ゆいこのトライアングルレッスンB 〜Make a Wish〜
「♪ハッピバースデートゥーユー」
電気を落とした薄暗い部屋の中、たくみが歌いながらケーキを運んでくる
「ハッピバースデーディアゆいこ〜
ハッピバースデートゥユー♪」
ケーキのロウソクの灯火にちょっと照れた笑顔のゆいこが浮かび上がる
「あ、ありがとう...」
「ゆいこ、おめでとう。make a wish」
オレの言葉にゆいこが首を傾げた
「え?ひろし?なんて?」
「海外では誕生日ケーキのロウソクを吹き消す時に願い事をするっていうだろ?起源はギリシア神話らしいんだけど...」
「あー、ひろし、うんちくはいいから!ロウソク溶ける!ゆいこ、ほら、吹き消して!」
「....せわしないやつだな、お前は、相変わらず...」
「あぁ?お前こそめんどくさい!」
言い合いを始めるオレとたくみをよそに、ゆいこはロウソクの炎をじっと見つめ、そっと瞳を閉じる
そして一瞬切なそうな表情を見せると、ふっ...とロウソクを吹き消した
「...ゆいこ?」
真っ暗になった部屋の中で無言のままのゆいこが気になり声をかけると、小さなゆいこの手がオレの手をきゅっと握った
「ひろし....たくみ....ありがとう...これからもずっと....一緒にいてね....?」
暗闇の中なんだか泣いてでもいるようなか細い声に、おれはゆいこの顔を覗き込んだ
「...ゆいこ...?」
「ずっと....ずっと...このまま3人で一緒に誕生日のお祝いをし続けたいな....大人になっても...おばあちゃんになっても....ずっと3人で....」
オレの手を握るゆいこの手に力がこもる
反対の手をゆいこの頭にそっと乗せると、同じく手を伸ばすたくみの手と重なった
「....ゆいこ、おれもひろしもずっとここにいる」
「ゆいこが望む限りずっと。...約束する」
暗闇に慣れてきた目におれとたくみを見上げるゆいこの顔が映る
その大きな瞳に涙を浮かべたゆいこがにっこりと微笑んだ
『....ゆいこ、誕生日おめでとう...』
ちゅっ
愛おしい想いを込めて....
おれはゆいこの手にそっとキスを落とした