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後日王宮では
「へ、陛下、クリント商会の遺児から、また遺品の献上品がございました!」
「何を慌てておる。今度は何があった?」
「ははっ。今度は砂糖です。いくつかの大きく育った甜菜と種とその砂糖を使った菓子とそれらのレシピが届きました。レシピをみると、甜菜から砂糖が取れるとあります。」
「な、何、砂糖とは!!隣国よりいつも出し惜しみをされながら高値で買うしかなかった砂糖か!!」
「実物がありますので、甜菜から砂糖ができるのか、レシピどおり料理人に試させます。また種がありますので、これは王宮の実験農場で植えてみます。」
「料理人には出来るだけ早く試作するように指示してくれ。宰相、その砂糖を使った菓子とはどんなものだ。」
「これですが、くっきーというものらしいです。レシピを見ると小麦粉とバターと砂糖と卵で作れるそうです。1枚食べてみますか?鑑定士、念のため鑑定してくれ。」
「大丈夫です。小麦粉とバターと砂糖と卵で作った菓子と表示されております。」
「そうか、では。1枚。」
「あなた、わたくしにも1枚下さい。」
「おお、妃も一緒に食べるか。」
「ええ、お砂糖を使ったお菓子だなんて美味しいに決まっています。」
「宰相も一緒にどうだ。」
「いただきます、では。」
「うんまい。おおなんだこのさくさくでほろほろで口の中でとろけるものは。それでいて甘すぎずうまい。」
「ええ、とても美味しいです。これほどまでとは。ねえ。あなたは味見なのだから1枚でいいわよね。残りはわたくしがいただきますわ。」
「妃よ、何を言う。わしももう少し食べたい。」
「王妃様、レシピがありますから、砂糖さえできればまた作れますよ。」
「そうだったわ。砂糖をすぐにでも作らせなさい。」
「時間魔法があれば早く作ることが可能だそうです。」
「宰相、王宮魔術師の中に、時間魔法使えるやついたな。すぐさま調理室へ行かせろ。」
「ははー。」
宰相が魔術師や料理人や園丁にてきぱきと指示を出していく。
陛下と王妃はにこにこしながら献上品のクッキーを食べていく。これはこの国の一大産業になりそうだ。
魔物が多くて人と戦う暇がないため、隣国とも戦争はしていないが、今まで砂糖の輸入時には出し惜しみされてきたので、今回成功すれば溜飲がおろせるかもしれない。
「本当に甜菜から砂糖が取れ、栽培も可能となれば、クリント商会に何か褒賞を考えるか。」
「ええ、でも、後ろ盾がモーリ商会のみなので、あまりやりすぎると他の貴族がしゃしゃり出てくる可能性がありますわ。年齢的にまだ10歳と聞いていますから、15歳になるまで保留にしては如何でしょうか。」
「そうだな。成人と認められる年になるまでは保留にした方が良いかもしれぬな。」
「その代わり、お菓子のレシピを高く買い取りましょう。」
ということで、クッキーのレシピは商業組合に登録する前に王家に買い取られてしまった。
自分で食べる分は作っても良いらしい。
甜菜から砂糖も無事に作れたと聞いた。褒賞は15歳まで待ってもらえるのは良かった。
今、上位貴族に目をつけられたら、モーリ商会にも迷惑かけちゃうからね。でも、お金に困っていないし褒賞特に欲しくはないんだけど、時間はあるから、また考えよう。