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フラッシュ暗算①
「あっ……」
郁美が思わず声を漏らす。
腕を動かそうとして、思い出す。
自分には、もう両腕がないということを。
当然ホワイトボードとペンは、抵抗する術もなく、
カラン、と乾いた音を立てて床に転がった。
そんな状況でも、バトルは淡々と進んでいくようで、
『――はじめ』
モニターにタイマーが表示される。
『3、2、1』
「郁美、始まる!」
『47,382
28,619
63,745
19,864
58,291
36,407
71,568
24,739
84,932
15,068』
数秒間で数字が羅列されていく。
こんなの、筆算でやっても間違える可能性がある。
しかし、郁美は迷いなく、ペンを口に咥えて数字をホワイトボードに書き始めた。
必死に、何度も口を動かしながら、どうにか最後の数字を書き終えた――その瞬間だった。
目の前に浮かぶモニターが、静かに明滅する。
無機質な文字が表示された。
『解答』
『450,615』
『引き分け』
「……え?」
思わず、声が漏れた。




