文(ふみ)の叫び①
俺たちが
見えない壁に悪戦苦闘していると、
郁美と向かい合っていた女が、
唐突に声を張り上げた。
「はははははは!
あんたはここでくたばるのよ!」
「文ちゃん……
なんで?」
「はあ?
なんで?
そんなの、分かってるでしょ」
女――文ちゃんは、
歪んだ笑みを浮かべたまま
一歩踏み出す。
「この裏切り者が」
郁美は言葉を失い、
ただ困惑したように
その場に立ち尽くす。
「中学の頃はさぁ、
『文ちゃん文ちゃん』って、
私の後ろを尻尾振って
ついてきてたくせに……」
「それが何?
高校が別になってから、
返信も遅いし、
返ってきても
『そうだね』とか
『いいね』とかばっかり……」
「挙句の果てに最近は
ほとんどスタンプだけ……」
「もう私のこと、
いらなくなったってことだよね?」
文ちゃんの声は
次第に荒くなり、
吐き捨てるようになる。
「そのくせ今度はさぁ、
“桜”だっけ?」
「なにあの女。
いかにもって感じの
カースト上位美人……」
「新しい飼い主見つけたら、
そっちに尻尾振って、
私は用済み?」
「……いい身分よねぇ」
「ほんと、
裏切りアバズレ女は……」
「ち、違……
ご、ごめんなさい……」
「ごめん?」
文ちゃんは
鼻で笑った。
「もう遅いんだよ。
全部」
彼女は、
郁美へと
指を突きつける。




