1 双子神、勇者と共に召喚される。
あまり人の居ない住宅街を三人の学生が歩いている。
一人は髪を茶色に染め、整った顔はいかにもチャラそうなイメージを与えてくる少年。
私はチャラい男は嫌いなのでどうも好かない。
二人目は黒髪黒眼で、こちらもまた整った顔をしているがどこか冷たい雰囲気を醸し出す少年。
もう少し柔らかくなれば引く手数多だろうに・・・。
そして最後は黒髪の少年と似た顔立ちの少女。顔は似ているが纏う雰囲気は柔らかい。
うむ。かわいいな。
彼らはなにやら楽しそうに家路についている。
さて、私が誰なのかというのは君たちも気になっているだろうが、私は訳あって正体を明かせない。
不満はいろいろあるだろうが、一応私はこの物語の語り手なのだ。我慢してほしい。
ん?ふざけるな?さっさと教えろ?
ちょ、ちょっと待って欲しい。だから今ここで私が正体を明かすと今後の展開にししょ・・・げふんげふん。
何も言ってない。何も言ってないぞ。支障が出るなんて一言も言ってない!・・・・あ。
・・・・・そ、そんなことよりほら!!彼らは実に仲が良さそうだぞ。
「でよ、珠季の奴また断りやがったんだよ」
「俺はお前みたいに告白されればすぐOKしたりしないからな」
「ひっでー俺だってちゃんと相手を選んでるっつーの!」
「でも私、彰が断ってるとこ見たことないよ?」
「えっ!?ちょっと待ってあーちゃん。いつ?いつ、どこで見てたわけ!?」
「あはははは。教えなーい♪」
「亜珠、こいつは教育に悪いから、俺がいないときに近づくなって言っただろう?」
「うん。ごめんね、珠季。もう口も訊かないね」
「分かればいい」
「ちょっと待てお前ら!!親友に向かってなんてことを!!」
「「来るな変態!」」
「へ、変態!?」
・・・・と、まぁいつもの平和な日常を送る三人。
彰とかいう男は一回刺された方がいいな。うん。
おや?三人の足元に何やら怪しげな魔法陣が現れたぞ?
「え?な、何これ!?」
「うお!!足が沈んだぞ!?」
「亜珠!つかまれ!!」
一瞬辺りを照らす閃光。そしてそれが消えた時には三人の姿も忽然と消えていた。
ふむ。では私も次の舞台に移るとしようか。
☆★☆★
「陛下!召喚の儀の準備が整いました」
「そうか・・・。今行く」
処変わってある王国の玉座の間。
どうやら召喚の儀に間に合ったようだな。
やれやれ。空間を越えたり時間を越えたりいそがしいな。
こんなこと二度とやりたくないぞ。
はぁ・・・。とりあえず陛下とか呼ばれた男についていけばいいみたいだな。
召喚が行われる部屋にはローブを着た数名の人間と、部屋の中央に書かれた巨大な魔法陣しかないようだな。
なんとも殺風景な部屋だ。
陛下が部屋に入ると一人だけ色の違うローブを着た男が寄って来たな。
しかし、陛下という名前は変な名前だな。
・・・・何?陛下とは名前ではない?王の尊称だと?
ほほう。それは知らなかった。ここ最近人間と関わってなかったのでな。
人間と、と言うということはお前は人間じゃないのかだと?
そ、そんなことはどうでもいいだろう!!
「ロービス。すぐにできるか?」
「!陛下。もちろんです。あとは神言を紡ぐだけで御座います」
「そうか。ではやってくれ」
「御意」
おお!ついに召喚が始まるみたいだな。
ロービスとかいう男が神言を紡ぎだした。
ちなみに神言というのは神より与えられし力を持つ言葉のことだ。
私は昔のことなら何でも知っているからな。頼りにするがいい。
「・・・・イルス・シャーラ・ウィティーリオ・ヴァイシェ・チス・メイラス・サリア!!」
神言が紡ぎ終わったその瞬間、先ほどと同じように閃光が走った。
召喚が成功したようだな。
その証拠にほら、魔法陣の上に人影が現れている。
閃光が止み、視界が戻っていくな。
そして、召喚した側と召喚された側、双方の姿見えた瞬間。
その場にいた全員が叫んだ。
「「「「はぁぁあああああ?」」」」
うるさいな。少しは静かにできないのか?
というか召喚した側まで驚いているのはどういうわけだ?
「ロービス!!何故三人も召喚されたのだ!?どういうことだ!!」
「え?何ここ。わたし達さっきまで普通に歩いてて・・・」
「ぎゃーーー!俺達失敗しちまったのか!?」
「亜珠!大丈夫か?怪我はないか?」
「そ、そうは申されましても陛下。私めも何が何だかさっぱりでして・・・」
「おいおいおいおい!いったいここはどこなんだよ!あんた達誰だよ!」
なるほど。てっきり召喚されるのは一人だと思っていたのだな。
阿呆な奴らめ。って、珠季の奴はさっきから亜珠の心配しかしてないが・・・大丈夫なのか?あいつは。
大混乱だな。それぞれが喚きまくってもう何が何だか・・・・おや?来たか。
「おおお落ち着いて下さいへい・・・っは!!この気配、まさか!」
「どうした。ロービス?」
「御安心ください陛下。女神様がこの場を治めに来てくださいました」
ロービスが言い終わると同時に天より光が差し込んで、銀髪碧眼の女が現れた。
どうやら大丈夫そうじゃの。
「おお!女神様。よく来て下さいました。して、これはどういう「あんた達・・・」は?」
ん?何だか様子がおかしいな。
「あんた達!!何人ん家の子供達を勝手に召喚しちゃってるのよ!!」
「「「「はぁぁああああああああああ!?」」」」
・・・・はぁぁぁぁ・・・・。