和政の話
そこまで一気に話し終えると、和政は区切りをつけるように、ゆっくりとミルクティーを口へ運んだ。
「……ホラー映画?
いや、受け入れられない。頭が追いつかない。
さっきの体験が現実だった以上、和政の話が嘘とも思えないのが余計に……」
俺はこめかみを押さえ、深いため息をつく。
「まあ、そうだよね。
僕だって、ついさっきまで小6のときの出来事なんて“悪い夢”だと思い込んでた。
でも……違った。」
和政は、先ほど見た光景を反芻するかのように瞳を大きく見開いた。
「で、その優磨ってやつ……結局どうなったんだ?」
俺は深呼吸をひとつ置き、和政の問いに答えた。
「ぼ、僕も、実は詳しくはわからないんだ。
獄門に入ったあとで優磨とはぐれちゃって……
とにかく一人で、遠くに見えた“光のある丘”を目指して歩いたんだ。
そして気づいたら、多摩センターの駅ビルの下――
さっき僕らがいた場所に、いきなり出てきたの。
で、目の前に八十歳くらいのおじいさんが立ってて、
僕を見た瞬間、ギョッと目をむいてね。
そのまま『獄門から災いがやってきた!』って叫びながら走って逃げちゃった。
僕はもう訳がわからなくて……
でも、とりあえず家に帰らなきゃと思って、その日はそのまま帰ったんだ。」
語り終えると、和政は神妙な表情で再びミルクティーを口に運んだ。
「それでこの話には、まだ続きがあって……」
言いかけた時、カフェの店員がそっと近づいてきた。
「お客様、当店はまもなく閉店のお時間となります。
お帰りのご準備をお願いします。」
気づけば、時計の針はすでに22:00を指そうとしていた。




