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女王様の初恋?

 校門を入って校舎に向かう私は、多くの視線を感じた。

 立ち止まって校舎を見上げてみると、幾つかの窓から顔が引っ込むのが見えた。

 毎朝のことで、もう慣れたけど、人が登校して来るのをこそこそと覗くことしかできないヘタレな男子はそれだけでアウトよ。

 自分で言うのも何だけど、私って昔からいつも注目の的だった。「小泉明日香」という名前も、芸能人ぽいでしょ。

 でも言い寄ってくる男子達は、みんな、つまらない連中ばかりで、彼氏にしたいって思う男子は、まだ出逢ったことがない。

 最近、けっこう女の子に人気のあるE組の大崎一也君から告白されて、ちょっと付き合っていたけど、只のナルシストだって分かったから別れた。大崎君は「別れないでくれ」って泣いて頼んできたけど、もう、全然、興味なし。

 ――でも、時々、不安になる。私って、ちゃんと恋ができるのかなって。


 私が上履き入れを開けると、上履きの上に封筒が置いてあった。

 ――あ~あっ、またか? 

 でも、いつもは、もっと女の子が喜びそうな可愛い柄の封筒なのに、何なのこれ? コンビニで売っている茶封筒じゃない。これだけで既に却下ね。

 私は、その封筒を右手でぴらぴらとさせながら持って、教室に入り、自分の席に着くと、封筒を開けて、中の便せんを取り出した。

『小泉さん。おはようございます。F組の山田太郎です。お話ししたいことがあるので、放課後、校門で待ってます』

 よりによって「平凡」という言葉をキャラにしたら、ああなるって感じの山田君ですか。まあ、進学コースのF組にいるんだから頭は良いのかもしれないけど、同じ制服を着ててもあか抜けて見えない体型に、いつもヘラヘラ笑っているような締まりのない顔。話したことないのに、廊下ですれ違うといつも会釈をしてくる。

 身の程知らずって、ある意味、すごいことね。


 放課後。

 下校していた私は、校門の側に山田君が立っているのを見て、今朝の手紙のことを思い出した。

「あっ、小泉さん。来てくれたんですね」

 来るも来ないも校門を通らなければ帰れないじゃない!

「話って、何かしら?」

「あ、歩きながらでも良いですか?」

「ええ」

 まったく。私の従者にしても釣り合わないわね。

「いきなりで申し訳ないんですけど」

「何?」

「あの、……僕は小泉さんを見ているだけで幸せなんです」

「はい?」

 私は、ちょうど赤信号になった交差点で立ち止まって、山田君の顔を見た。

「どういう意味?」

「僕も小泉さんは素敵な人だなあって思っているんですけど、僕なんかは、小泉さんの隣にいる資格すらないことは分かってますから、せめて見つめさせて欲しいってことです」

「……」

「黙って見つめていて、ストーカーとかと思われたら嫌だし、ちゃんと小泉さんの許可を得ておこうと思って」

 何なの、こいつ? そんなこと言うためにわざわざ手紙を? 勉強はできるけど、本当は馬鹿なの?

「見るのも駄目だって、言うのなら諦めます」

「見るなとは言えないし、……あまりにしつこいって感じない程度なら、まあ、良いけど」

「本当ですか? 良かったぁ」

 近くで見ると、けっこう笑顔が可愛いじゃない。でも、こんな変な奴は初めてよ。

「話はそれだけ?」

「はい。そうです」

「そう、それじゃあ」

 私は、山田君とどう接して良いのか分からなくて、とりあえずこの場から逃げようと、赤信号だったけど横断歩道を渡ろうと、足を踏み出した。

 でも、私は強く右腕を掴まれて、後ろに引っ張られた。

 後ずさりさせられた私は、腕を引っ張った山田君を睨んだ。

「何するのよ!」

「赤信号だったでしょ! それに車も来ていたじゃない!」

 確かに、今、すごいスピードで交差点を車が走り去って行った。

「……何よ! あれくらいなら渡り切れてたわよ!」

「赤信号なんだから、渡ったら駄目だって決まってるじゃない! 駄目だよ、絶対!」

 何よ、こいつ! 私に命令するつもり?

 さっきまでのおどおどした感じからは思いも寄らなかった強い口調。それに、……すごく真剣な目つきだ。


 あれっ、何だろう? 

 今、胸の奥で、キュンって、何かが鳴った。

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