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可愛いワンピースを作った後にエリン用の財布用のポーチも作ってみた。
マジックバッグについて聞いてみると、お貴族様のおうちには2~3個はあるらしい。
エリンのおうちにもお父様用と緊急時用と執事用があったみたいだ。
また商人の家ならばもう少しあるかも?と言っていたけれど、そこは不明。そんなに貴重品というものでもなく日本でいえば車ぐらいの価値なんだろうか。
でも、わたしたちは見た目子どもだから、日常使いのポーチはマジックバッグなしで。巾着袋も作ろうか。レース編みもしてみたい。
エリンはレース編みは知らないという。だからかもしれないけど道具と糸を呼び寄せようとしたけど出て来なかった。こっちの世界レース編みって本当ないんだろうか。
丁度いい感じの加工しやすい木を呼びだして加工魔法でかぎ針を作ってみた。
かぎ針は簡単だからいいね。つい太いのから細いものまで何種類も作ってしまったよ。
レース糸は細い糸を数束か呼び出して錬金術で撚った物を作ってみた。色も一緒につけたので、なかなかいい感じに仕上がった。
エリンに目を作って一目ずつ編んでいくところを見せる。最初はかぎ針をどう持っていいのかわからなかったみたいだけど、ゆっくりして見せていけば、真似っこしながら編んでいくと慣れてきてだんだん早くなる。
ん?んん。こっちはこうで。とか独り言のエリンは夢中になっている。
わたしも小学生ぐらいの時にレース編みはまって、巨大なドイリー編んだんだよね。どんどん大きくなっていくのが楽しくて楽しくて。
今もエリンがそうだ。目がキラキラしている。
エリンは小さな花を作っている。巾着袋に何か装飾がしてみたいということで簡単なものを教えてみた。小さな繊細なパーツは1個作ったら複製でどんどん増やしておくことにしている。
刺繍糸と同じ25色展開、大きさも大きな物から小さな物もわたしの魔力に不足なし!ふふふ。手作りは大好きだけど、パーツが増えるのも大好きだ。小山となった花のパーツを見ているだけで幸せ。これをワンピースにつけようか、ハンカチにつけてもいいな。髪飾りを作ってもいいかも。髪飾りを作るならビーズも必要かな。
「マヤ、マヤ、ここはどうすればいいの?」
エリンが葉っぱを作りたいという。葉っぱは丸じゃないから初心者にはちょっと難しい。
エリンがどんどん新しいことをしたいのなら、レース編みの本を呼び出したい。昔かなり真剣に作ってきたから本を呼び出すのは出来そうな気がする。
「出でよ。レース編みの本、1冊」
出てきたよ。本。手書きの編み図がたくさん。写真は復元できていないけど、レース編みに関しては、編み図があれば大丈夫だ。これで大丈夫。
編み図の見方をエリンに教える。これが細編みでこの記号が長編みでと。
レース編みの編み図の読み解きはそれほど難しくないと思う。
だから、エリンは次この飾り襟が作りたいという。何度失敗してもいいから、どれだけ材料使ってもいいからね。エリンは笑う。エリンの3年間の寂しさを手作りが埋めてくれるといいな。
あー。花のモチーフの真ん中にビーズを飾りたい。
ビーズも呼び出しで来なかったので、原石から呼んでみた。
貴石や半貴石の原石。ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、水晶、カーネリアン、ペリドット、ターコイズ、アメジスト、メノウ、ラピスラズリ、トパーズ、ジルコン、ローズクォーツ、ブラックオパール、オニキス、ラブラドライト、真珠、アメジスト、アクアマリン、こっちの世界の名前は違うかもしれないけど、こういうのが欲しいと願う。
この世界の地に埋まっている石の種類で綺麗なものをどんどん呼び出し、加工魔法でビーズを作る。
それを複製でどんどん増やす。パワーストーンは日本にいる時から好きだったんだよね。
ストロベリークォーツとラブラドライトが特に好きだった。
手作りでパワーストーンのブレスも何本も作ったよね。懐かしい。
あの頃は自分で原石から加工するなんてできなかったけど、魔法万歳!なんでもできるのは本当幸せ。
ラブラドライトの輝き本当綺麗。こっちの世界にも似た石があって嬉しい。
ちなみにエリンはピンク色のローズクォーツが気に入ったみたいだ。
木でビーズを入れるケースを作る。透明でキラキラするビーズがケースに並びだすと、エリンのテンションがおかしくなってきた。飾り襟作りたい欲は横に置いておいて、今度はビーズに夢中だ。
そうだろ、そうだろ。ビーズは小さくて可愛くてキラキラしていて、それだけでいい。それがこんなにたくさん。テンション上がるよねー。
「マヤ、この小さくてキラキラしていて可愛いのは何ですか?これは何をするものなの?」
「エリン、これはビーズ、穴が開いているでしょ。ここに糸を通した針を通して、布とかに縫い付けたり、ビーズを繋げて指輪やブレスレット、チャームを作ったりするんだよ。」
「ブレスレット?チャームって何?」
あ、こっちの世界そういう言葉はないのか。じゃ。
「ブレスレットは腕輪のことかな。チャームは飾り紐みたいなものだよ。」
「わかった。1粒でもキラキラしているからそれだけで可愛くなりそう。」
とりあえず、エリンの造った花のモチーフの真ん中に花芯がわりに縫い付けてみる。小さな布の巾着が凄く可愛くなって、エリンはぴょんぴょん跳ねだした。
「マヤ、可愛い。これわたしが全部作ったのに、とっても可愛い。嬉しい。」
エリンが嬉しいのがわたしも嬉しいよ。
ビーズを作った後に残った原石も棚に並べておこう。
ひゃぁ。綺麗。綺麗。
こういうのが本当に好きだ。加工も複製も自由のままだ。
1個ぐらいお貴族様的なブローチでも作ってみようかな。
大き目のサファイアにダイヤモンドで取り巻いて、土台は銀でいいか。
金だと派手過ぎるんだよね。
後ろのピンも作って、サファイアにダイヤモンドも日本で売っていたようなカットにしたのでピカピカしていて、これもいい。
ここまで大きくてお高そうなものは自分では身に着けたりはしないけど、造って並べるといい。
異世界あるあるでは、こういうのに付与するんだよね。
『付与魔法取得』
とりあえず、いくつか練習するから出来上がったブローチを複製で増やしておく、付与すると便利なものはなんだろう。
お貴族様的なブローチだし、毒無効、状態異常無効、物理攻撃無効、魔法攻撃無効、とつけてみた。
サファイアが大きいためかすんなり付与できた。良し。
複製でできたものも一緒に3個ぐらい並んでいるのが良き。
後は転移に特化したもの、HPとMP常時微弱だけど回復するものとか作ってみた。
異世界あるあるといえば、魅了持ちのヒロイン。ということで、状態異常無効の付与を付与してピアスも作ってみた。
ピアスは各貴石1種類をダイヤモンドみたいにキラキラするタイプとカボションカットの地味なタイプを10個ずつぐらい作る。
魅了持ちのヒロインなんて物語への転生でもない限りそうそういるわけないと思うけれど、異世界あるあるは対処しておかないと。
面白がってその後全種類の石に状態異常無効を付与し、ずらりと並べて飾ってにやにやしたのは許して欲しい。
わたしががんがん貴石でアクセサリーを作っている隣でエリンもせっせとレース編みしていた。
エリンは器用だし、センスもあったみたいで、しばらくはまった。
寝食忘れてのめりこみそうになってしまった。
ビーズの編み図も呼び出した。エリンは布製品、刺繍、レース編み、ビーズ手芸とそれぞれの良さを生かしながら、巾着、ドイリー、飾り襟にワンピースの装飾、など作っていった。
エリンの生活がいっぺんに変ってしまって、エリンもどこかふわふわ落ち着かない感じだったけど、この手仕事のおかげで自分の好きなものを1つ取り戻せたようだ。
何かに集中することで、嫌だったことを1個ずつ忘れていけるのかもしれない。
手作りは自分の手で自分が思うようなものを作り上げていく楽しさがある。作っている時は無になれるし、自分が存在していることを無意識で感じ取れる大事な作業だと思う。
寝食忘れてとあったけど、栄養失調だったエリンにしっかり食べさせたのはいうまでもない。
わたしもエリンの手作業を見ているだけではなく、エリンと一緒に布手芸とレース編み、ビーズ手芸に加えて、可愛いボタンも作ったりした。
シンプルなワンピースも可愛いボタン一つでいい感じになるのだ。
木を加工魔法でボタンの形にして、花の模様を彫ってみたり、貝殻を呼び出して貝ボタンにしたり、残った貴石をボタンに加工してみたり、エリンのテンションがあがるのが可愛くてたくさん作った。手作りする人ってパーツとか材料がたくさんあるって幸せでどんどん増えていくんだよね。ボタンもケースに山ほど作った。次これで何を作ろうって考えている時がやはり楽しい。
エリンが自由に何でも作れるように布も刺繍糸やレース糸もビーズもボタンも増やした。工房の棚にずらりと並べて、並んでいるだけで可愛いー。自分のテンションも十分にあがった。
パワーストーンは昔から好きなので、ビーズより少し大きなサイズの玉を準備してエリンとお揃いで腕輪を作ってみた。
子どもの腕だしごつくならないように大人の半分ぐらいのサイズの球にしてみたので、繊細な感じがまた良し。
あー。一日好きなことだけをしているだけでいいなんて幸せ。