再び獄門へ
五十メートルほど
全力で走っただけなのに、
周囲の景色が一気に塗り替わっていく。
息が上がるより早く、
世界の方が変わってしまうような感覚だった。
さっきまで確かに
アスファルトだった道は、
いつの間にか
土と砂利がむき出しの
凸凹道に変わっていた。
街灯の光も消え、
木々が道を覆うように
せり出してくる。
走っているはずの
俺たちの方が、
逆にどこかへ
“滑り落ちている”
みたいだった。
それでも俺たちは、
必死に郁美の背中を
追い続ける。
その背中だけが、
異様な速度で
前へ、前へと
引き伸ばされていく。
「達也くん! あれ!」
和政の声が裏返る。
指差す先を見た瞬間、
胃の奥がひやりと沈んだ。
――あぁ……。
見慣れたはずのないのに、
もう嫌というほど
記憶に刻まれてしまった
黒い門。
この世のものではない
“境界”が、
森の奥に
口を開けていた。
――獄門だ。
郁美は迷う素振りもなく、
そのまま真っ直ぐに
門へ向かっていく。
走っているというより、
吸い込まれている
ようだった。
そして次の瞬間、
影の中へ
すっと溶けるように――
獄門の内側へ、
消えていった。




