第3話:遠距離は難しい!
「で。契約って具体的にゃどういう事なんだ?」
「あい。精霊は契約者の願いを叶えるの。契約者は代償として願いの大きさに見合った対価を精霊に支払うの。」
現在俺達はアパートの一室にいる。俺達ってのは、俺『立花秋』…あ、アキじゃないよ。シュウって読めよな。
それと「あい。」とか言ってるコイツ。全身赤一色の少女『サラマンダー』
コイツはなんと人間ではなく精霊なんだとか。
流れに身を任せてたらいつの間にか俺とコイツは契約を交わしてしまったらしい。んで、今は俺のアパートで詳しい話を聞き出してる所ってわけ。
「なるほど。で?俺は別にお前に助けてもらいたいとは思ってないわけなんだが。その契約ってのは解けるもんなのか?」
「あーそれは無理♪」
やっぱりネー!
なんでも精霊ってのは一度契約を交わしてしまうと、契約者の願いが成就するまで精霊界に帰れないんだと。
さらに迷惑な事に契約を交わした人間と精霊は魂がリンクするらしく、あまり離れてしまうと互いに心身が不安定になってしまうらしいんだ。
「らしいんだ。」
ケラケラと笑いながら笑う火精霊。
「てわけなんで居候ヨロシク♪」
ふざけんなコラ。
「お客さーん。今時こんなピッチピチギャルと1つ屋根の下で過ごせるなんて幸せもんだよー?サラマンダーはスゴいよ?万能だよ?床上手だよ?」
ぶはっ!
「おま…床上手て。」
「床掃除はもちろん板の張り替えまでできちゃうよ?」
やっぱり意味わかってませんでした。
あ。やっぱコイツ馬鹿だわ。
「…」
てゆうかコイツの言ってる事を全部鵜呑みにしてもいーんだろうか。冷静に考えるとおかしな事だらけだぞ。
試しにちょっと離れてみよう。
「えーと、サラマンダー…だっけ?」
「いやん♪サラって呼んで♪」
…。
「さ、サラ。契約の説明は分かった。でも魂がリンクしてうんぬんかんぬんの件がよく分からん。」
「もー秋クンって意外と頭カッスカスなんだね。」
捻り潰すぞ小娘。
「…た、試しにちょっと離れてみたいんだが…いいか?」
俺の提案を受けたサラマンダーは少しの間考える仕草をした後。
「あいっ!」
と敬礼しながら承諾してくれた。
――――――――――
「よーし。じゃあサラはそこから動くなよ?」
「あい!任せといて!アタシは動かない事に関してはちょっと名の知れた精霊なんだから。地震雷火事核兵器が来ても動かない少女。人々は彼女をこう呼んだ。テレクラ真理子と!」
動かない事関係ねー!誰だよ真理子って!
とりあえず実験の為に外に出た俺達は近くの公園にやってきた。
この公園は入り口が南北に2つあり、俺達は現在北側の入り口にいる。
本日のミッションはこうだ。
・サラマンダーを北側に固定待機させる。
・俺南に向かって走る。
・実験終了。
そんな流れだ。
「じゃあ行くぞ。絶対動くなよ?」
「任せといて!アタシは動かない事に関しては精霊界で500本の指に入る程の…」
「テラ・ダッシュ!」
頭カッスカス精霊は無視して実験開始♪
「ぉおおおぉおおっ!」
公園の北から南に向けて全力疾走する。なんか今日俺走ってばっかだな。なんて考えてるうちに南側入り口に到着してしまった。
「…」
「…」
特に変化ないようだが。
「…なんだよ。やっぱ嘘じゃねぇ…カッ!?」
結論から言おう。サラマンダーの言ってた事は正しかった。こ、これはマズい。離れてはいけないと言うのも頷ける。なんせ…
「こ、股間が…痒ひ…」
想像してくれ。何百匹というやぶ蚊が一斉に男のシンボルを…
「ギャァァァァア!痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い!」
さすがに夕方の公園で股間をボリボリ掻くわけにはいきません!ええ!いきませんとも!
必死に痒みに耐えながらふとサラマンダーの方を見ると。
「オッキャッパネロ!パッキャッパネロ!」
謎の宇宙語を泣きながら連呼してました。
どうやら人によって効果が違うらしい。
「メキャッピロッソ!ナマハムメローン!」
生ハムメロン!?
――――――――――
「アイヤー!ワタシ死ぬる思たアル。」
誰だてめぇ。
「どうやら契約が交わされたのは本当らしいな。」
まさかあんな恐ろしい目に遭うとは夢にも思わなかった。
「だから最初っから言ってんじゃん!秋クンてばホント頭カッスカスなんだから~。」
「…」
「何?どしたのカッスカス秋クン。」
「…」
「…」
アハハッ♪
「テラ・ダッシュ!」
「のぉぉぉぉお!秋クンなんで走ってくのぉぉおオッピラッキャ!チンスコシーサー!」
ふははっ!ざまぁみやがれ糞精霊がっ!てめぇには宇宙語がお似合いだよ!
「って痒ぅぅぅうぅううぅうぅう!」
皆さんこんにちは。作者の白月です。こんな未熟の塊のような作品を読んで下さった全ての読者様へ感謝申し上げます。
これからもなちゅ☆りずむをよろしくお願い致します。