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夢魔-The Nightmare-・前編

『我が名は加山!!これより、加山裁判を開始する!!』


古びた音質の悪いスピーカーから流れだす、その絶叫にも似た中年男性の声で、俺は目を醒ました。

ズキズキとする頭痛を堪えながら辺りを見回すと、あたりは一面、真っ白い壁に囲まれた殺風景な部屋。

ドアも、窓もない。


いったい、ここはどこなんだ?

この場所にも先ほどの中年男性の声にも、全く身に覚えがない。

俺は痛む頭で先ほどまでの自分の行動をなんとか思い出す。

家にいて、酒を飲んでいて…。

明日も仕事だからもう寝ないとな、と眠りについたはずだが…。


そこまで考えて、ふとなにか違和感…妙な肌寒さを覚え視線を下に移す。

俺は服を着ていない。

素っ裸…しかもパイプ椅子に縛り付けられ、後ろ手で手錠のようなものをされている。

助けを求め声を出そうとしたが、猿ぐつわをかまされているようで、うまく声が出せない。

周囲には自分と同じような状況で拘束された人物が、老若男女、年齢の区別なく6、7人いるようだ。

みな、必死に拘束を外そうとしている。

俺も同じように暴れてみたが、強固でとても外せそうにない。


いったい誰が、どうやってこんなことを?

…そして、何をしようとしているんだ?

そう考えた時だった。


『まずは右端のジジイ!貴様の罪を読み上げる!!』

部屋の上に設置されたスピーカーが、ノイズ混じりにそう発声する。

先ほど『加山』と名乗った男の声だ。

拘束された皆が、一斉に右端を見る。

右端で拘束された中年―おそらく彼が加山の言う右端のジジイなのだろう―は、緊張して何かを喚いている。

もっとも、彼も猿ぐつわをかまされているようで、なんと喋っているかはわからないのだが…。

それも構わず、スピーカーの向こうの『加山』は、また怒鳴るような大音量で叫ぶ。


『貴様は、会社の飲み会で部下が頼んだ酢ダコを一人で喰ったな!

よって、茹でダコの刑に処す!』


…何を言っているんだ。何かの冗談なのか。

きっと、全員がそう思ったに違いない。


しかし直後、床が自動的に開き、煮湯がなみなみと注がれた巨大な釜が上がってきたとき…。

全員が瞬時にその後の惨劇を理解し、自由にならない口で恐怖の叫び声をあげた。

そして、白装束に身を包んだ男達がどこからともなく数人すうにん現れ、右端の中年の椅子を持ち上げる。

その白装束の背中には、筆書きで大きく『夢魔むま』と書かれていた。


自由にならない体で、必死で暴れる中年。

そこに加山がスピーカーを通じて、会場全体に呼びかけてきた。


『しかし、ただ刑を科すだけでは裁判とは言わん!

 よって、一度だけ貴様に生き延びるチャンスを与える!』


その言葉とともに、夢魔の一人が中年の猿ぐつわを外す。

おそらくは、なにかを喋ることで解放を認めるということなのだろうか…。

その場に捕らわれた全員が息を呑んで、スピーカーからの次の言葉を待つ。


が…。


『右端のジジイ!貴様に問う!!

 なぜ部下が頼んだ酢ダコを一人で喰った!?

 答えろ!その理由次第で貴様の命が決まる!!

 さあ、答えろ!!』


その問いに、中年の顔が絶望に染まった。

…当然だ。

そんなことにたいそうな理由などあるものか。


中年は腹が減っていたからとか、酢ダコが好きだったからなどと震えながら言うが…。

加山はスピーカーを通して笑いながら言った。


『論外!茹でダコの刑に処せ!!』


その言葉と同時に、白装束の夢魔たちは中年の椅子を大釜に向けて運び出した。

中年は叫び声を上げながら必死に抵抗するが…。

夢魔たちはまったく意に介さず、中年を椅子ごと釜の中に放り投げた。


中年を飲み込んだ大釜は、しばし激しく水面を揺らしたが…。

少ししてグツグツと煮えたぎる湯の音を残すだけとなった。


[夢魔-The Nightmare-/BUCK-TICK]

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