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第32話:オール・キラーズ!~転~

久しぶりの更新です。

 大企業『ALL』を取り仕切る一族。小早川家。その本家の最奥『お仕置きの間』にハルはいた。

 一面白壁に覆われた正方形の間取り。窓1つ無い囲いの中には純白の椅子だけが取り残されたように置かれている。

 なるほど、『お仕置きの間』は伊達じゃないって事か。こんな何もない部屋に閉じ込められた日には頭がおかしくなりそうだぜ。


「ハル…ちゃん?」


 サラマンダーが恐る恐る口を開く。ハルと対面し数分も経とうとしているにも関わらず、俺たちの間には一切の会話がなかった。それはやっと出会えた友達との再開を噛み締める…なんて小綺麗な理由じゃない。誰もが唖然としてしまうほど、ハルに生気が感じられなかったからだ。


「…」


 サラマンダーの呼び掛けにも眉一つ動かさないハル。その視線はまるで人形のように床へと固定されている。


「しゅ、秋クン…」


 今にも泣き出しそうな顔でこちらを向くサラマンダー。それに対しコクリと頷き、ハルの元へと歩み寄る。


「ハル」


「…」


 駄目か。意識が完全にあっちの世界に行ってんな。とりあえず俺たちがいる事に気付いてもらわねぇと困る。


「少し痛いぞ」


 ハルに一声かけ、右手を振り上げる。


 パァンッ!


 渇いた音が部屋中に響き渡る。


「ぃ…」


 同時にハルが声を洩らす。乱暴な手だが効果はあったようだな。


「痛いんだよぉぉぉおぉおっ!」


「やっとお目覚めか?ハル」


「アッキーひどいんだよ!これはDVなんだよ!結婚するんだよ!」


 ゴメン。最後意味わからん。


――――――――――



「ハルは行かないんだよ」


 なんとか我に返ったハルだったが、気持ち良い位想像通りのセリフを吐きやがった。


「どうしてですのっ?」


「一緒に帰ろうよハルちゃんっ!」


 ウンディーネとサラマンダーが必死に説得を試みるが。


「帰るも何もハルの家はココなんだよ」


 これまた気持ち良い程の正論で流されていた。


「そ、それはそーだけどっ!でもハルちゃんはココにはいたくないんでしょっ?いたくないん…だよね?アレ?違う?違うパターンのヤツ?」


 ハルに流されまくり、色々と限界寸前のサラマンダーが首を傾げる。何丸め込まれそうになってんだよ。


「サラ。少し黙らっしゃい。…ハル様?ハル様は小早川家に縛られるのが苦痛なのではありませんの?」


 おお。流石はウンディーネ。うまく切り返したな。


「ハルはそんな事一言も言ってないんだよ」


「確かに言ってないかもしれませんわね。でもならば何故小早川家を飛び出したりしましたの?苦痛では無いと言うのであれば家出までする必要はありませんわ」


 それにしてもウンディーネは弱い所を突くのが上手いな。どっかの爆弾娘とはえらい違いだ。


「それは…」


「答えられませんの?」


 良いぞウンディーネ。さて、どう返してくる?


「それは…」


「それは?」


「昨日までのハルは子供だったんだよ。だから家出なんて馬鹿な事をしちゃったんだよ。でも今日のハルはもう大人なんだよ。だから小早川家を継ぐ事を誇りに思うんだよ」


 まさかの暴論キター!


「そ、そんな戯れ言がまかり通ると思いますのっ!?」


「通る通らないは関係ないんだよ。実際そうなんだから仕方ないんだよ」


「…ぐ…」


 不味いな。完全にハルのペースになってきた。

 ハルはどうしても俺たちを帰したいらしい。

 このままココにいればいずれ捕まる。そうなれば俺たちはタダでは済まないだろう。ハルはそれを知っているから、俺たちに迷惑を掛けたくないからこんなにも頑ななんだ。


「しゅ、秋様…」


 顔全体が『ギブアップ!』と叫んでいるような表情でこちらを見つめるウンディーネ。仕方ない。秘密兵器の投入だ。


「霧緒」


「はっ」


 緊張のせいか額にビッシリと汗をかいた霧緒が頷く。


「ひ、姫」


「おー。キリちゃんまで来てくれたんだよ?嬉しいけどハルは小早川に残るんだよ」


「し、しかし…」


「思えばキリちゃんには色々と迷惑を掛けたんだよ。これからも手紙くらいは書くから安心してなんだよ?」


「あ、ありがとうございます。…ではなくてっ!」


「特攻隊の皆にもよろしくなんだよ」


「はっ。失礼します!」


 ビシッと敬礼し、戻ってくる霧緒。


「…」


 一瞬俺と目が合う。


「あっ」


 ゴンッ!


「おぷぁっ!」


 鼻先を抑えてうずくまる霧緒。コイツは何をやってんだ。丸め込まれ方がスムーズ過ぎんだろ。


「皆もそろそろ帰らないと危ないんだよ。ハルはこれから『ALL』の業務とかを覚えなくちゃいけないからしばらく連絡は取れないけど、早く一人前になれるように頑張るんだよ」


 ちくしょう!せっかくここまで来たってのに、結局無駄骨なのかよ!

 自由に生きたい理想と、そうはいかない現実に苦しんでいるハル。こんな思ってもいないセリフを吐くハルを見るためにわざわざここまで来たってのか?俺たちは!


「秋クン…ハルちゃん、無理してるよね?」


「…」


 サラマンダーにも分かるようだ。ハルは間違いなく俺たちに救いを求めてる。でもそれじゃあ俺たちに多大な迷惑を掛けてしまう。ここでもハルは理想と現実の板挟みに苦しんでいるんだ。

 その証拠に…。


「ハルちゃんの顔…」


「一見すると笑顔ですわ。でも…」


 そう。俺たちに気付いてからハルはずっと笑顔だ。だが…。


「泣いてる」


 サラマンダーがポツリとこぼす。ハル本人は気づいていないだろうが、先程からハルの頬を雫が伝っているんだ。笑っているのに泣いている。ハルの心は今にもはち切れそうな位泣き叫んでいるんだ!


「…ないで下さい」


「何か言ったんだよ?キリちゃん」


 声を震わせながら呟いた霧緒にハルが問いかける。


「そんな表情(かお)しないで下さいっ!」


「ッ!」


 霧緒が叫ぶ。それによってハルも自分の頬が濡れている事に気付いたようだ。


「こ、これは違うんだよっ!ちょっとゴミが目に…」


「分かりますよ。姫のお気持ちくらい」


 慌てて涙を拭うハルを他所に語り始める霧緒。


「姫が小早川を継ごうが継ぐまいが正直俺にとっては些細な問題です。俺にとって一番大切なのは姫が笑っていられるのかということなんです」


「な、何を言ってるんだよ?ハルはいつでもニコニコなんだよ?現に今だって…」


「泣いてるじゃないですか」


「だからこれはゴミが…」


「姫の心が泣いてるじゃないですかっ!」


「…ッ!」


 霧緒の叫びがハルを黙らせる。明らかに動揺している様子のハル。


「今、貴女は笑っていますか?」


「…」


「笑って下さい。姫。貴女が笑顔でいられると言うならば、俺は喜んでこの場を去りましょう。しかし、もしもここが望まぬ場所だと言うのなら!」


 ここにきてようやく秘密兵器の本領発揮だな。霧緒の真っ直ぐな想い。それはどんな戯れ言や言い訳をも打ち砕く無敵の槍だ。


「…必ず俺が連れ出します。この身朽ち果てようとも!例え姫に嫌われようとも!貴女が望む場所へと!」


「…ぁ」


 つかつかとハルの目の前へ歩を進める霧緒。そして右手を差し出す。


「貴女は笑っていますか?」


「は…ハル…は…」


 身体を震わせ差し出された掌を見つめるハル。


「行きましょう。貴女の望んだ場所へ」


「ぅ…ぅあぁぁああぁあぁあんっ!」


 ボロボロと大粒の涙を流し泣き叫ぶハル。まるでようやく母親と再会できた迷子のように、霧緒にしがみついている。


「一件落着ですわね」


「よかったよかった!」


 精霊達も安心した様子で二人を見守っている。これで最後の難関、ハルの意地っ張りもクリアできた。後は小早川家を無事脱出すればミッションコンプリートだ。


「うっし!じゃあ急いで脱出…」


「そうそう都合良く廻らないのが社会というものだ」


「ッ!?」


 突然響き渡る声。この聞くだけで全てを押し潰すようなプレッシャーは以前にも感じた覚えがあるぜ。


「お父様…なんだよ」


「全く…いつの時代も2流3流は愚かで救いようがない」


 そこには大企業『ALL』会長。つまりハルの父親が立っていた。



 経過報告。


 小早川ハル:救出


 『ALL会長』小早川梅雨(ばいう):参戦


 ラスボス出現。


 小早川編もそろそろ佳境です。つーかなげぇよバーカって思っている方も多々いらっしゃるとは思いますがもうしばらく辛抱下さい。


        白月

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