フラッシュ暗算②
郁美のホワイトボードには、遠目に見てもはっきりと
『450615』
と記されている。
それも、口で書いたとは思えないほど、丁寧で迷いのない数字だった。
――まさか。
嫌な予感に背中が冷え、俺は反射的に文の方を見る。
すると、そこには同じ数字。
文のホワイトボードにも、寸分違わず『450615』が書かれていた。
どういうことだ。
文は……本当にフラッシュ暗算ができるのか?
「だから言ったでしょ?」
文は勝ち誇ったように口角を吊り上げ、郁美を見下ろす。
「あんたに出来て、私に出来ないわけないじゃん」
その言葉に胸の奥がざわつく。
やっぱり、さっきの余裕もブラフじゃなかったのか……?
その時だった。
和政が、ぐっと俺の腕を掴み、低い声で囁く。
「違うよ、達也くん」
「……え?」
「多分だけど、文はフラッシュ暗算なんてしてない」
俺は思わず和政を見る。
「どういうことだ…?」
「多分……カンニングしてる」
「そんなの……アリなのか?」
「さっき解答を書いてる時、ずっと文を見てたんだけど」
和政は視線を逸らさず、冷静に続ける。
「文のホワイトボードの角度と、顔の向き。その直線上に、郁美ちゃんのボードがあったんだ」
「……」
「それに、筆が何度か不自然に止まってた。フラッシュ暗算が本当に出来る人なら、あんな止まり方はしないはずだよ」




