ぬくもり
「……お、お水、どうぞ」
「ありがとう」
受け取って一気に流し込み、
ようやく喉の違和感が落ち着いた。
「……でも、味はちゃんと美味しかった」
「ほとんど味わってなかった気がするけど?
……まあ、よかったわ」
ふと、部屋を見回す。
「なんか……
家がこんなに賑やかなの、
久しぶりな気がする」
その言葉に、
空気が少しだけ沈んだ。
「……お父さんとお母さん、心配ね」
桜が声を落とす。
「もう三日、帰ってきてないんでしょう?」
「……まあな」
短く答えると、
桜は一瞬考えるように視線を伏せ、
それからこちらを見る。
「警察には……言わないの?」
「それも考えてはいる。
でも、どこまで話せばいいのか分からなくてさ……」
「このまま放っておけないのは分かってるから、
今週末には行くつもりだよ」
一度言葉を切り、
少し視線を伏せる。
「ただ、今は――
郁美ちゃんを通じて、
もう一度獄門に行けるかもしれない」
「もしそうなれば、
その中で両親を見つけられる可能性があるから」
(守るとか言って、
本当は俺の両親を見つけるために
桜たちを利用してるだけなんだよな)
俺は、
桜たちを見ることができなくなっていた。
ここのところの心労に加え、
こんなふうに親切に料理まで作ってくれている
二人を利用している自分が、
ひどく情けなく感じた。
「やっべぇ……」
気取られないように
立ち上がろうとした、
その瞬間だった。
華奢な腕がすっと伸びてきて、
ためらいがちに――
それでもごく自然に、
俺の頭を抱き寄せた。
胸元に触れた温もりが、
じんわりと、
落ち着くように広がっていく。




