不安
俺はソファーに腰を落ち着けると、和政にLINEを送った。
『父さんと母さん、まだ帰ってきてないんだけど……大丈夫かな?』
送ってからわずか1〜2分で返信が届く。
『やっぱり。獄門に詳しい人で心当たりがあるんだ。明日、多摩センターの改札前で会えない?』
幸い、明日は日曜。学校も水泳もない。
『じゃあ明日の10時に多摩センターの改札前で!』
『了解!』
やりとりを終え、俺はスマホをソファーに放り出して横になった。
不安は山ほどあるのに、学校と部活の疲れが勝って、すぐに眠気が襲ってくる。
いつもなら、リビングで寝ていたら「風邪引くよ」と親が起こしてくれるのに――今日は、その声もない。
…
スマホを見ると、6:32。
外ではちょうど朝日が昇り、静まり返ったリビングに柔らかな光が差し込んでいた。
「う〜、さぶっ。」
近くにあった毛布を掴んで体に巻きつける。
結局、昨晩のうちに両親が帰ってくることはなかった。
胸の奥に残っていた小さな期待は、あっさり現実に砕かれた。
グ〜。
こんな状況でも腹は減るんだな、と自分に苦笑する。
そういえば晩飯も食べてなかった。
とりあえず空腹を抑えようと冷蔵庫を開ける。
卵とパンとチーズがあったので、卵かけご飯とピザトーストを適当に作ってかき込んだ。
仕上げに牛乳を飲んで、ようやく一息つく。
「……いや〜、マジでどうしよ。」
気づけば心の声が、そのまま独り言になって漏れていた。




