帰宅
――ただ。
事件直後に他人を泊めることを、和政の親がどう思うか。
きっと心配の方が先に立って、
「今日はそれぞれ家に帰りなさい」と言うはずだ。
少し考えた末、俺は首を振った。
「……いや、今日は家に帰るよ」
「本当?
僕がごり押せば、多分親も許してくれると思うけど?」
「うーん……いや、大丈夫」
「今日は、自分の家に帰ることにするよ」
「……そっか」
和政はそれ以上何も言わず、小さく頷いた。
ちょうどそのタイミングで、
運転席から和政の親の声が飛んでくる。
「達也くんの家は、この辺りで合ってる?」
窓の外を見ると、
いつの間にか見慣れた街並みが流れていた。
「あ、そこのコンビニの前で大丈夫です」
「わざわざ、ありがとうございます」
「いいのよ」
「いつも和政と仲良くしてくれて、ありがとうね」
「いえ……こちらこそです」
軽く頭を下げ、俺は車を降りた。
ドアが閉まる直前、和政がこちらを見て言う。
「……また、連絡するね。」
「うん。頼む」
短くそう言い残して、
車は静かに走り去っていった。
俺は一人になった夜道で、
無意識に周囲を見回す。
物音、足音、気配――
すべてに神経を尖らせながら、
できるだけ人通りのある道を選び、
最短距離で家へと向かった。




