4話 てまりてまり
昼休みが終わってからは特に何も起きないまま放課後になった。
今日は火曜日。毎週火曜日と木曜日は両親が帰ってくるので、いつもの廃ビルにはいかないで帰宅しなくてはいけない。僕の両親は共働きで月曜日から金曜日まで仕事で土曜日と日曜日は休みだ。土日はよく二人で出掛けてるため家にはいない。他の平日にどうしているかは知らない。
「ただいま。」
帰ってきた事を知らせるために挨拶をしながら玄関を開ける。
「おかえり~。」
母が笑顔で出迎えてくれる。
「貴方~。蓮が帰ってきたわよ~。」
父ももう帰ってきているようだ。父が少し気だるそうに玄関に出てくる。
「おかえり、蓮。先週の木曜日ぶりだな。ちゃんと飯食ってるか?」
「ちゃんと食べてるよ。」
「そうよ!蓮にはちゃんと健康に気を付けるように教えていたんだから大丈夫に決まってるでしょ!」
これが両親が帰ってきたときの虎百合家の日常だ。
僕、虎百合 蓮は幼いころから両親から様々な教育を受けてきた。
一つ、丈夫な体になること
二つ、大きな声を出さないこと
三つ、両親に逆らわないこと
四つ、他人に自分の体を見せないこと
五つ、他人に助けを求めないこと
六つ、自殺してはならない
家族と食卓を囲み、少し休憩した後、僕は両親の部屋にきていた。
「クソがっ!」
きっと会社で嫌なことがあったのだろう。父が僕の腹を殴る。ヒュッと僕の口から空気が漏れる。
「クソクソクソクソクソクソ!」
執拗なまでに同じところを殴る。今日は余裕がないらしい。口の中に鉄の味がする。僕は我慢できずに吐血する。僕の血を見て少し冷静になった父は殴る場所を腹から肩に変える。ちなみに血を流すと後で鉄分のサプリメントを貰える。もちろん病院に連れていくことなんて出来ないからだ。
「ふぅ。」
30分ほどたって、父は満足したのか息を吐き、僕の脱臼した肩を治した。この次は母の番になる。
「ふざけんな、あのセクハラ親父!キモいんだよ!」
母は力があまりないので殴られ慣れている僕には痛くないが…
「ウザいんだよ!」
バシン!と母の手のひらが僕の頬を打つ。幼少期の頃は顔を傷つけないように顔には手を出さなかったが、僕が高校生になると、母の力じゃ僕に傷をつけられないのに気づいたのか、頻繁に顔を叩くようになった。顔を叩かれると視界がぶれるため気持ち悪い。嘔吐しそうになるが耐えなければならない。
夜が更けるが母の方がストレスを溜め込みやすいのかもう2時間を僕を叩いている。
あぁ…いつも通りの日常だ
僕、虎百合 蓮は両親のサンドバッグとして育てられた。この地獄から逃げ出したいと思うが、両親の教育が骨の髄まで染み込んでいて逃げ出すことはほぼ不可能だ。
誰か…僕を……殺して