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一条兼定奮闘記  作者: 鉄の男
14/21

第十二.五話 長宗我部家の内情

知らぬ間に総合評価ポイントが3000になっていました(大汗)

緊張で失踪してしまいそうです…(失踪する気はありませんよ!)

これからも頑張りますのでよろしくお願いしたします!!

さて今回は長宗我部家を書かせてもらいました。弥三郎がいなくなった後、長宗我部家はどんなことになっていたのか…。相も変わらず駄文ですが、お楽しみ頂けたら筆者としては感無量です。

長宗我部国親の嫡男・弥三郎が家を嫌い家出をして少し経った頃、長宗我部家では以外にも混乱などは起きなかった。というのも、元々長宗我部家内での弥三郎の評価はとても低かった。

弥三郎の長所は見た目が良いだけで、それ以外は全て弟達の方が優秀だったからだ。

それ故に家臣達からしてみれば「どうせ廃嫡される運命にあったのだから、出て行った所で長宗我部家は揺らがない」という考えしかならなかった。そこまで弥三郎の評価は低かったのである。

父である国親ですら「あやつに当主の資格はあるのだろうか」と頭を悩ませていた、そこへきて「弥三郎が出奔した」と連絡が来たので、国親は家臣達を大広間へ集めて「弥三郎を正式に廃嫡し、次の当主は弥五郎にする」と家臣達に伝えた。

そして家臣達が全員大広間から出て行った後、国親は残った二人の息子の弥五郎・弥七郎に対して話をしていた。


「これで長宗我部家は安泰よ。弥三郎では些か問題がありすぎた。あのような引きこもりに当主の器などなかったのだ。よいな弥五郎、あのような兄に似ず、武芸に励み必ず長宗我部家を拡大させるのだ。」


「分かりました、必ず長宗我部家を天下に名だたる大名にして見せまする。この弥五郎にお任せを!」


「………」


次男である弥五郎は元気良く父・国親に対してそう答えたが、三男の弥七郎は何も言わなかった。

その事に気付いた国親は弥七郎へ言葉をかける。


「ん?どうした弥七郎?何故黙っている?何か不満でもあるのか?」


「…いえ、別にありません。」


「そうか。お主は弥五郎を後ろから支えるのだ。弥五郎の悪い所は武芸一辺倒の所だ。だがお主は武芸だけではなく学芸にも強い。期待しているぞ。」


そういうと国親は立ち上がり大広間から出て行った。弥五郎も続けて立ち上がって大広間から出て行こうとすると三男の弥七郎に袖を掴まれた。


「五郎兄様…本当にこれで良かったのでしょうか?本当に三郎兄様を廃嫡してよかったのでしょうか?。僕たちは…本当は三郎兄様の右腕・左腕として支えるべきではなかったのでしょうか?」


弥七郎がこう言ったのには理由があった。

兄・弥三郎が家を出た後、弥七郎は弥三郎の部屋を掃除することになった。

その時弥七郎は弥三郎の部屋に入るなり凄まじいショックを受けた。

布団の隣には四国各地の情報を乗せた巻物が散漫しており、小さい机の上にはこれからの日ノ本の行く末や長宗我部家はこれからどうするべきか等の事がきめ細かく書かれた巻物が置いてあった。

それらを手に取って弥七郎は読んでいく。だが読めば読むほど弥七郎は心が締め付けられた。

兄・弥三郎は確かに一般の人に比べると少し変わった所があった。

過去に弥三郎と話をしていた時、たまたま嫁取りの話になった。その時弥三郎は「貰うなら美濃の地から嫁が欲しい」と弥七郎へ告げた。何故美濃の地なのか弥七郎が質問すると「血筋が良いだろう?」と弥三郎は言った。弥七郎は「え?それだけですか?その為にわざわざ遠い地から嫁を?」と突っ込むが、弥三郎は「それ以外の理由なんてない」と頑なに四国での嫁取りを嫌がった。

それとこの巻物とはあまり関係はないが、ただ一つだけ、この巻物でわかる事があった。


「三郎兄様はちゃんと家の事を案じていた…。こっちの巻物には、家だけではなく四国の事についても調べている…。」


弥七郎は悲しんだ。三郎兄様は決して暗愚ではない。ただ三郎兄様は皆と違う高さから物事を見ていただけなのだと。それを見抜けず自分を含め長宗我部家全体で三郎兄様を非難していたと今気付いた。

過去に三郎兄様の家臣から話を聞いた事がある。「弥三郎様は何を考えているかわからない。この前もいきなり西土佐に行きたいと言い出して大変だった」と。

その言動も自分達が三郎兄様の事を理解していなかったからそう思ってしまった。

三郎兄様は何らかの考えがあったからこそ、西土佐に行きたいと言っただけなんだ。

なのにその家臣は、三郎兄様のいつもの妄言としてただ諌めただけだった。

だが弥七郎は思う。どうしてその考えを弟である五郎兄様や自分に打ち明けてくれなかったのだろう?

ちゃんと話してくれれば五郎兄様も自分も、絶対事情が分かったはずだ…。


弥七郎は部屋を掃除している時、ふと、弥三郎の布団を見た。

何の変哲もないただの布団だ、弥七郎以外が見ればそう思うだろう。

だが弥七郎は気付いた。布団のあちこちに微かではあるがシミがあった。そのシミの原因が何かは直ぐに分かった。これは泣いて泣いて何度もその部分で顔を拭ったので、そのうち洗っても落ちないシミとなったのだろう。だがこの小さなシミこそ、弥三郎が一人で悲しんでいた何よりの証拠だった。


「父上は酷いお人だ…いや自分もか…。兄様……。」


そして弥七郎はまた部屋の掃除に戻る。その内に秘める思いをひっそり呟きながら。


・・・・・・・・・・・・・・


そんな話を聞いた弥五郎は弥七郎に対して少し強い声をかける。


「そんな事お前に言われなくても分かってる!お前よりも俺の方が兄貴の事は分かってる!」


そう。弥五郎も国親の前では気丈に振る舞ってはいたが、内心は弥三郎の心配で埋まっていた。

弥五郎は武芸には秀でているが、学芸に関しては全然駄目だった。

だがそんな弥五郎に対して弥三郎は「人には得手不得手がある。恥ずかしがる事はない。」と言った。

それからだろうか。弥五郎は今までよりも武芸に励むようになったのは。そこまで武芸に打ち込む理由はただ一つ、兄・弥三郎の右腕として彼を支えるためだった。それに学芸に関しては弥七郎が居た。

長宗我部の武を司る弥五郎、長宗我部の知を司る弥七郎、そしてそれらを統括する弥三郎という体制。

長宗我部と言う家を支える3兄弟…それこそが弥五郎の考え。だが現実は非情だった。

国親による弥三郎の廃嫡により、弥五郎が次の長宗我部の次期当主となってしまったのだから。

そこで弥五郎は、初めて自分の父親に対して殺意を持った。


(こいつは能力だけしか見ていないのか…自分の息子がそこまで嫌いなのか…。)


確かにこの戦国乱世において個人の能力は必要不可欠だが、少なくとも長宗我部家内部は親類同士での争いはしていない。ならその弥三郎の足りない部分の能力は自分を含めて家臣達が支えれば良い事だ。

当主が家の全てを一人で抱え込む必要はないのだから。

だが国親はそれすらも見通せず、弥三郎に対して「当主としての資格がない」と言って廃嫡宣言をした。

結局の所、父・国親はそこまでの人間だったという事が、今回の大広間で分かった。

なら自分は何をすべきか。それはもしも弥三郎が帰って来た時、ちゃんと迎えられる状態にするのが弥五郎にとっての新たな目標となったのだ。


「で、では五郎兄様は何故あのような事を言ったのですか?何故反対しなかったのですか?」


「弥七郎、俺の目的はただ一つ…兄貴をこの長宗我部家へ連れ戻すことだ。その為ならばどんな手を使ってでもやり遂げたい。父上を黙らせてでもな。それ故に俺はこの嫡男という立場を有効に使っていきたい。俺は武芸しかできん。だからお前は俺を補佐しろ。兄貴がまたここに戻ってこられる策を作れ。俺から言えるのはそれだけだ。」


その言葉を聞いた瞬間、弥七郎は自分を殴りたくなった。

五郎兄様は三郎兄様のためを思って動いて下さっただけだと分かったから、自分は五郎兄様を疑ってしまったからだ。ならば弥七郎の目標も自ずと見えてくる。弥五郎に言われた通り、自分は次兄である弥五郎を補佐し、弥三郎を連れて帰るという目標が。


弥五郎と弥七郎はそう話を終わらせると、共に大広間から出て行った。

その兄弟の野望は天下などではなく、ただ兄を連れて帰る為だけだった。



------------------------------------------------



『一条軍、西園寺連合軍に対して大勝する』



その知らせは土佐だけではなく四国中に瞬く間に広まった。

当初の各国の思惑は一条軍の敗色濃厚というものだった、そしてそれは長宗我部家も例外ではない。


一条軍が敗れた後、長宗我部国親は東の一条領を掠め取ろうと計画していた。

国親も一条房基と同じく、土佐を統一するという野望を抱いていた。その機会を密かに狙っていたのである。だが忍びから伝えられた内容は、国親の考えていた状況の真逆だった。

忍び曰く、「当初は一条軍が圧倒的に不利でした。ですが房基殿の御嫡男である万千代様が、房基殿に策を献策した模様。細かい話は残念ながら聞き取れませんでしたが、その策である逆落としは万千代様が考えたものです。」と言う。それを聞いた国親は「まさか…房基だけでも厄介なのに、その息子は知恵が回るのか。油断できぬ…。」と一人愚痴る。だが国親が驚くのはその後の話だった。


「ですが敵大将である西園寺公高を討ち取ったのは……弥三郎様にございました。それだけでなく、弥三郎様はその武勇を房基殿に見込まれ、婿入りすることになりました。」


・・・・・・・・・は? 弥三郎が敵大将を討った…!? それで一条家に婿入り?!

それよりも何故弥三郎が西土佐に!?

国親は目を丸くし、顎が外れるくらい大きな口を開けて固まってしまった。

あの弥三郎が!?。有りえない…あの女のような男が馬に跨り敵本陣へ突入したのか?!

凄まじいショックを受けながらも国親は脳を働かせる。これは喜ぶべきなのか?、それとも悲しむべきなのか?。前者の事を言うなら「我が息子は暗愚などではなかった」と考える。後者の事を言うなら「折角一条領を取れる機会があったのに弥三郎のせいでその機会が失われた」と考えるべきだろう。

そして国親は決断する。これは悲しむべき出来事であると。長宗我部家の悲願である土佐の統一の機会が奪われたのだ、喜べるはずがない。それに弥三郎は長宗我部家の者ではない、既に廃嫡して |(自発的ではあるが)この東土佐から追放した身である。いわば敵なのだ、許してはいけない。

国親は直ぐに息子と家臣達を大広間へ集める様小姓に命令した。


「一体今日はどうされたのか。」「殿が緊急の呼び出しと聞いて飛んできたわ。」「戦でも始めるのですかな?」「いやいや、もしそうならこんな悠長に大広間などに呼び出さぬだろうよ。」


大広間に集まった家臣達は主君の国親が来るまで、各々自分の考えを同じ仲間内で話し合っていた。

それらの光景を遠目で見ていた弥五郎と弥七郎も二人で小さな声で話し合う。


「父上はなんで皆を呼んだのだろうな?、家臣達がいるという事はただ事ではないという事だろう?。」


「さすがにそれは自分も…。ただ緊急の呼び出しですから、何かあるのは間違いないでしょう。」


そんな事を話していると奥の部屋から国親が出て来たので、大広間を支配していた音は鳴りを潜めた。

国親の顔を見る家臣達は「やはり何かあったのだろう」という思いになる。弥五郎と弥七郎も同じだ。

そして少ししてから国親が口を開いて話し出した。


「皆の者、最近の西土佐の一条家の事について話して起きたい事がある。」


そう言うと国親は先ほどの忍びから聞いた事を家臣達に話した。

その話を聞いた家臣団はみな口を開けて固まっていた。

「あの若が…」「いやいや嘘であろう!?もしそれが本当なら儂らはとんでもない誤解をしていた事になるぞ!?」「落ち着け!あの若ぞ!嘘に決まっておる!」「敵の大将の首だけではなく、三国司である一条家に弥三郎様が婿入りとは!」「何という事だ…。」「分家とはいえ、宗家は公家の家ぞ!」

口々に話し始める家臣達を尻目に、弥五郎と弥七郎もヒソヒソと話をする。


「何という事だ…。これでは兄貴を連れて帰る事なんてできんぞ!。どうする弥七郎?」


「いえ、寧ろ好都合かと。土佐七雄の盟主的である一条家に三郎兄様が入ったのです。ならば自分達は一条家の縁戚に当たることになります。確かに三郎兄様は家を出ましたが、その体に流れる血は長宗我部家の血です、なので我々はその一条家を支えれば良いのです。一条家を支える事は、三郎兄様を支えるという事になりますから。」


「なるほど…。やはり弥七郎は頼もしいな!」


そんなやり取りをしている兄弟を国親は少しチラッと見る。が、何か考えがある訳でもなかった。

話は全然聞こえてなかったのだから、当たり前といえば当たり前だが。

それから少し時間が経つと国親は話をしている家臣達にまた声をかけた。


「このままでは一条家がこの土佐を平らげてしまう可能性がある。その前に行動を起こす必要がある。つまりいつ何時に戦が始まるかも知れんという事をお主らに伝えておきたかった。今日はそれだけよ。だが絶対に油断するでないぞ、よいな?。」


「「「「「ははッ!」」」」」


そういうと国親はまた奥の部屋へ戻って行く。それに続き家臣達も部屋から出ていく。

弥五郎と弥七郎も出ていくのだが、何故か弥七郎は嫌な予感がしていた。


(「その前に行動を起こす必要がある」)


国親が言ったその言葉が、弥七郎の胸の中に引っかかっていたからだ。


(父上は何か企んでいるのかも知れない…。もしや三郎兄様を…。)


そう思うだけで頭が痛くなる事を考えていた弥七郎だったが、頭を振りつつ「いくらなんでも流石にあの父上が暗殺なんてする訳がない」と勝手に納得して大広間を後にした。





最近房基を殺してしまうのは勿体無いと思っている筆者です。

でも居ない方が書きやすいので結局殺しますが…(苦笑)。

房基「訴訟も辞さない」

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