サイレン
遠くで、
ウーウーウー……。
サイレンの音が夜風を震わせた。
「……チッ。さっきの、マジだったのか。」
男は舌打ちし、地面を蹴って立ち上がる。
その動きは獣じみていて、次の瞬間には豹のような速さで河川敷を駆け上がり、
闇へ溶けるように姿を消した。
残された俺たちは、しばらく呆然と立ち尽くしていた。
足の震えは止まらず、心臓は内側から胸を破ろうと暴れている。
――助かった、のか?
実感の追いつかない安堵と、遅れて押し寄せる恐怖が胸の奥でぶつかり合う。
それでも俺は歯を食いしばり、無理やり体を動かした。
郁美のシャツは大きくはだけ、肩が露わになっている。
地面に落ちていた自分のジャケットを拾い上げ、震える指で桜へ差し出した。
「……これ。友達の、隠してやって。」
パンツ一丁で言っても説得力はゼロだが、桜は黙って頷き、
そっと郁美の肩にジャケットをかけてやった。
その瞬間、張りつめていた糸がぷつりと切れたように、郁美が泣き崩れる。
つられて桜も涙をこぼした。
「うぅ〜、こわがっだぁ〜〜……!」
二人は震える手で互いにしがみつき、肩を寄せて泣いている。
俺はまだ緊張の抜けない頭で、さっきの光景を何度も反芻していた。
しかしサイレンの音が近くなり、警察がこちらに駆け足で寄ってくる頃には、
幾分か冷静さを取り戻した。
この状況を警察にどう説明するかを、瞬時に頭の中で整理していく。
残された車、パンツ一丁の男二人、服のはだけた女子高生が泣いている……
あれやばくね?
どう見ても犯罪者は俺たちだ。
とりあえず服を着ないと、とズボンに手をかけたところで――




