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幼馴染の聖女が王都へ行ってしまったので、最弱スキルの俺は絶対に迎えに行くと誓った。──そして俺は世界最強の拳を手に入れる  作者: 海鳴雫


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第181話 本命

王都の夜は、静かすぎた。


風の音すら、どこか遠い。

巡回する騎士団の足音だけが、規則正しく石畳を叩いている。


「……今夜は、落ち着いてるな」


誰かがそう呟いた。


影の発生報告はない。

悲鳴もない。


張り詰めてはいるが、

どこかに「このまま朝を迎えられるかもしれない」という期待が混じっていた。


その時だった。


王都郊外の監視塔で、観測装置が甲高い音を立てた。


「反応あり!」


「数値が……おかしい!」


騎士が叫ぶ。


計測盤に表示された数値は、これまで見たことのない領域を示していた。


影の反応ではない。

別物だ。


報告は、即座にギルド本部へ送られる。


ギルド本部。


代表は、紙を受け取った瞬間、眉をひそめた。


「……これは」


言葉が、続かない。


数値だけで分かる。


影ではない。


“本命”だ。


王都郊外。


空間が、歪んだ。


音もなく、だが確かに、空が裂ける。


黒い裂け目の向こうから、巨大な“何か”が落下した。


次の瞬間。


轟音。


地面が陥没し、土砂が舞い上がる。


衝撃波が走り、近くの建物の壁が砕け散った。


煙の中から現れたのは、黒い肉塊。


無数の管のようなものが脈打ち、表面を覆っている。


闇核変異体・第二号。


その存在だけで、周囲の空気が重くなる。


「迎撃準備!」


騎士団が陣形を組む。


上位冒険者も合流し、魔法と矢が一斉に放たれる。


炎が上がる。

雷が落ちる。


だが、肉塊は崩れない。


表面が抉れても、すぐに再生する。


「効いてない……!」


変異体が、腕のような部位を振り上げる。


一振り。


騎士が、まとめて吹き飛ばされた。


壁に叩きつけられ、動かない。


足止めすら、できない。


誰もが悟る。


――勝てない。


ギルド本部。


次々と入る報告。


「騎士団、押されています!」


「上位冒険者も負傷!」


代表は、歯を食いしばる。


(……影の延長じゃない)


(完全に、別格だ)


頭の中に、ユウの顔が浮かぶ。


出さなければ、持たない。


だが――


代表は、まだ口にしない。


命令しない。


それが、ギルドの矜持だった。


治療所。


ユウは、ベッドの上で身を起こした。


胸の奥が、熱い。


光核が、激しく脈打っている。


影の時とは、違う。


もっと重い。

もっと強い。


理由は分からない。


だが、はっきりと理解できた。


「……来た」


呟きが、喉から漏れる。


これは、影じゃない。


これは――


「俺を、殺しに来てる」


王都の空が、不気味な赤に染まる。


市民は、まだ正体を知らない。


それでも、分かる。


今までとは、違う。


何かが、決定的に違う。


闇の深層。


ラグナは、短く告げた。


「第二号、起動」


影の主は、何も言わない。


すでに、それは駒でしかなかった。


前線で、また一人、騎士が吹き飛ばされる。


ギルド本部で、代表が拳を握りしめる。


治療所で、ユウがベッドから足を下ろす。


三つの視点が、同時に交錯する。


本命は、現れた。

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