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第7話:ライバルは女神様!

 よう。秋だ。

 今日は日曜日。休日はリビングでコーヒーを飲みながらまったりと過ごすのが日課だ。

 窓から射し込める日の光。穏やかな街の喧騒。実に落ち着く。


「いやぁぁぁぁあ!」


 コイツさえいなければ。


「秋クン!大変だよぉぉお!」


 ドタドタと騒がしい音をたてながらサラマンダーが走ってくる。

 アパートで走んなよ。


「どーした?」


「ままままままままままままままままままままままままままままままままままままままままままままま。」


 いや落ち着け。怪文書みたいだぞ。

 マンガのようにアタフタとしている精霊さんにコーヒーを差し出す。


「ありがとっ!ズズッ…ふぃー。」


 落ち着いたところでもう一度聞く。


「どーした?」


「うん!今ね、ポストを見に行ったの!」


 ああ。こいつは新聞のテレビ欄を見るのが好きだからな。毎朝欠かさずポストの確認を行っている。


「そしたらね。無かったの!新聞!」


 それだけの事であれだけ大騒ぎしてたのか。


「まぁ。そんな事もあるだろうよ。」


「でもねでもね!代わりにこんなのが入ってたんだよっ?」


 そう言って一枚のメモ用紙を差し出すサラマンダー。どこにでもあるような普通のメモ用紙だ。

 ん?何か書いてあるな。何々?


『新聞はいたただいた!返して欲しければ私の愛を受け入れよ。      春風の女神。』


 バカか。


「ね?大変でしょ?」


「ああ。違う意味でな。」


 『いたただいた』ってなんだよ。慌て過ぎだろ。

 しかし春風の女神…。イヤな予感がするな。

 サラマンダーははわはわと慌てている。

 たかが新聞でそこまでのリアクションをとって貰えれば春風の女神も満足だろうよ。


「春風…。春。まさか、アイツか?」


 ふとそう呟くと玄関のドアが勢いよく開く。


「正解だよっ!」


 サラマンダーは一瞬ビクッと体を震わせ、恐る恐る声のした方を向いている。

 俺はというと、頭を抱えて俯いていた。俺が最も苦手とする人物がそこにいたからだ。


「アッキー!逢いたかったんだよー!」


 その少女はバンッ!とドアを閉めると、こちらに向け一直線に跳んでくる。


 ここで説明しよう。コイツの名前は『小早川ハル』。俺とは違う高校に通う女だ。皆も薄々分かってると思うが、『春風の女神』はコイツだ。

 可愛らしい顔立ちに、大和撫子を彷彿とさせる綺麗な黒髪は腰まで伸びている。スラッとした身体はモデルのようだ。

 その外見からコイツの高校では『小早川ハル特攻隊』というファンクラブが設立されてるとか。しかしすげぇ名前だな。

 以上。解説終了。


「って、うわぁぁあ!」


 人間離れした滞空時間で俺に向かって飛んできたハルは、両手を広げて『受け止めてー』な状態でダイブしてきた。



「冗談じゃねぇ!」


 無論回避する。そこまで紳士じゃないんでな。つーかあぶねぇよ。


 ゴシッ!と地味に痛そうな音をたてて、リビングの壁に顔面から着弾する春風の女神。

 サラマンダーはポカーンとしながら呆けている。


「いたーい。酷いんだよぉ…アッキー。」


 壁に張り付いた顔面を引き剥がしながらハルが言う。あ、ちなみにアッキーってのは俺の事な。秋だから。


「人様の家に上がり込んでまずやる事が壁とキスとは、随分と情熱的だな。ハル。」


「違うんだよっ!ホントはアッキーとキスする予定だったんだよっ!」


 アホか。

 コイツは昔からこうだ。何かと言うと俺に猛烈アタックを繰り返してくる。


しかもそのアピールの仕方が非常識極まりない。今のが良い例だ。


「しゅ、秋クン!誰?この人!」


 サラマンダーが至極当然な質問をする。まぁ初対面だしな。


「あぁ。こいつは小早川ハル。他校に通う俺の知り合いだ。」


「違うんだよ。い、許嫁なんだよっ。」


 何故か顔を赤らめて頬を押さえてます。


「えぇっ!いいいい許嫁ぇっ!」


 何故か真っ青な顔でショックを受けてます。


「誰が許嫁だ。てめぇが勝手に言ってるだけだろ。」


「そんな事ないんだよ?いずれそうなるんだよ♪」


 ならんわ。


 サラマンダーはゴゴゴ…と黒いオーラを出しながら。


「ライバル出現。」


 とか言ってます。目がこえぇよ。


「つーかお前新聞返せよ。」


 目の前の新聞泥棒に『返せ』と右手を差し出す。


「むふふ。新聞を返すためには熱い抱擁が必要なんだよ?さぁ、れっつはぐ!」


「だ、ダメ!ダメー!のっとはぐ!のっとはぐぷりーず!」


 意味わからんわ。再びアタフタとし出したサラマンダー。


「?…そういえばアッキー。このコ誰?なんだよ。」


 ハルがサラマンダーを指差す。あぁ。そーいや紹介してなかったか。


 俺は事の一部始終をハルに話した。俺の性格を知り尽くしているハルは、特に不信に思う素振りも見せず、黙って聞いている。


「…つーわけで、今は居候してるってわけ。」


「ふーん。いーなぁ。ハルもアッキーと同棲したいんだよー。」


「アホか。」


――――――――――



 そんなこんなで今、ハルとサラマンダーは一緒にお風呂に入ってます。


 初めは何故かハルに対し敵対心をあらわにしていたサラマンダーだったが、ハルに何か吹き込まれたようで途端にフレンドリーになった。

 まぁ仲良くするのはいいんだがな。妙な影響を受けなければいいが。お互いに。


 しかしハルか。久しぶりだな。アイツの親は何とかって言う大企業の会長らしい。その関係でか親がハルの友人関係にまで口を出す事がよくある。

 『一流の人間が関わるべきは一流に限る。』

 昔、ハルの親父が言っていた言葉だ。

 アイツもアイツで色々と苦労している。

 そんな事情からしばらく会ってなかったんだが、久しぶりに現れたと言うことはそこら辺のすれ違いが解消されたって事なのか?まぁ詳しくは聞くまい。


 そんな事を考えていると、ハルとサラマンダーが風呂から出てきた。なんかもうすっかり仲良しだな。


「えー!ハルちゃんまだ行ってないのー?」


「そうなんだよー。気になってはいたんだよー?」


 何の話だ?


「今度一緒に行こうよ!ソフトクリーム山崎!」


 あぁ。あのメルヘンなソフトクリーム屋か。


「アタシのオススメはねー。『みなぎるメロスの裏切り』味♪」


 食べたら人間不信になりそうだ。


「えー。でもサラちゃんが言ってた『カレー味でウンコ』も食べてみたいんだよー♪」


 そりゃーウンコだ。


 キャッキャッと楽しそうに騒ぐ女の子組を眺めながらコーヒーを啜る。そろそろお昼時だ。どうせハルも食ってくだろうから、今日はピザでも頼むか。



 めでたしめでたし。


 …はい、薄々気付いてましたよ。


 スンマセン。ちゃんとツッコミます。


「ってサラさーん!?がっつり見えちゃってんじゃねぇかぁぁぁあっ!」


 見えない筈の精霊と遊んでいるハルに軽く現実逃避したくなった俺だった。



 新キャラ登場です。ここから秋クン、サラマンダー、ハルのドロドロとした三角関係が…。

 はい。始まるわけもありませんね。


 先日ポイントを入れて下さった方がいました。ありがとうございます!とても嬉しく思います。

 こんな作品でも読んでくれる人がいるというのはとても嬉しいものです。

 毎日アクセス数をチェックするのが楽しみで仕方ありませんよ。えぇ。


 それではこれからも『なちゅ☆りずむ』をよろしくお願いします。


        白月

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