表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/36

醤油、マヨネーズ、ソース、塩、麺つゆもどき、各種油、味噌、みりんに料理酒、材料呼んだ後、錬金で近い味のものが作れた。

そう、全部錬金術である。

醤油もソースも味噌もみりんも麺つゆも今の時点では自力では作れない。

でも必要だし。砂糖やお酢等は以前呼び出したことがあったので、問題なく揃う。


日本ではアラサーでそれなりに料理もしてきた。だんだん揚げ物で胸やけしたり、ダイエットで甘味を減らしつつあったけど、こっちの世界は8歳。育ち盛り!何食べてもいい。こっちに来てから半年ぐらいは、読書とマジックバックやポーション作りで変なテンションで食事は呼び寄せばっかりだったけど、さぁ理想の食生活頑張ってみようか。


「出でよ、フライパン、お鍋、まな板、包丁、おたま、フライ返し、菜箸、キッチンバサミ各1個」

そのものずばりじゃないものもあったけど、使い慣れたキッチングッズはかなり正確に想像できたので、寄せたものが出てきた。これぐらいの誤差なら使える。


ただ、少し面倒になってきた、外に出て買い物した方が早くない?って自分につっこむ。でも、こっちに来てから一度も外に出たことがないから、どんな恰好で外に出ていいのかさえわからないんよね。

とりあえず、靴を作ろう。靴下もいるか。どんな服装がいいのか。そういえば、お金はこっちにあるっていっていたけど、どこにあるんだろう。あー直接買い物行く準備も面倒か。でも、いつか外には出ないとな。魔法で何でもできてしまう弊害だな。


一生家に閉じこもっているわけにもいかないので、靴は作った。

魔法で呼んでみたが、いまいちだったので、靴は作ったことがなかったけど、材料と錬金術でなんとか行けた。なんでもありだなぁ。錬金術。


靴下も錬金術だ。その代わりシンプル。靴下にはそう思い入れがないからかもしれない。

お金は、なんと自分の部屋の木のボックスの中にあった。

そんなに自分の部屋を隅から隅まで見ていなかった。鍵がかかっているボックスがあるなと鍵かかっているなら後回しでいいかって思って放置していたけど、お金どこかにないかなって探すことになったら、机の引き出しに鍵がはいっていて、それがどんぴしゃだった。

お金の価値はわからない。1枚2枚見てみたら単位リルと読める。金貨も山ほど入っている。日本の残高と同じだけ入っているらしいから三千万ちょっとっていうとこだよね。

でも、この世界で三千万で何ができるのかわからない。このまま置いておくのは不安になったので、自分の収納魔法にしまっておくことにした。ちょっと安心。


収納魔法やマジックバックがどのぐらい珍しいかわからないので、買い物に行くならと、布でポーチを作った。これは可愛いのが欲しくて頑張ってみた。慎重派のびびりなんで、これはマジックバックにはしなかった。最初からやらかしてはいけない、いけない。でも、ファスナーは作ってしまった。これぐらいは許してもらおう。


そうこうしているうちに、さぁ料理しようと思ってから2か月は経ってしまった。少し涼しく?寒くなってきた。これが俗に言うスローライフか・・・。まぁ時間はあるからいいんだけどね。


どんな服を着て外に出ようかと少し玄関から顔を出してみる。結構前庭広い?門まで少し歩かないといけないみたいだ。顔が少し寒い。半袖のワンピースは無理そうだね。あ、門の向こうを誰か歩いている。同じぐらいの年だろうか。黒いワンピースに白いエプロンかな?本物のメイドさんか。どんな服を着ているのか詳細が知りたい。


『遠見魔法取得』

思ったより、よれよれな感じ?ぺらぺら?寒くないの?髪もばさばさで、あ。こけた?倒れた?起き上がらない?えー。


『転移魔法取得』

倒れた女の子のそばに転移できた。

女の子に近寄ると、ガリガリでぼろぼろで黒いワンピースに白いエプロンも少し薄汚れている。女の子は意識がないみたいだ。ほっておくと危険そうなので、抱き上げて転移。

8歳のわたしが抱き上げられるぐらいに軽い。

貧民街の子ではなさそうなのに、何故。この子の辛そうな顔を見ていると胸が苦しくなる。

わたしの隣の部屋に寝かせて、意識ないまま少しずつ初級ポーションを飲んでもらう。緊急時だからごめん。鑑定。

・・・・・・・

エリン・マグヌス

10歳


HP3

MP120


生活魔法

水魔法


現在虐待され中

切り傷、打撲多数、貧血、栄養失調、あと少しで餓死

・・・・・・・・

えーー。男爵家の長女、HPが残り3しかない。

こんなにぼろぼろで?虐待され中って、ああ、あれか、お母様が亡くなって、すぐに後妻が異母妹と家にきて、何もかも乗っ取られ中っていうお約束のやつか。


かつてアラサーのおばちゃんとしては助けないと。

『回復魔法取得』

初級ポーションで最低限は治療できたかもしれないけど、古傷も多いみたいだ。

こんな小さな可愛い子になんでこんな酷いことができるんだろう。

彼女の体を光が包み、怪我や打撲等の痛みが出るところはすべて治療できた。

でも栄養失調までは無理だ。


自分の子を痛めつける人は信じられない。この世界ではこれが普通なのか。確かに日本でも虐待はあった。でも、それはどこか遠くの話だと思っていた。

間近で見ると衝撃が凄い。


何か消化に良いものを呼び出そう。

体に良さそうなものを片っ端から呼び出し、収納魔法の中に収納していく。彼女の目が覚めるまで、様子をみてみよう。


彼女が寝ているベッドの隣で本を読んでいると、がさごさと起きる気配がした。

「あ、あ、ここは?はっ、申し訳ございません!!」

彼女が寝起きに回りをきょろきょろした後に、真っ青になって叫ぶ。

「大丈夫?お腹空いているでしょ。とりあえずこれ食べてみて。」

収納魔法から、卵粥のようなものをお盆に乗せて出してみる。ひそかに栄養剤も入れてある。

私を見て、周りをみて固まってしまった彼女に、

「はい。とりあえず食べてみて。」

強めに言うと言葉の勢いに負けたのか素直に食べだしてくれた。良かった。

餓死寸前ってほんとどんだけ、虐げられてきたんだろう。

もう1回、回復魔法いっとくか。エクストラポーションでも作ろうか。エリクサーがいいだろうか。「ポーション作り上級」の本を探してみよう。

食べ終わった彼女は何がなんだかわからないっていう顔をしている。確かにわたしも何がなんだかわからないけど、この小さな女の子を助けたい気持ちが強い。

「ねぇ。家に帰りたい?」

「あ、は、はい。帰らないと怒られますから。」

「怒られるのに、帰りたいの?」

「え、でも、他に帰るところはないです。」

「帰らなくても大丈夫だったら、どう、それでも帰りたい?」

「・・・・帰らなくても、だ。大丈夫なことってあるんですか?」

「うん、うちの子にならない?」

「で、でもお父様やお義母様がお許し下さらないと思います。」

「お父様とお義母様やらからお許しがあったらどうする?」

「・・・お母様の形見の絵があるから、帰らないと。」

「その絵も、持ってきてあげるっていえば、どうしたい?」

「お母様の絵があれば、もう、か、帰りたくないです。あそこにはわたしの居場所はないのです。」

「貴族のご令嬢であることをやめても構わない?」

「貴族ですか?わたしはもう今は貴族の令嬢らしい暮らしはしていないのでご令嬢じゃないと思います。」

「うん、良し。うちの子になりなさい。お名前は?」

「エリン・マグヌスでございます。」

「わかった。エリン、わたしはマヤ。今日から一緒に暮らそう。エリンのお父様のことは任せておいて。」

「あの、マヤ様。本当にここにいてもいいんですか?わたし家に帰らなくてもいいんですか?」

エリンの目に涙が浮かんでいる。苦しかったし辛かったんだろうな。

「様はいらないよ。マヤでいい。大丈夫ちゃんとどうにかするから。エリンはもう少し寝た方がいいよ。」


わたしの言葉を信じたのか、少しお腹に温かい食べ物が入ったせいなのか、エリンは素直に寝たようだ。

体はぼろぼろだったのを回復魔法で治したけど、精神もぼろぼろだから深く眠ってくれるといいな。

こんな素直な良い子を餓死させようとしたなんて。

報いは受けてもらいたい。


とりあえず、材料を呼び寄せ、錬金術でエリンにそっくりの人形を作る。それにさっき寝ていたエリンを浄化したついでに着替えさて脱がせた服を人形に着せる。見た目はそっくり切ったら赤い血も出る。

ただし息もしていないし。心臓も動いていない。この偽エリンもどきをさっき、転移した場所に置いてくる。結構寒い。

こんな寒い中、あんなぺらぺらのワンピース一枚でよく外に出したな。偽エリンもどきには、ちゃんとエリンから鑑定した情報を鑑定した人が見れるようにもしといた。

冬用のマントを呼び出し、防寒をしたら、

『認識阻害魔法取得』

『飛行魔法取得』

『環境魔法取得』

外に出て認識阻害を自分に掛け、環境魔法で寒さからガードし、偽エリンもどきを置いた場所に転移する。道を歩いてきた女の人が倒れている偽エリンに気づいたようだ。

触って冷たくなっているのを気づき、ひぃって小さな声をあげて駆けて行った。

しばらくそのままでいると、衛兵らしき恰好の人が二人走ってきた。

偽エリンを触って、息がないのを確認した後、丁寧に抱き上げてくれた。このお兄さんいい人みたいだ。そのまま詰所のようなところへ行く。こっそり後ろをついていく。

『遠耳魔法取得』

『透視魔法取得』

「可哀そうに、こんなに幼いのに。がりがりだ。餓死だろうか。」

「さっき、鑑定のできるオラヴィに来てもらえるように声かけてきた。」

「お、オラヴィこっちだ。」

「うわ、何こんなに幼い子、どこかの侍女だよね。こんな待遇悪いところはどこだ。鑑定」

・・・・・・・

エリン・マグヌス

10歳

男爵家長女

HP0

MP0


生活魔法

水魔法


虐待されていた

切り傷、打撲多数、貧血、栄養失調、餓死

・・・・・・・

「この子、侍女じゃない。ご令嬢だ。マグヌス男爵家の長女で虐待されていたとまで出てきている。」

「え、ご令嬢?侍女服着ていて、こんなにがりがりなのに?」

「マグヌス男爵って娘一人と息子一人でご披露されていたよな。どちらも茶色の髪の色だったと思う。この子は汚れているけれど金髪だ。前妻が亡くなって後妻が入って、後継ぎが生まれたっていうことだったはずだが。この子が長女。戸籍をごまかしているのかもしれない。オルソン閣下に連絡を。」


あの優しいお兄さんは偽エリンに毛布を掛けてくれている。ちょっと申し訳ない。

割とすぐに閣下らしき人がきて、お兄さん三人で説明しているようだ。

「戸籍の改ざんは貴族としてはあってはならないことだ。宰相にお伝えしなければ。エリクソン至急お会いできるよう連絡を入れてくれ。」

「はっ。すぐさま行ってまいります。」

どっちについていこうか悩んだけど、話の展開からいけば閣下の傍にいる方が本筋だよね。

閣下は偽エリンの近くにたたずみ、不憫な・・と小さな声で呟いていた。

閣下の後ろについて、宰相のいる場所の近くまで行く。さすがに建物に入っていく勇気はなかったので、外で万が一も考えて飛行魔法で建物横の木の上に登り、遠耳魔法で中の様子を伺うことにした。閣下が宰相に説明をしていて、宰相も偽エリンの鑑定結果に驚きそして怒りを表している。

「明日、マグヌス男爵の家族を全員登城させろ。筆頭鑑定士も呼んでおくように。」


とりあえず、家に帰ろう。

何だろう、この世界にきて初めての外出がこんなことになるなんて。予想外。火事場の馬鹿力みたいなもので死にそうな女の子見て体が動いてしまったな。ちょっと疲れた。


家に帰って、目が覚めたエリンと夕食。エリンはまだ栄養剤入りの卵粥もどき、わたしは気分がなんだか落ち着かないので簡単に親子丼にしてみた。


エリンにエリンの家の場所を聞いてみると、なんとこの家の三軒隣だという。

わたしの家は裕福な商人の家の設定で、エリンの家は下級貴族のぎりぎり貴族という位置らしいので家も近かったらしい。

貴族街の端っこのエリンの家と限りなく貴族街に近い庶民街のうち、ぎりぎり境界線にどっちの家もあるという感じみたいだね。


エリンはまだまだ弱っていたのでもう一度回復魔法をかけて寝てもらった。明日は男爵が王宮に行く頃に、男爵邸に行こう。

王宮は魔法で認識阻害したぐらいで行けるところじゃないだろうし、下手にばれたら後が怖い。無理しない。結果は公示でもされるんじゃないだろうか。


次の日、エリンと朝ご飯を食べて、エリンは少し体がよくなったのか、寝てばっかりいることに落ち着かないみたいだ。もう少しおとなしく寝ていてもらった方が安心なんだけど。ほっとくと家中掃除しそうだ。


それじゃと、家の中を案内することにした。

エリンに工房を案内しようとして工房に入ったらびっくりしてた。

「マヤ、あれ、あれ、洗濯物どうして、あんなところにあるんですか?」

「え、干すところがないから、まぁとりあえず干しているんだけど。」

「洗濯物を干す?庶民はそんなことしておられるのですか?」

「え、お貴族様は干さないの?」

「うちでは、生活魔法の浄化で済ませるものは済ませて、それでも無理は大きなシーツとかは、生活魔法の洗浄で洗って、風魔法で乾かす感じでした。服を吊って自然と乾かすことはなかったです。」

「は、そうなんだ。魔法か、魔法。確かに家にも裏庭にも干すところ無いなって思っていたんだよね。」

「マヤは一人で暮らしだと聞きました、誰からも教わっていないのですか?」

「うんうん、この世界の常識ひとつもないのよ。」

「わたしはお母様が生きていた7歳まで貴族の淑女の教育を受けてきました。その後、お義母様に嫌われて、侍女扱いされて3年。下働きのいろいろを学びました。あの3年間何故わたしは生きているのかわからない時が多かったですが、こうしてマヤに拾われ、マヤに教えてあげられることが多くあるということ嬉しく思います。」

おお。エリンなんていい子なんだ。こんないい子をほんと、ここまで酷い扱いをするなんて。男爵は報いを受けた方がいいと思う。


エリンはわたしが幸せにしよう。

日本にいたころ、好きだった人がいたけど、出来た子が流れてしまったことがあった。

それが原因なのかもうわからないけど、彼とは別れてしまった。

あの子が生きていたら、エリンと同じぐらいの年だった。

死んだ子の年を数えっていうのを無意識でやってきた。お宮参り、七五三、幼稚園の制服、ランドセル。

あの子が生きていたら準備できたのになって心の中で後悔と喪失感を抱え生きてきた。

だからエリンを見つけた時、空虚なわたしの心を埋めてくれるものがまたひとつ見つかった気がした。

エリンはあの子じゃないっていうのは理性でわかっている。でも、捨てられるのであれば、もらってもいいよね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ