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第25話:ファッキン大災害っ!

 ピンポーン。


 晩飯を済ませ、寝るまでの時間をまったりと過ごしていた俺とサラマンダー。そんな時ふいに鳴り響いたインターホンに、サラマンダーはトテトテと駆けていった。


「いやお前が行っても見えねーだろ」


 一般人にしてみれば透明人間同然な存在だからな。

 仕方なしに俺も玄関に向かう。


 玄関ではすでにサラマンダーが扉を開け、客と対峙しているようだった。えーと、客は…。


「…こんばんわ」


 黄色いクセっ毛を揺らし、なんだかモジモジしているシルフがそこにいた。


「シルフじゃん!どしたの?こんな時間に」


「…ぇと」


 サラマンダーの問いかけに対しても何て返せばいいのか分からない様子だ。ホントにどうしたんだ?


「まぁとりあえず入れよ」


「…おじゃまする」


 玄関で立ち話も何だしな。とりあえずリビングへと促していく。


「てゆーか何でわざわざ玄関から来たの?いつもみたいに転送してきた方が速いじゃん」


 確かに。サラマンダーの言う通りだな。いつもなら光のゲートを使って不法侵入してくるのに、何故今日に限って玄関なんだ?


「…それが常識だって、ウンディーネにきいた」


 おお。さすがは数少ない常識人の一人ウンディーネ。


「ふむ。それで?今日はどうしたんだ?」


「…ん、と」


 どう切り出そうか考えてる様子のシルフ。しかし何だってそんなにモジモジしてるんだ?

 尿意か?


「秋クンさいてー」


「だから思考を読むな」


 隣から冷めた視線を送るサラマンダーは無視し、シルフの言葉を待つ。こういう時は変に急かさない方がいいからな。


「…ぇと、ね」


 お。どうやらまとまったみたいだな。


「…このあいだは、ありがとう」


「ん?」


 何の話だろう。この間?


「もー!秋クンてば鈍感っ!亀虫より鈍感っ!」


「亀虫は嫌だな」


 どうやらサラマンダーには理解できたらしい。付き合いが古いからか?


「シルフはね、魔導疑似世界体験装置の時に助けてくれてありがとうって言ってるのっ!」


「魔導疑似世界体験装置?…ああっ!」


 アレだ。あのえせドラ○エか。なるほど、確かにあの時自爆しようとしたシルフを助け出したな。


「別にいいのに。気にすんなよ」


「…お礼、したい」



 お礼ねぇ。まぁそれで本人の気が済むならいいか。


「それは嬉しいな。どんなお礼だ?」


「…お礼は…」


「ア・タ・シ♪…痛っ!」


 割り込み精霊は小突いておく。


「…ギター」


「ギター?」


 ギターがお礼?


「えーっ!シルフギターの演奏聴かせてくれんのっ!?」


 サラマンダーが大げさなリアクションをとる。そういえばギターが得意ってウンディーネあたりが言ってたような。


「…そう」


 シルフはコクリと頷くと何やらブツブツと唱えだした。


「…召喚」


 一瞬、シルフの身体が眩い光を放つ。気が付くと、いつの間にか大きなエレキギターを構えたシルフの姿。

 いや、エレキギターはさほど大きくないな。シルフが小さいから大きく見えるだけか。


「シルフの演奏久しぶりーっ!」


 諸手を挙げて喜ぶサラマンダー。そんなに上手いのか?


「…じゃ、演奏する」


 軽くチューニングを済ませたシルフは、ギターを肩にかける。


「…」


 しばらくの間静寂が続く。どうしたんだ?


「シルフ?大丈夫か?」


「…」


 俺が声を掛けると、シルフは一瞬ピクリと身体を震わせる。


「シルフ?」


「ヒトの名前クソみてぇに何度も呼ぶんじゃねぇよアンちゃん」


「え」


 一瞬誰の声なのかが理解できなかった。


「なんだそのシケた面ぁよぉ?これからオレ様が神憑ったギターを弾いてやるってんだ!ファッキン最ッ高だろ?」


 変貌。これが一番妥当な表現だろう。ギターを掛けた途端にシルフが今までのシルフでなくなったような。

 鋭い眼光を光らせ、ニヤリと嘲笑うシルフ。


「いーかテメェら!オレ様が!このシルフ様が!最高にシビれるビートを聴かせてやるぜぇっ!いくぜ行くぜ逝くぜっ!」


 ギュィイイィインッ!


「ぅわっ!」


 ハイテンションでギターをかき鳴らすシルフ。その凄まじい音の波に大気が震える。


「ひぃぃぃっやっほぉぉおうっ!」


 恍惚の表情でピックを動かすシルフ。完全に自分の世界に入っているな。


「ひゃー!相変わらずすごい演奏だねーっ!」


 耳を塞ぎながらも何故か楽しそうなサラマンダー。


「おいサラ。これは一体どういう事なんだ?」


「えー!?何ぃ?聞こえなーい!」


「シルフはどうしちゃったんだよ!」


 ガンガンに弦を弾きまくるシルフを傍目に、サラマンダーにも聞こえるように大声で問う。


「あれー?言ってなかったっけ!シルフはギターを弾くと性格変わるんだよーっ!」


 そんなキャラ設定が。


「ヒャーッハッハァっ!最ッ高にファッキンな夜にしてやんぜーっ!」


 まさにボルテージマックスなシルフはさらに勢いよくギターをかき鳴らしている。その音の波により周囲に風が巻き起こる。


「え…ちょっ!」


 風はどんどん勢いを増し、辺りの物を全て巻き込んでいった。タンスも、テーブルも、テレビも。


「マジかよ」


 気が付けばシルフを中心に巨大な竜巻がうねりを上げている。

 無論ここは室内だ。風に流された家具が壁や床に激しくぶつかり、泣きたくなるようなキズを作っていく。


「すごーい!シルフかっこいー!」


「煽るな!つーかどーやったらシルフを止められるんだっ!」


 このままでは10分とかからずにこの部屋は崩壊するぞ。冗談抜きで。


「んーとねー!シルフの意識をロックから切り離せばいいのっ!」


 意識を切り離す?よく分からん。


「簡単に言うと思いっきり照れさせればいいのっ!」


「なるほどな」


 俺は意を決してシルフに近づく。竜巻によってほんの少ししか近寄れないが、こちらの声さえ聞こえれば十分だ。


「シルフーっ!」


「あぁん?なんだいアンちゃん!せっかくクソッタレに逝きそうだったのによー!」


 よし。声は聞こえたようだ。

 行くぜ。


「この間お前を助けた時、近くで見たお前は最高に可愛くて思わず抱きしめたくなったぞーっ!」


「なっ!」


 刹那。演奏が止まり風が止む。


「やったか!」


「…」


 ギターを抱えたまま立ち尽くすシルフ。俯いておりその表情を伺うことはできない。


「し、シルフ?」


「…く」


「え?」


「…ファック!」


 真っ赤な顔でこちらを睨み付けたシルフは、涙目になりながら魔法を放った。


「よっしゃ成功!ってうわぁぁぁあっ!」


 何とか演奏を止める事に成功した俺は、シルフの放った魔法によりぶっ飛ばされるのだった。



――――――――――


「…ごめんなさい」


 しゅん、と俯きながら消えそうな声で頭を下げるシルフ。


「気にすんなよ。悪気があってやった事じゃないんだし」


「そうそう!シルフの演奏最高だったよっ!」


 完全に落ち込むシルフを必死で励ます俺とサラマンダー。さっきからずっとこんな感じだ。


「確かにギターカッコ良かったよ。また聴かせてくれよな?今度は外で」


「…わかった」


 フッと微笑み、シルフは帰っていった。


「さて、とりあえず後片付けだな」


 竜巻によってグチャグチャにされた室内は、まさに台風が過ぎ去った後のようだ。


「秋クン」


 ふいにサラマンダーに呼ばれる。何事かとそちらを振り返ると、何故かギラギラとした眼光のサラマンダーが睨み付けていた。


「な、なんだよ」


「さっきシルフに言ってた事、どういう事?」


 さっき?ああ。最高に可愛くてうんぬんのヤツか。


「ああでも言わないとシルフを止められなかっただろ?」


「嘘だっ!秋クンはシルフの事好きなんだっ!」


「はぁ?」


 何言っちゃってんのコイツ!


「秋クンのチャラ男ーっ!」


「ぉわっ!待て待て!待…ぅわぁぁぁあっ!」


 何とか台風の直撃を堪えきった我が家は、思わぬ方向からの大火災に巻き込まれるのであった。



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