83/116
向かいの男
喉の奥が、焼け付くように熱い。
息を吸うことすら、うまくできない。
俺は視線を逸らすようにして、
父と向かい合う、もう一人の影へと目を向けた。
少し小太りだが、背は高い。
ざっと見ても、百八十五センチほどはあるだろう。
がっしりとした体格で、立っているだけで圧がある。
その男を見た瞬間――
背後から、信じられないほど震えた声が上がった。
「……お、お父……さん……?」
空気が、凍りつく。
「「「……え?」」」
全員の視線が、一斉に郁美へと集まった。
「お父さんって……」
俺は思わず、声を絞り出す。
「……郁美の……?」
郁美は、唇を小さく震わせながら、
丘の上の男から目を離せずに、かすかに頷いた。
「……うん……」
俺の父だけじゃない。
郁美の父親まで、ここにいる――?
偶然なんて言葉で片づけられるはずがなかった。
「で、でも、お父さんって言っても、
実の父じゃなくて……
マ、ママの再婚相手……なんだ」
「おーう!郁美?
なーんでお前、こんなところにいるんだー?」
その男は、舌に絡みつくような、妙にねっとりとした喋り方をしていた。
語尾が伸び、声の抑揚がどこかずれている。




