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1.ひとつ目の乳は巨乳!


 巨乳様は私との約束を守ってくれたらしく、ぼんやりとであるけども「私」が私として生まれる前の記憶があった。

 十二歳の若い身空で死んでしまった私、なんてカワイソウなのかしら。

 なんて思いながら目の前の巨乳にむしゃぶりつき、小さな手でもにゅもにゅと揉む。もっと出てこい、私は空腹なのだと。

 転生後ひとつ目の乳は、私の母様の胸だった。それも美乳で巨乳!

 私で四人目だという母様の胸は大きく、私の頭ほどの大きさがありそう。将来私もこんな大きさになるのかなぁと、なったら肩こりが大変そうだなぁと、そんなどうでもいいことを考えながらもにゅもにゅと揉む。

「ミリィはおっぱいを飲みながら、母様の胸を揉むのが大好きね」

「あら、ルティもそうだったのよ」

 すぐ上の姉様と母様の声がして、私はうっとりと浸っていた恍惚から現実に戻ってくる。

 私が生まれてこの方学んだのはそう多くない。私の新しい名がミリィ――ミルミラという名で、ふたりの兄様とひとりの姉様がいて、それなりに裕福な家庭だということくらい。

 一番上はアジット兄様、次がトルーヤ兄様、その次がこのルティ――ルチアヤ姉様。そして私。

 姉様はこうしてよく会いに来てくれるけど、兄様たちは滅多に来ない。たまに会える時にはとても可愛がってくれることから、全寮制の学校か何かに通っているのではと思っている。

 兄弟仲が悪くないってのは素敵なことよね。

「奥様、旦那様が見えられました」

 母様の侍女を務める女性が、父様の帰りを告げる。

 母様は未だむしゃぶりついたままの私に謝りながら授乳を終えると、私を姉様に預けて衣服を正す。

 この世界の衣服は、「私」のいた世界の〝近代よーろっぱ〟とやらの衣服に近い。産業革命頃というか、女性が社会進出を始めた頃……とやらに。腰の辺りを絞った意匠がほとんどで、その胸の立派さを強調したものが多い。

 巨乳様、〝ぐっじょぶ〟よ。

「ただいま、キャナル」

 先触れと共に入ってきた父様は母様と抱き合って軽い口吻を交わす。身内目で見てもこのふたりは美男美女。兄様たちも格好良かったし、姉様も将来が楽しみな美少女。容姿なんて普通であればいいと思ってたのだけど、少し楽しみ。

 愛らしい系の美少女なら泣き落としに使えるし、綺麗系の美少女なら高圧的に使えるもの。うふふ、美少女の胸が揉み放題が楽しみだわ。

「ただいま、ルチアヤ。良い子にしてたかい?」

「お帰りなさいませ、お父様。ルチアヤはお姉様ですもの、ミリィの手本にならないような真似はしないのですわ」

 ちょっと背伸びをしたい年頃の姉様は、私を抱いているために座ったままの姿勢で父様と挨拶を交わす。

 金茶の髪と青の瞳の美少女。

 ああっ、私が年下じゃなかったら。好みに育てるのにっ。これは是非とも妹を作ってもらわねば。

「今日も元気にしてたかい、ミルミラ。

 ああ、また大きくなったね」

 父様は姉様から私を受け取ると、重さを確かめるように大切に抱き上げる。

「あー、うー!」

 父様、ミルミラは今日も元気です。

 舌が回らないどころでなく何を言ってるのかすらわからない言葉だけど、父様にそう元気よく応える。すると父様は嬉しそうに笑ってくれるのよね。

 まだ幼いけど、孝行娘でしょう。父様。けぷっ。

 げっぷがまだだった私は、父様に背中を軽く叩いてもらってげっぷをする。

 赤ちゃんって結構大変だわ。何をするにもひとりじゃ出来ないんだもの。その分、母様や姉様の愛情をたっぷり感じられるんだけどね。



 そんな訳で、たっぷりの愛情を受けて……私は「私」が亡くなった十二歳になっていた。

 妹が欲しいとねだった幼い私の期待に応え、私の下にふたりの弟と妹が生まれている。四男三女。貴族社会でも稀にみる子沢山だという。

 いや、艶福家が、ってのは珍しい話じゃないんだけど、同じ奥さんとの間ってのは珍しいとか。オーヴィク伯爵はお元気ですなぁと夜会の度に冷やかされてると、口の軽いお客様が教えてくれた。その後に後妻を探していてねぇと続いて、そのお客様はわが家に出入り禁止になった。

 当然だわ。

 美しく育った巨乳を持つ姉様を、あんなハゲオヤジになんてくれてやれないもの!

 母様に似て美人で巨乳な姉様は私の自慢。一緒に寝たりお風呂に入ったりする度に大きくなぁれとマッサージしながら揉んだかいがあったというものよ!

 そんな姉様がハゲオヤジの人妻だなんて、あの巨乳に私以外の誰かが触れるだなんて! 恋愛結婚であっても認めることなんて出来やしないもの。

 その姉様は現在、大恋愛の末に婚約中。結婚の許可をもらいにお相手の男性が来られたとき、姉様、ほんとうに嬉しそうだったわ。そうでなかったら、恋愛の末だとしても、断固反対したに違いないわ。

「ミルミラ、身体には気を付けるのよ」

「辛いことがあったら何でも相談しておいで」

 後は馬車に乗り込むだけという私に、仕事を休んでまで立ち会ってる父様とその父様に支えられて涙汲んでいる母様が言う。

「大丈夫ですわ、お父様、お母様。

 おふたりの娘として恥ずかしくない淑女になってまいりますわ」

 そんなふたりに、私は淑女らしく言葉を返す。

 生まれたばかりの時には裕福だとしか思わなかったけれど、私の生まれたオーヴィク家は貴族――それも国の中枢に深くかかわるお家柄だとか。オーヴィク家は爵位は伯爵と低いけど、五彩伯の一家。国の四方を守る辺境伯、中枢を担う五彩伯――といえば、王家に連なる公爵家にも並ぶ名家だったりする。

 つまり庶民の「私」の感覚ではとんでもないお貴族様で、本当は乳母やでなく母様が手ずから子育てするなんてあり得ないことだそう。

 そんな貴族としてはちょっと規格外の家で育った私だけど、貴族の子女としての役目は果たさなくちゃならない。この国の貴族の子女は余程の例外を除いて、一定の期間、親元から離れて合同生活を送らなくてはならないそう。兄様たちが私が生まれたばかりの頃に家にいなかったのも、このため。

 この話を聞いた時、これが巨乳様との約束事ね!と、思わず心の中で狂喜乱舞しちゃったわ。

 嗚呼、私の乳が待ってるわ。私が手塩にかけて育ててあげるわ、待っててね。うふふふふ。

「ミリィ、お前と立派な淑女となって会えるのが楽しみだよ」

「夜会デビューの相手は僕が務めてあげるから、頑張っておいでね」

 続いては兄様方。

 兄様方、お仕事はどうしたんですか?という喉まで出掛かった疑問は呑み込んで、ありがとうございますと微笑み返す。

 皇太子殿下の懐刀で知られるアジット兄様と、黄金色の毒薔薇と名高い文官のトルーヤ兄様が暇なわけないもの。仕事を抜けて来たに決まってるわ。

「私も兄様たちと夜会に出れる日が待ち遠しいです」

 十二歳の少女らしく背伸びした愛らしい淑女として微笑んで、文字通り背伸びして兄様たちに親愛の口吻を頬に送る。

 仲の良い父様と母様の影響か兄弟仲はとても良く、浮いた噂のない兄様たちは弟妹たちを可愛がってくれている。姉様は婚約しちゃったし、弟妹たちはまだ幼いから……その愛情は私に向けられる量が多い。違う理由もあるのだろうけど。

 兄様たちに可愛がってもらえて嬉しいのだけど……兄様たち、男なんだもの。乳がないから抱き締められても嬉しくないし、鍛えられた硬い胸板なんて夢も浪漫もないわ!

 だから私は兄様たちよりも姉様のほうが好き。異論は認めないわ。

「ミリィ、貴族舎では貴女はオーヴィク伯の娘ではなくただのミルミラになるわ。

 父様や兄様たちの助けはないものと考えなくてはだめよ」

 弟妹たちをあやしていた姉様が、眠ってしまったシィユラを母様に預けてから私に声をかけてくれた。

 私と目線を合わせるために姉様がしゃがんでくれたから、目の前で姉様の巨乳が揺れる。

 この巨乳とも暫く会えないのね。

 涙が溢れてきそうだわ。

「理解してます、貴族舎で試されるのは個人の資質だけと。

 姉様、ミルミラはミルミラとして、オーヴィクの名に恥じない行動を示して参りますわ」

 寂しいの。とでも言わんばかりに、姉様に抱きつく。

 嗚呼、豊満な姉様の胸。柔らかで甘い香りの香水が姉様に良くあってるわ。思わずじかに揉み扱きたくなるくらいに。

 さすがにそれは出来ないから、ぐっと顔を近づけて顔で感触だけ。

「ミリィはとっても寂しがりだから心配だわ」

 姉様は抱きついてる私の頭を撫でながらそう笑った。「私」の時には、乳以外のことは淡白だと言われたことがあるほどなのに。今の私は……乳と家族以外にはそうかも知れない。家族以外なんて数えるくらいしか会ったことがないから良くわからないけど。使用人のみんなも、大きな括りでみれば〝家族〟だし。

 姉様の巨乳から名残惜しいけど顔をあげ、微笑む。

「姉様のことが恋しくなっても頑張りますわ。姉様は私がいなくても、婚姻式の仕度を怠けたりなさらないでくださいませ」

「……刺繍は苦手なのだもの。ミリィみたいにわたしは上手ではないから仕方ないでしょう」

 拗ねる姉様はとても可愛らしい。次に義兄様にあったら苛めてしまいそうだわ。

 姉様から離れて、母様に抱かれて眠る妹と母様にくっついてる弟たちに口吻を落とす。

「母様と父様、それからシィユラのこと、お願いね」

 兄様方は仕事が忙しく家に戻ることが少ないし、姉様は婚家で花嫁修業と結婚仕度の真っ最中。だからこの広い屋敷はやっぱり仕事が忙しい父様と、母様、それから幼い弟妹だけ。

 幼くても立派な紳士であるふたりの弟たちには、母様とシィユラを守ってもらわなきゃね。

「わかっています、ミルミラ姉上」

「はいっ」

 しっかりと返事をした、ふたりに母様が笑う。

「ミルミラ、私の可愛い娘。

 どんなことがあっても私たちは貴女の味方、辛いことがあったら意地を張らずに帰っていらっしゃい」

 シィユラを抱いているから私を抱き締めることは出来ないけど、頬を寄せて、囁くように言う。

 貴族舎から逃げ帰ることは貴族の子女として不適合だってのに、そう言ってもらえるのは凄く嬉しい。

「大丈夫ですわ、私は母様の娘ですもの」

 そう、私は「私」だけど、母様の娘だもの!

 立派に! 淑女として! 巨乳を揉みまくって来るわ!


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