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フラッシュ暗算③
「な、なるほど……でも、それだとこのゲームのシステム、ガバガバすぎないか?」
「うん……」
和政が一瞬、モニターに目を向けた。
「あ――」
その声と同時に、画面が再び光を放つ。
「もう……次が始まる」
空気が、再び張り詰めた。
『3、2、1』
『48,372
61,945
27,806
93,154
56,218
74,609
35,481
82,736
19,864
68,597』
再び、郁美が迷いなく口を動かし、器用に数字を書き連ねていく。
その必死さに胸を締めつけられながら、俺は今度こそ文から目を離さなかった。
――本当だ。
文は、ときおり不自然にホワイトボードを傾け、ほんの一瞬だけ顔を上げる。
その視線の先が、どこを向いているのかは明らかだった。
「おい! 卑怯だぞ!」
思わず声を荒げる。
「お前、カンニングしてるだろ!」
文はピタリと手を止め、ゆっくりこちらを振り向いた。
その目には、わざとらしいほどの無垢さが浮かんでいる。
「は? 何それ。言いがかりはやめてくれない?」
そう吐き捨てると、何事もなかったかのように郁美のボードへ視線を戻し、ペンを走らせ始めた。
しかも――今度は、さっきよりも露骨にだ。




