心配
やっっっべえええええ!!
俺、今……何してんだ!?
桜の柔らかい髪の感触が指先に残っていて、
頭の中が一気に真っ白になる。
懐かしい光景が勝手に脳裏に蘇った。
昔、今ほど気まずくなる前。
桜が転んで泣けば、俺はこうして頭をよしよし撫でて、
「ほら、泣くなよ」なんて言って――
桜も恥ずかしそうに笑いながら、
俺の袖をちょんって掴んでいた。
……でも、それはあくまで“昔の話”だ。
今の俺たちは、そんな距離感じゃない。
なのに俺は何してんだ!!
これ今やったら完全アウトだろ!?
テレビで見たぞ、こういうの普通にセクハラ案件って!!
心臓はバクバク鳴りっぱなし、
しかも俺の手はまだ桜の頭の上でフリーズしたまま。
終わった……
これこそ真の現行犯逮捕だ……
うわああああ!
そんな絶望が脳内を駆け巡った、その0.2秒後。
……あれ?
桜は全く嫌がっていない。
むしろ、ほんのり頬が赤く見える。
俺はドキドキを悟られないように、そっと手を離し、
慌てて話題を強制的に方向転換した。
「そ、そういえば……お友達は大丈夫か?」
桜はわずかに名残惜しそうにしながら、
郁美の方へ視線を向ける。
郁美は肩を縮こまらせ、
指先をいじりながらモジモジと答えた。
「……だ、だいじょうぶ……です……」
かすれた声は本当に小さくて、
怯えた子ウサギみたいに見えた。




