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この家の裏庭はちょっと広い。
でも、庭師がいないので草ぼうぼうになっている。
幽霊屋敷と言われるだけのことはある。前庭はセバスとマーサが綺麗に整えてくれているけど、裏まで至っていない。
そこで
『土魔法取得』
『植物魔法取得』
『成長魔法取得』
土を耕し、畝をつくり、召喚魔法で甜菜の苗をたくさん呼び出し、エリンと一緒に植えていく。エリンは畑仕事ははじめてで、結構腰に来る作業も楽しがってくれていた。
植えたら魔法で水を撒き、植物魔法と成長魔法で良い加減に成長させる。葉っぱがもさもさしている。
この状態をモーリさんに見せよう。
偽造工作が終った次の日、モーリさんが家にやってきた。
「サーラから聞いたのですが、砂糖を使ったお菓子をつくっていらっしゃるとか。砂糖は庶民にはほぼ出回っていません。うちも納品されることがほとんどありません。一体どうやって砂糖を手に入れておられるのか、教えて下さい。」
子どもにも丁寧なモーリさんは信用しているけど、召喚魔法の話とか、すべて本当のことはまだ言い出せない。
「モーリさん、うちの裏庭にご案内します。」
「裏庭?」
「ええ、裏庭です。こちらです。」
裏庭にご案内し、もさもさと緑の葉っぱが生い茂っている。モーリさんはきょろきょろしている。
「モーリさん、実はこれについて、我が家に種とレシピが残っていて、それを試してみたらお砂糖らしきものができたのです。」
「な、この葉っぱが!?」
「いえ、葉っぱではなく、この土の下、ええっと抜いてみますね。」
すぽんと甜菜を抜いてみると、まるまると白い大根のような蕪のような甜菜が出てきた。
「これは家畜の餌の甜菜では?聞いたことがあります。甘味はするけど、あくが強くて食べられないと。」
「モーリさん、詳しいですね。そう、これはあくが強いのですが、そのあくを取り除く方法があるんです。実際作ってみますね。」
モーリさんは頷きながら後ろをついてくる。
「まずは甜菜を刻んで煮込みます。ここに木灰をいれて不純物と沈殿させますね。上澄みをそっと移動させて、この上澄みを煮込みます。この時あくがでるのでまめに取ります。これを煮詰めたら砂糖になります。今日はちょっと魔法で時間を進めてみますね。じゃーん。舐めてみてください。」
「ほ、ほんとうだ。甜菜からお砂糖が!」
「これ、甜菜を献上したらいいんですか?」
「献上するなら、いくつかの大きく育った甜菜と種とレシピですね。ああ、先日いただいたくっきというものもあれば献上すると良いかもしれません。あれはとても美味しかったです。」
「ええ、父の部屋の木箱を開けたら中から種がたくさんとレシピがあったので、それらも献上することにします。」
ということにしておこうと、昨日、木箱に山ほど種を呼び寄せて入れてみた。
いい感じになった。
トレジャーハンターの設定上のお父様。偽造工作ご協力ありがとうございます。