噂話
「おっす、達也……ん?
怪我してんのか?」
関谷は、
俺の包帯が巻かれた左手を見るなり、
眉をひょいと跳ね上げた。
「封印されし左手の暴走を抑えるためのアレか?
あー、齢十七にして、
ついに厨二病発症か……。
まあ安心しろ、
俺はまだ付き合えるぜ。
痛い友達がいてよかったな!」
朝からテンション高いな、と思いつつ、
俺もそのボケに乗っかる。
「あー……
あんま近づかない方がいいぜ。
俺のこの左手に宿る“氣”に当てられたら、
いくらお前でも、
ただじゃ済まないからな」
「あー……うん」
「おい!」
振っておいて、
スカしやがった。
俺が憤慨しているのも気に留めず、
関谷は、
何か思い出したように声を潜める。
「てかさ、
それより、達也。
お前……
あの高嶺の花の桜さんに、
何したんだ?」
「……は?」
思わず、
間の抜けた声が出た。
「朝から噂になってんぞ。
ストーカーしたとか、
騙そうとしたとか、
パンツ一丁で襲いかかったとか」
「はぁ!?」
豆鉄砲を食らったみたいに、
頭が一瞬、真っ白になる。
「そんなことするわけないだろ?」
「いや〜、
俺は一応、
お前を信じてるけど、
周りは、
そうでもないみたいだぜ。
まあ、
前からちょっと怪しいとは思ってた部分は、
あったんだけどな。
お前、
桜さんと幼馴染だし。
なんか、
変な距離感だったからな〜。
まーでも、
俺は信じてるんだぜ。
これでも。
一応、
一応な。」
「なんで、
楽しそうなんだよ。
ったく。」
こいつは以前から、
トラブルの渦中にいる人間を、
間近で見て楽しむ悪癖があったが、
今、
その悪癖が最大限に発揮されている。




