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見えない壁
「郁美……!
郁美、どこ!?」
桜の声が、
虚ろな空間に響く。
「郁美ちゃーん」
俺も息を切らしながら、
名前を呼び続けた。
すると、
視界の端に動く影。
目を凝らすと、
少し先――
門からそう離れていない場所に、
二つの人影らしきものが
立っているのが見えた。
「あれ……?」
「郁美!?」
桜が声を張り上げると、
そのうちの一つが、
ゆっくりと――
こちらを振り向くような仕草を見せた。
「桜ちゃん!?」
その声に、
前方の人影が
はっきりと反応した。
郁美が、
びくりと肩を震わせ、
こちらを振り向く。
「……っ!」
目が合った。
「郁美!
無事か!?」
叫びながら
駆け寄ろうとした、
その瞬間――
「っ……!?」
見えない何かに、
身体が阻まれた。
まるで空気が
急に硬質な壁へと
変わったみたいに、
踏み出した足が、
それ以上前に進まない。
「なんだ……
これ……」
手を伸ばす。
指先が、
透明な膜に
触れたような感触を
返してきた。
「くそ……
近づけない!」
何度か
押してみても、
そこから先へは
一歩も進めない。




