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一条兼定奮闘記  作者: 鉄の男
13/21

第十二話 芽

初の戦闘シーンですが、筆者の力ではこれが限界でした泣

読むとわかりますが、ものすごく速く終わります汗

少し物足りないかと思いますが、それでも良ければお付き合い下さいませ…。

「さて、話を聞かせてもらおうか。」


小姓に連れられて房基の元へ来た万千代と弥三郎は、陣へ来るなり房基からそう言われた。

房基の表情は険しかった。たとえ策があったとしても現状は敵方有利であり、一切の油断が出来なかったからである。しかもその策をまだ知らない房基、表情が険しいのも仕方がなかった。

だからこそ早く万千代の策が聞きたかった。


「はっ、では言わせてもらいます。他の方々もお聞きください。」


万千代がそういうと、陣に居た表情の暗い各家臣達は一斉に黙り、耳を澄ませた。

その静寂は、嵐の前の静けさと言ってもいいだろう。


「細かい事を抜きで言わせてもらいますと、奇襲を仕掛けます。」


その瞬間その場の空気が凍った。万千代と弥三郎以外の者達の顔が一斉に固まる。

それもその筈。此処に来る前に弥三郎が言った通り、敵本陣は崖と崖の細い道にあり、奇襲など到底できるはずがないのだ。道と言えば前か後ろだけしかない。それこそ奇襲など考えるだけ無駄だった。

だが万千代はそれをすると言った。

「遂に若様も現実が見えなくなったらしい」と誰かが言うと、黙っていた家臣達は火に油を注ぐかの如く一斉に万千代に対して、口々に文句を言い始めた。

だがそんな状態で万千代は次にこう言った。


「はぁ、どうやら我が一条家の家臣団は皆臆病者のようです父上。多分この者たちは一条家を見放すお積りのようだ。」


それを聞いた家臣団、あまりの事に絶句してしまった。そして数秒経った後、先程とは打って変わって万千代に怒号をかけ始めた。「誰が臆病者か!若といえど聞き捨てならぬ!」「よくもこの儂を馬鹿にしおったな!一条家で一番の槍使いであるこの儂を!!」「何を言うかと思えば…お主が我が一条家で一番の槍使いなどありえぬわ!一番は土居殿よ!貴様はただ槍を振り回しておるだけではないか!」「なにを~!!?」「そもそも槍以前の問題で、若様の策はまず無理じゃ!やはり早期和平を…」そう言おうとした家臣の言葉を遮った者がいた。


「うむ。万千代様の言う通り、我が一条家は臆病者ばかりですな。流石は万千代様、素晴らしい目をお持ちですな。ですが某は違いますぞ?、もし使命を言われれば某は例え一人でも敵に打って出ますゆえ。」


羽生監物はにゅうけんもつだった。


「それにお主ら、まだ万千代様は詳細を話していない。にも関わらずやれ槍使いやれ和平など…恥ずかしいとは思わんのかお主ら?それでも一条家の武士もののふか?」


そう言われた家臣団は皆黙ってしまった。監物に言いたい事はあるが、確かにまだ万千代の話は終わってはいない。彼らは自分の浅はかな考えに顔を下へ向ける。

またその場が静かになると「話の続きを」と監物が促したので万千代は話を続けた。


「では詳細を話させていただきます。確かに皆様方が言う通り今の奇襲は自殺行為です。故に夜を待ちます。現在敵の兵に酒を貢いでいる者たちは皆、私の指示で動いている者たちです。なぜ酒なのか。理由は敵の警備と気を緩ませる為です。多分今頃敵は酒をゴクゴク美味しそうに飲んで明日の為に士気を上げているでしょう。ですが考えて下さい、酒を飲んだ後で戦が出来ると思いますか?足がふらふらで気も緩みまくっていて警備が出来ますか?答えは「無理」でしょう。そこを突きます。さすれば例え相手が大軍であったとしても、寡兵である我が方が勝ちます。それに…」


そこで万千代は言葉を切る。そしてずっと話を聞いていた家臣団は、知らず知らずの内に万千代の前へズリズリ顔を近づけていた。房基は椅子に座りながら、宗珊は家臣団と共に、監物は房基の隣で万千代の言葉を待った。そして万千代はまた話を始めた。


「それに我らは精鋭です。今まで何度も各地で戦い抜いてきたつわものです。そんな我らが、夕方から酒を貪っている奴らなどにやられはしませぬ!。先ほど私は皆様方を馬鹿にしました、ですがそこですぐに反論したという事は臆病者ではないという事。だってそうでしょう?、このような時ですら口喧嘩ができるのですから。真の臆病者は馬鹿にされても何とも言わずただ黙るのみ。だからこそ言える、この戦で我らは間違いなく勝てるとッ!!!」


万千代の話が終わる。

そしてその瞬間に一条軍の陣幕は、張り裂けんばかりの大声に包まれた。

今まで文句を言っていた家臣達の目は希望に満ちていた。先程の暗い表情は嘘のように無くなり、まるで燃え盛るような炎の様にやる気を出した。一部の家臣は「先ほどは申し訳ござりませぬ!やはり若は天才でございまする!」「そうよそうよ!我らは誇り高き土佐一条氏の家臣!このような時に落ち込んでいては土佐一条氏の恥さらしよ!!」「真にそうだ!我ら武門の誇りを忘れておったわ!!」「ついでにこの戦で儂が一条家一の槍使いであることを証明してくれるわ!」と士気が天井知らずである。

だがやはりそれでも自信のない家臣から「奇襲と言えどバレてしまっては意味がありませぬ。それに奇襲を仕掛ける場所は崖に御座いますれば。そこの所をお聞かせ下さりませぬか若様?」と言われたので、万千代はそれについても説明した。


「よくぞ聞いてくれました!。まず松明たいまつを長い棒に括り付けて、現在布陣している所の地面に刺します。これで夜になったとしても、敵からはこちらが動いていないと思われます。次に崖についてですが、これはそのままです。崖を下ります。かの義経公の逆落としに習い、一気に崖を下ります。以上が奇襲を悟られぬための策です。」


それを聞いた自信のない家臣は「まさか我らがあの伝説の逆落としを仕掛けるとは…」と驚いたが、やるしかないと腹を括ったのか、その顔は暗くなかった。

すると今まで黙っていた房基が椅子から立ち上がって口を開いた。


「あっぱれ!!正しくお見事と言わざるを得ぬわ!よくこのような策を考えたな万千代!そしてうまく我が軍を鼓舞してくれた、礼を言うぞ!」


「いえ、弥三郎あっての策ですゆえ。褒めるのでしたら弥三郎を…」


「褒めてやってください」と言おうとした万千代だったが、その前に房基が歩いて弥三郎の元へ行ってしまった。万千代は少しいじけてしまった。

房基が弥三郎の元まで行くと、弥三郎もいきなりの事だったので少し緊張してしまったが、何とか耐えて房基の話を聞く。


「よくぞ万千代と共に策を考えてくれたな。礼を言うぞ。それはそうとお主は…たしか長宗我部国親殿の息子であったな?」


いきなり自分の父親の事を聞かれたので弥三郎も「え!?あ!はい!そうでしゅ!」と噛みながら答えると房基はとんでもない事を言い出した。


「ふ~む。年は10位であろう?。ちと早いが…今日初陣を飾らぬか?。もしこの戦に勝てたら娘を千をお主にやろう。まぁ長宗我部を名乗ると色々問題が起きるゆえ、婿入りとなるが…どうじゃ?」


それを聞いた弥三郎は口から心臓が飛び出そうなほど仰天した。はっきりいえば、少しだけ思考が止まったと言ってもいい。ただでさえ寝床やタダ飯を貰っているのにも関わらず、それに付け加え婿入りを提案されたのだ。前世風に言えば、ニートでごく潰しなのに、いきなり大企業の社長から「儂の息子にならんか?」と言われたのと同じである。

少し時間が経つと弥三郎は再起動した。


「ぼ、ぼぼぼぼぼぼぼ僕なんかが房基様の息子だなんておおお恐れ多いですすすすす!!!!。それにままま万千代様がいますしそんなことしししたら問題が起き…」


そこまで弥三郎が言うと、いつの間にか隣に来ていた万千代が「別に問題ないだろ?。弟になるだけなんだし。まぁ歳は弥三郎の方が上だけど。」と言った。それに続いて「全くよの。なんの問題も無いわ。むしろこんな可愛い息子が増えるのだ、我が家としては歓迎するぞ?」と房基が言う。言葉の後半が少し危ないが万千代はスルーした。


「ななななら、ぜぜぜぜひお願いしましゅるるるるる!!!!!!」


弥三郎よ、本当に大丈夫か。

そんな思いを胸に万千代達はこれから仕掛ける夜襲の事で、準備を始める。

万千代と房基が弥三郎に対して婿入りの話をしている時、先程までいた家臣団は既に本陣を離れ、万千代に言われた松明の準備をしに各自陣へ戻っていた。


四国の土佐において、現在風「一ノ谷の戦い」がこれから起きようとしていた。



-------------------------------------------



時間は進んで既に周りは闇に囲まれてしまった。前世風に言えば、今の時間は夜中の1時に相当する。

そんな中、父・房基率いる千五百の軍は、ひっそりと西園寺連合軍の横にある崖の真上を目指して行軍していた。万千代が言ったように、酔っぱらっている敵兵は、万千代たちが元々いた場所を見て、松明を確認すると「うぃ~今日はもっとのむぞぉ~」と大きな独り言を言って自分達の陣へ帰っていく。

そんな様子を崖の上から見ていた房基は「全く呆れる。奴らもう既に勝った気でいるようだ。」と独り言を呟くと、それに反応した土居宗珊が「では教育してやるとしましょう。」と答える。

そんなやり取りを少し後ろで聞いていた万千代は「なんかどこかで聞いた事があるセリフだな…」等と全く関係のない事を考えていた。


そうしてまた時間は進み、時間的にいえば3時に相当する現在。

既に一条軍は崖の上に到達しており、各自は奇襲を仕掛ける最終準備をしていた。

そんな中、房基は万千代に対して、一つ心配事を投げた。


「今まで気になっていたことなのじゃが、まさかお主も崖を降りるとは言うまいな?」


そう万千代に言葉を投げると、万千代は黙ってしまった。

それもその筈である。いざ崖の上に来てみれば、その高さが意外にも高かったのだ。

それを馬で降りるなど考えたくもなかった万千代は少しプルプル震えていた。


「いや…あの…」


そういって何か言い訳を考えていた万千代だったが、房基は直ぐに言葉を放った。


「言っておくが、お主はこの戦いに参加してはならぬ。既に策を考えたという功績がある。それにまだお主は6歳じゃ。お主が死ねば一条家は絶えてしまう。此処まで来て武者震いしているのは分かるが、どうか我慢してくれ。」


「…分かりました。」


正しく天運。万千代はただ単に怖がっていたのだが、それを武者震いと勘違いしてしまった房基によって出陣を止められてしまった。内心は「やったぜぇぇぇぇぇぇ!!!」と万千代は喜んでいる。

だが弥三郎はそうではなかった。まさか自分の初陣が崖からの奇襲など、少し落ち込んでいた。

だがすぐに「万千代と兄弟になれる。千姫様をお嫁に貰える。一条家の息子になれるんだ…!」と意気込み、被っている兜を締め直す。締め直すと同時に持っている槍も確認した。


敵兵は既に夢の中へ沈んでいる。警備兵ですらうたた寝である。

準備を終えた一条軍千五百は、まさに突撃の合図を待っていた。


「皆の者!!今まで散々蹴散らされた恨み、晴らすは今ぞッ!!!全軍突撃ィィィィ!!!!」


一条房基の号令の元、一条軍は房基と共に崖を降り始める。

その勢いは、かの武田信玄公の風林火山の一角である「風の如く」。

酒の沢山飲んだせいか、崖の中頃まで来ても敵は全く起きようとしない。


「皆の者ぉ!ここが正念場ぞぉ!!」


オォォォォォォォォォ!!!!と高らかに大声で相づちをうつ一条軍、最早向かう所敵なしであった。



崖の終盤に差し掛かった時、異変を感じた警備兵の一人が周りを見渡すが、何もない。

だが明らかに…徐々にだが間違いなく地響きが警備兵の足の裏に響き渡る。警備兵は仲間を起こそうとして、寝ている所に歩こうとしたが、その警備兵は仲間の所までたどり着けなかった。

歩こうとした時、頭上から降りてきた一条軍の兵士に討ち取られたのだ。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!逝けや死ねや一条家の為にぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

「おりゃおりゃおりゃおりゃあ!!このふぬけ共全員討ち取ってくれるわぁぁぁぁ!!!!」

「我が隊は南の敵を!残りは北をお願いいたす!!!!いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

「この儂こそが四国一の槍使いよォ!誰ぞこの儂を討ち取れる輩はおるのかァ!?」


一条家の各武将は完全に浮き足立っている敵に対して冷静に対処していた。

「いやだぁ!」「死にたくねぇ!」「おっかぁ!おっかぁ!!」と嘆く敵兵を次々と討ち取っていく。

そんな中、房基は監物・宗珊の両隊を引き連れ、敵本陣へ突撃していた。

万千代は上からその様子を見ていたが、間違いなく言える事は、一条軍が一方的に西園寺軍を蹴散らしていた。

そんな様子を見ている時、現地の房基達は、こんな状況でも懸命に大将を守ろうとする敵親衛隊の抵抗で少し苦戦していた。


「くぅ!。敵もなかなかやりおる!!!数では完璧に負けておるゆえ、此処で時間を食われていては直ぐに敵は盛り返すぞ!!!」


「ですが敵も必死です!!ここが踏ん張りどころかと!!!!」


監物がそう答えながら敵の攻撃をかわす。宗珊は一人で5人の敵兵を抑えていた。

だが敵の攻撃をギリギリでかわし続けている所を見ると、やはり辛い物がある。


「若に大層な事をいっ…」ガキィン!!!!「…た割に、拙者がこのような様では」カァン!!「若に顔向けできませぬ…なぁ!!!」


そう言いつつ敵を抑えているあたりまだ余裕は有るのかもしれない。

だがそうも言ってられず、敵兵は徐々に宗珊を押し始めていた。

それを片目で確認した房基は「誰でもよい!!!!公高を!!公高の首を取れぇ!!」と味方に叫ぶ。

だが誰もが、敵を抑えるのに必死で、房基へその応答は出来なかった。そして敵の一人が房基へ斬りかかる。キィィィン!!と高い音がその場で広がる。何とか防いだ房基だったが、その反動で馬から落ちてしまった。そこをもう一度敵兵は狙って斬りこんでくる。「もはやここまでか…」と房基が目を閉じた時、突如として敵本陣より房基が望む答えが返ってきた。



「敵大将・西園寺公高!!この弥三郎が討ち取ったりーーーーーー!!!!!」



その直後、敵味方の動きが止まる。

房基はゆっくり目を開けると刀が目の前で止まっていた。

そしてその刀は房基の目の前で落ちた。敵兵が一斉に逃げ出したのである。大将無き今、抵抗しても無駄だと悟った敵兵は四散して元の領地の方まで走って逃げ始めた。


「勝った…のか…?」

「やった…やったぞーーーーー!!!!」

「我が軍の勝ちじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」

「勝てた!勝てたぞ!!」


一条軍は口々にそう言い始めると歓喜の声が湧き始めた。

それは房基も例外ではなかった。


「ふ…ふふふ、危うく漏らすところであったわ…」


そう言いながら立ち上がると、自分の馬にまたがり、大きな声で言葉を放った。



「我ら一条軍の大勝利じゃあ!!皆の者ォ!勝ち鬨を挙げよォォォォォォォォォ!!!!!!」



その声を聞くや否や、各地から「エイ!エイ!オー!」「エイ!エイ!オー!」と声が帰ってくる。

上から見ていた万千代も大きな声で「よっしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」と叫んでいた。

そして敵大将を討った弥三郎が、首をもって房基の元へ駆け寄ってくる。

そして大喜びで声を出した。


「や、やりました!!房基様!!!!敵大将の首をとりましたぁ!!!!」


「うむ!!!真に大義である!!!よくぞ討ち取った!!!婿入りの件、歓迎しようぞ!!」


この時の時刻は前世でいう4時頃。日は昇りかけており、薄らと闇が消えていった。

現地で戦っている者からすればあっという間の出来事であった。万千代からしてみれば、「やっとか」と言うくらい長かったのであろうが。


こうして現在風「一ノ谷の戦い」は一条軍大勝利の結果に終わった。

そして同時に近隣諸国からは「公家大名は腐らず」とその強さを恐れられる。


今回の戦で大手柄を挙げた万千代と弥三郎、その名は四国のみならず海を越えた先の国、九州でもその名は広まるのであった。







更新に関しては本当に不定期です。

なるべく週刊を目指していますが、現状少し難しいです。

気長に待っていただけると幸いです(~_~;)

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