聞き込み
電車に揺られながら多摩センターへ向かっていると、ポケットのスマホが震える。
画面を見ると、和政からの LIME だ。
和政『達也くん、ごめん。獄門について詳しい人の情報をゲットしたんだけど、その人、聖蹟桜ヶ丘駅の近くにいるみたいなんだ。だから聖蹟桜ヶ丘で待ち合わせに変更してもいい?』
達也『わかった。じゃあ到着10分くらい遅れるかも。』
和政『了解!(スタンプ)』
「あ、達也くん、こっち!」
改札を抜けると、和政が大きく手を振っているのが見えた。
「おう!」
駆け寄ると、和政は開口一番こう切り出した。
「獄門について詳しい人が、多摩川の河川敷の近くに住んでるって情報があったから、そこに行ってみよう!」
「ああ……。てか“住んでる”って、ホームレスってこと?」
「多分ね。」
「なるほど。」
まあ今は唯一の手掛かりだ。
探して話を聞く以外にない。
「大体いる場所に目星はついてるんだ。」
そうして、俺たちは河川敷へ向かった。
昼下がりの太陽は柔らかいが、河川敷の空気はどこか湿って重い。
ホームレスたちがブルーシートや段ボールでそれぞれの“家”をつくり、小さな集落のようになっている。
歩くほどに、自分の場違いさが肌に刺さる。
それでも、俺たちは一人一人声をかけて回った。
「このあたりで、“獄門”という言葉について詳しいホームレスの方がいるって聞いたんですけど……どなたか知りませんか?」
最初は怪訝な目で見られたり、黙って首を振られたり、煙たそうに手を払われたり。
けれど、根気よく聞き込みを続けていると――
45歳くらいの、日焼けした顔をした男性が、ふと何かを思い出したように顔を上げた。




