サーヴィスの良いドローン
紙の本が高級品となり、街頭の監視ドローンが顧客の行動を24時間監視する近未来。人々はわずらわしいデジタル追跡を逃れるため、路地裏の古書店で密かに読書を楽しんでいた。
これは、ただ静かに本を読みたかっただけの男と、顧客満足度100%を追求しすぎる最新店舗AIとの、命がけ(?)の攻防の記録である。
最初は何処かに蚊か蝿の類が飛んできたのかと思った。しかし…それにしては羽音が大きい、とも思った。
書店に立ち寄って小説の単行本を買って帰るその道すがら、のことである。
羽音(と思われる音)はまるでわたしに纏わりつくかのように旋回しているようだった。軍所属の偵察ドローンな何かか?
そう結論を出して上に視線を向けた。やはり、プロペラが4つついた大型のドローンてまあった。
それは、やはりわたしに狙いをつけているようだった。
偵察ドローンならまだいい━━。もしそれが自爆型ドローンで、この命を狙っているのだとしたらそれは大事だ。こうしてのんびり歩いているのは馬鹿の所業だ。
本を抱えて脇目も振らず路地に走り込み、物陰へ身を隠した。息を殺して見上げると、ドローンは旋回を止め、ゆっくりと降下してくる。決死の覚悟で「小説の単行本」を鈍器のように構えた。
しかし、ドローンから響いたのは威嚇音ではなく、電子音混じりの爽やかな声だった。
「お客様!先ほど書店で『ポイントカードをお持ちですか』の問いを無視されたため、追跡配信機能にて限定ポイントを付与しに参りました!」
命の危機ではなく、あまりに過剰な店舗サービスだった。
【了】
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「紙の本が高級品になった未来でも、ポイントカードの追跡だけは全力で追ってくる」という、ちょっとおかしな近未来の日常を描いてみました。
命がけの攻防(?)の末にポイントを押し付けられた彼の災難と、健気すぎる店舗AIの攻防を楽しんでいただけていれば幸いです




