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1話 黄色の天竺葵 前編
「君はなぜ彼を殺したの?」
「彼が私を愛していたから。」
僕はそれをとても美しいと思った。
「ついてない。」
大雨の中独りごちる。濡れて張り付いたシャツにびしょびしょの靴下が僕を少し不快にさせる。
「はぁ。ようやく着いた。」
あまりの雨の不快さに自然とため息が出る。ここは町外れの廃ビルの中、元々は有名企業の子会社のビルだったらしい。ちなみに五階建てである。電気はもちろん通っていないから屋上まで階段で行く。3階まで階段を上ったとき、ふとなにか大きなものを落としたような音が雨音に紛れながら微かに聞こえた。少し疑問に思いつつも古い建物だからどこかの天井が抜けたとかその程度だと思い特に気にも止めず屋上へ向かう。慣れた手つきで屋上のドアを開けると
そこには笑顔の少女がいた