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そうこうしているうちに、エリンがうちに来てから3か月経った。
毎日髪を手作りシャンプーと薄めたお酢で洗ってつやは出てきたけれど、何もしなかった3年間のお陰でかなり痛んでいる。
エリンにどうするって聞いてみると、切りたいって返事があったので、腰まであった髪を肩のあたりでばっさり切った。
ちなみにわたしの髪も肩を少し超えたぐらいなので、お揃いになる。
お揃いだったので、ゴムもどきを使って、お揃いのシュシュを作って、サイドの髪を真ん中で括って邪魔にならないようにしてみた。
姉妹みたいってエリンが喜ぶ。
異母妹はエリンの少しお高そうな髪飾りをすべて奪い取っていったらしくて、エリンはばさばさでいるしかなかったせいで、シュシュひとつで大喜びだ。
今は庶民だからこの程度でいいか。シュシュにビーズやレースをつけて可愛くしたりして、二人してしばらくはまって、お互いシュシュが10個以上できた。良きかな。
手芸熱が一通り落ち着いたころ、エリンは7歳からメイドのようにこき使われ、淑女教育をしていなかったので、勉強をしてみたいと言う。だけど、うちにある本だと専門的過ぎて文字だけでイラストが無いので読むのが厳しい。
よし、おばちゃんに任せておきなさい。
召喚魔法で日本の絵本に寄せたものでこっちの文字に変換した物を呼び出してみる。
ちょっと違うけど、お気に入りだった絵本の内容は正しく表記されていた。
絵が少し手書き風で必死に真似しましたっていうレベルだったけど、雰囲気は出ているし、エリンが喜んでくれた。こんなカラーの可愛い絵の本は無いらしい。
それを聞いたらエリンのために、覚えている絵本、ねずみの兄弟がスフレケーキ食べるものとか、可愛いくまがホットケーキ食べるものとか、可愛いどころを呼び出す。困ったさんシリーズや可愛い姉妹が傘を差しているのもいいかもしれない。
本のことなら任せておいて、食欲旺盛な、あおむしや、きらきらの魚の話も良いかもしれない。できるだけ綺麗なもの、可愛いもの、ほっこりするものをエリンに。
「マヤ、この芋虫なんて可愛いのかしら。指を入れる穴が空いているなんてすごいです。」
エリンは10歳だけど、メイドのように3年間こき使われてきたから、自分から何かをするのをためらうようなところがあった。でも手芸をして、本を読んだり、おままごとして笑ったり驚いたり表情がいろいろ出てきたのが嬉しい。
日々一緒にご飯を作ったり、手作りしたり掃除したり本を読んだりしているうちに、エリンも顔がふっくらしてきた。
でも見た目は8歳のわたしと同じぐらいだ。
成長期の虐待は本当ダメ。
エリンゆっくりでいいから、今からでもまだ間に合うからね。
エリンに栄養剤を飲ませ、肉食を増やし、野菜も果物もどんどん食べさせている。
もうぼろぼろではない。普通の女の子に見えてほっとする。