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「エリン、今日街に行ってみよう。エリンはふっくらしてきたし、少し背も伸びたので知っている人がいてもわからないと思うけど、春用のフード着ていこうか、この間可愛いのを作ったし。編み上げの靴も可愛くできたしね。」

「マヤ、やっと外出するのね。春用のワンピースも可愛く作れたから嬉しいです。」


そうだ、エリンに聞いてみよう。使用人雇ってもいいかって。

「エリンはうちに、使用人とか雇っても大丈夫?」

「使用人ですか。わたしは大人の人がまだ怖いけど、マヤが必要なら頑張ります。」

そうか、エリンはあの家で誰も味方がいなかったからまだ怖いのか。

「おじいちゃんやおばあちゃんぐらいのお年の方ならどう?」

「お年寄りの方なら大丈夫です。市場で優しくしてくださった方々もお年を召された方でしたから。あ。お母様が生きていた頃にいてくれた家令と侍女長は優しくて好きでした。あの頃は侍女も皆優しかったのです。みんな辞めさせられてしまって・・・」


そうか。探せないかな。当時の方。

「エリン、当時の方々探してみるね。」

探索魔法を使ってみる。エリンから聞いた情報をもとに少しずつ範囲を広げていく。

王都に居て欲しい。

あ、ひっかかった。王都の南西のこじんまりした邸で奥様と隠居生活されている?お二人以外の住人はいなさそうだ。


家令にもモーリさんと同じような手紙を送ろうか。

家に人が増えると召喚魔法とかエリンは素直にいいねーって終わったけど、他の人には正直どう説明していいのかわからないんだけど、エリンが懐いていた方だ。あたってくだけろかな。


「エリンの家令の方の家がわかったよ。少し遠いけど、一緒に行こう。」

「セバスのおうちですか!でも、セバスはお義母様に辞めさせられていて、わたしのこと恨んでいないでしょうか?」

「辞めさせたのはお義母様でエリンじゃないから大丈夫だと思う。とりあえず、会ってみようよ。ね。」

「はい、わかりました、わたしもセバスには会いたいです。」

「じゃ、可愛い服も着たし、行こうか。」


転移ではなく初めてゆっくり街を歩く。

昔テレビで見たノルウェーの街並みに近いような気がする。思ったより古いけど素敵な街並みだと思った。石畳がちょっと歩きにくいけど風が爽やかだ。馬車はそんなに頻繁には走ってはいないようだ。市場の方ではなく住宅街だからか少し静かで良い感じ。


子どもの足で30分ぐらい歩いて家令の家だと思う邸の前まで来た。呼び鈴を押して少し待っているとドアが開いた。

「お、お嬢様!?」

「せ、セバス、セバスー。」

エリンが走り出してセバスに抱き着くとぽろぽろ泣き出した。

そんなエリンを優しく抱えてセバスも涙目だ。


「エリンお嬢様、お亡くなりになったのだと噂で・・・生きておられて本当に良かった。こんな玄関先でなんですので、どうぞ狭い家ですがお入り下さい。」

エリンとセバスは手を繋いでいる。小さいけど、綺麗に整えられた心安らぐお家に入れていただくと、奥から奥方が歩いてこられた。


「エリンお嬢様!?」

「ま、まぁさ。マーサなの?」

わーんと泣くエリンにマーサと呼ばれた初老の女性がエリンを抱きしめる。

マーサはどうやら侍女長だったようだ。


そういえば、エリンはうちに来てから一度も泣いていなかった。

涙目にはなったことはあったけど、泣きはしなかった。

手作りしたり本を読んだりで楽しそうにしていたけど、本当はやっぱり泣きたかったんだな。

一緒に住んでまだ数か月、わたしじゃまだエリンの支えにはなっていなかった…。まぁ生まれてからずっと7年間一緒にいた人と比べても仕方がないよね。


泣き止んだエリンとセバスとマーサと話をする。

この人たちはエリンを裏切ったりしなさそうだって思ったので、偽エリン人形を作ってエリンが死んだことにした話をした。その際、わたしが錬金術や魔法を使ったこともさらりと伝えておいた。

お二人はエリンが無事だったという事実に喜び、偽造等には突っ込んでこられなかった。ご主人様は?とも聞かれたので、辺境で生きていると思う旨もお伝えした。で、こっからが本番だ。


「セバスさん、マーサさん、うちで働いてもらえませんか?」

わたしの家が、商人で家族が仕入れで全員亡くなって、今はエリンと二人で暮らしているんだという話もしてみた。お二人は子どもが二人で暮らしているということに驚かれた。

「お二人とも、この家から通いでもかまいせん。毎日じゃなくてもいいのでどうでしょうか。」

「エリンお嬢様がご苦労されている時、お助けすることができなかったこと、随分後悔いたしました。今回の申し出妻ともどもお受けいたします。」


「セバス!!マーサ!!」

エリンは再度二人に抱き着いていた。今後わたしがずっとべったりいるわけじゃない。

エリンを癒してくれる人が増えることは良いことだ。それに常識のある大人が傍にいることは非常に助かる。今後子ども二人で生きていくのは厳しいからね。


「セバスさん、早速ですが、エリンとわたし街の学校に通いたいと思っているので、街の顔役さんに手紙を書いてみました。これで大丈夫だと思いますか?」

取り出した封書をセバスに預ける。


「ご確認させていただきます。」

小さな手で書いたので、字はあまりうまく書けなかったのが悔やまれる。

「だいたい大丈夫ですが、お約束の挨拶や言い回しがありますので、そこはわたくしが追記させていただきます。このまま学校の手続きもさせていただきます。」

「ありがとうございます。」

「マヤ様、職場となるご自宅の場所を教えていただけませんか。」

「ここから北西の貴族街の外ぎりぎりのところにあります。クリント商会の家です。」

「な、クリント商会でしたか。ああ、この国でも上位に入る商会でした。仕入れ先で船が沈んで、借金は店をたたんで清算したが使用人すべて給与が払えず解雇することになって、幽霊屋敷になっているとの噂です。」


管理者の方が作った設定ちゃんと生きているんだ。凄い。でも幽霊屋敷か、1年ぐらい家から出ていないから、人が住んでいると思われなかったのかな。


「幽霊屋敷に見られていたんですね。中ではエリンと楽しく暮らしていたのですが…。」

「そうよ。セバス、マーサ、おうちはとっても素敵なの。貴族的なところはないけど、温かいの。それにたくさん物を作ったから、二人にも見てもらいたいです。」

「あー。子ども二人で暮らしているから、きちんとできていないことも多いと思う。必要なものがあったら用意しますから、そういうのを教えて欲しいんです。」

「任せて下さい。家を管理するのは得意でございます。」


良かった。あの大きな家に子ども二人で住み続けて社会に馴染むのは難しいと思い始めていたからね。わたしが大人の体だと大丈夫だったんだろうけど、こんなところで子どもでいることの弊害が。でも、若いっていいっていうことしよう。


セバスさんとマーサさんと取り決めして、うちに来ていただくのは1週間後、学校の手続きはその間にしていただけるとのことになった。エリンが今から待ち遠しそうだ。


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