。明確な意味がなければこの話は辞退したいと思っておりますので、なにとぞ教えていただきとう御座います。」


まずはそれが聞きたい。俺に内政を任せて何の意味があるのか、そしてそれを理解しているのか、6歳である俺に国の政務を任せるほどの意義が必ず存在するはずだ。そしてそれはこの土佐一条家にまつわる重大な事だから、まず家臣団が黙っていないだろう。そこまでして俺に国を預ける理由が聞きたい。

すると親父がこう答えた。


「ふむ、理由か。それは言うまでもなく、お主の能力が儂を超えておるからよ」


え?、俺そんな親父を越すほどの功績を作った記憶がないんですが・・・・。

そんな事を考えていると親父が話を続けた。


「強いて言えばお主の考え方が飛び抜けておる。お主、宗珊に対して自分の論を言っている最中に千が安芸に嫁ぐといっていたな?どうしてそんな事を言った?儂はまだ千を嫁がせるなどという話はまだ誰にもしておらん。それはつまりお主は儂がこれからしようと考えておる策を既に理解しているという事に違いない。そうであろう?、正直に述べよ」


しまった、俺はあの時未来の事を話してしまったのか。

しかしこうなれば言い逃れはできないな。正直に話すか。


「父上は土佐を統一するおつもりで御座いますね?」


「ほう、やはり分かっておったか」


親父が悪そうな笑顔で俺を見つめる。俺は気にせず話を続ける。


「父上、どうして地元の豪族達を抑えるだけに留まっているのですか?、父上であれば直ぐに奴らを討つこともできたでしょうに。奴らは完全に父上を侮っております、父上が奴らを討たない事を分かっているのです。そこまでしてどうして放っておくのですか?父上が土佐を統一したいのはわかります。ですがその統一を妨げているのは奴ら豪族達のせいに御座います。奴らを討てば直ぐに東土佐に討って出ることが出来まする。確かに父上は西土佐を統一しましたがそれは表向きだけに御座います。奴らがいてはいつこの西土佐が焦土と化すかわかりませぬ。もし東土佐に攻め入りたいのであればまずは国内の敵を潰してからでございます。千が安芸に嫁ぐ話ですが、それは国内の敵を潰して初めて我々に利が出来ます。父上は私に東土佐の事を話してほしいのでしょうが、まだ早すぎます。まずは国内の敵を潰すことが先決です。内政委任の話もそれが終わらねば始まりませぬ。」


そう俺が告げると親父は険しい顔をしながら答えた。


「万千代よ、確かに奴らなんぞ儂がいつでも討てるであろう。だが無理なのじゃ。理由を話せば、そうじゃな、過去の恩というのが強いの。昔儂はこの西土佐を統一するときに奴らの力を借りておる。そのお陰で西土佐に蔓延る野武士軍団を滅ぼした。その時の恩で奴らは儂を認めておる。故に儂は奴らを攻められん。」


「そう思っているのは父上だけに御座います。奴らはいつ父上が死ぬか待っておりまする。奴らの真の目的は父が作りしこの西土佐を父上が死ぬと同時に横取りするつもりで御座います。奴らは私など眼中にないでしょうから簡単で事がなせると思っております。現に奴らは父上に毒を盛ろうとしておりましたが、すぐに私と宗珊がそいつらを捕え処断しました。」


これは真っ赤な嘘だ。実際奴ら豪族連中はムカつくが反旗を起こそうとは思っていない。しかし親父が国を空けると間違いなくこの西土佐を荒らそうとしているのはわかる。ならば嘘をついてでも親父には奴らを討って貰わなくてはならない。

もし親父がこのまま東土佐に攻め入ってそのまま死んだら奴らを倒すのは俺の役目になる。そんな面倒事はしたくない。俺は国内に敵がいなくなった後にじっくり内政をしたいのだ。


「なんと!!それは誠か!嘘ではあるまいな!?」


「嘘では御座いませぬ、もし信じられぬのであればそれで結構でございます。宗珊にでも聞けばすぐに事はわかりますゆえ」


これも嘘だ。もし宗珊に聞けば「そんな話初耳に御座る」というに違いないだろう。しかしこの空気と現状であれば親父を押し切れる。カマをかけたのだ。

ごめんね親父、でも豪族を今討っておけば後々国の為になるのは事実であることに違いはないのだ。


「う~む・・・奴らはそんな事を考えていたのか。お主がそこまで言うのであれば誠なのであろう。よくぞ教えてくれた!」


「いえ、この一条家に歯向かう連中は早いうちに潰しておくのが得かと思っていただけなので礼には及びませぬ。直ぐに戦準備をして攻め入るべきかと」


そう俺が告げる頃にはもう親父が立ち上がって小姓を呼びつけていた。

手際が早いのもさすがだ。もうやる気満々で鎧を付けている。


「内政の話をしようと思っていたらまさか戦に行く事になってしまったな。だが言っておくぞ、この戦が終われば必ず政務を任せるからな?、覚悟しておくように」


親父はそう告げると大声で家臣団を集め始めた。

俺は急いで部屋に戻ることにした。また巻き込まれたら大変だし、俺の部屋に宗珊を釘付けておかないと嘘がばれる。でも親父はどういう訳か宗珊を呼びつけていなかった。俺を守らせる為だろうか?

まぁお陰で嘘はばれなさそうだし安心だな。俺は部屋で本でも・・・・いや宗珊に槍の稽古をつけてもらおう。朝走った時に体力が少ないのが分かったし。宗珊も喜ぶだろう。


俺は小走りで部屋に戻った。



房基の戦の話は次の話で書きます。

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