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第22話:ハリケーン・ロック!

「成る程。貴女もお爺様に言われてサラの監視役になったのですわね?」


「えーっ!あのジジイどんだけアタシが信用できないのよっ」


 オッス。秋だ。

 前回まさかのご都合主義により人間界に現れたシルフ。今はサラマンダー、ウンディーネと何やら話をしている。

 話をしているって言っても9割方サラマンダーとウンディーネが喋ってるんだがな。

 当のシルフはと言うと。


「…そう」


 こんな感じでたまにぽつりと呟く程度だ。


「でもシルフも相変わらずシャイだよねー」


「そこがシルフの可愛いところですわよ」


「…テレる」


 シャイ…ね。そのシャイなコが初対面の俺に向かって放った一言がファックとは。


「あっ!シルフに紹介するねっ!あっちでこの世の終わりみたいな顔してるのが秋クンだよっ!」


 どんな顔だ。


「サラの契約者ですわ。監視役になったからには色々と関わる機会が多くなりますわよ。挨拶しておきなさいな」


「…わかった」


 ん?シルフがこちらに歩いてきたぞ。どうやらきちんと挨拶してくれるようだな。

 多分さっきのはちょっとしたジョークだったんだな。うん。


「…ボク。シルフ」


 相変わらず眠そうな表情でシルフが呟く。なんだかんだで根は良いコなのかもな。


「ああ。俺は秋。よろしくな?」


「…ん」


 挨拶を終えた俺たちのもとにサラマンダーとウンディーネがやってくる。


「シルフはとっても恥ずかしがり屋さんだから気をつけてねっ!」


 気をつけて?どーいう意味だ?


「まぁ、これから仲良くしてくれよな?」


 そう言ってシルフのアタマを撫でてやる。

 ボサボサの黄頭は意外と軟らかく、女の子らしさが伝わってくる。


「…っ」


 瞬間。シルフの体がビクリと震える。


「あっ!」


「マズイですわっ!」


 サラマンダーとウンディーネが同時に声を上げた。


「どうしたんだ?」


「…風魔法『ハウリング』」


 シルフが何かを呟いた瞬間。ゴオッと風が巻き起こる。


「なっ!?」


 まるで雄叫びを上げているような轟音と共に風の塊が俺の身体にぶつかり、弾き飛ばした。

 完全に宙に浮いた俺の身体は風に流されるままにリビングの壁へと叩きつけられる。


「秋クンっ!」


「いちち…何だよ今のは」


 駆け寄ってきたサラマンダーに腰をさすりながら問いかける。


「だから気をつけてって言ったじゃん!シルフは恥ずかしがり屋さんなんだからっ!」


「慣れていない人に触られると緊張がピークになってしまいますのよ」


 サラマンダーに続いてウンディーネが説明する。

 なるほどな。俺が頭を触ったから緊張がマックスになったのか。


「…大丈夫?」


 ふと気付くとシルフが申し訳なさそうにこちらを見つめていた。

 一応罪悪感はあるようだな。


「ああ。大丈夫だ。悪かったないきなり触っちゃって」


「…気にしない」


 うん。良いコだ。


「それより秋クン!サラマンダーは餓死しそうです」


 そういえばそろそろお昼時か。


「おし。じゃあ昼飯にするか。ウンディーネとシルフも食ってけよ」


「お世話になりますわ」


「…ごはん」


 さて、今日は何を作ろうかね。


「秋クンっ!隠し味に魔導調味料『ホッペオチマクール』はどう?」


「いらん」


 ちょっと使ってみたいが。



――――――――――


「ふぃー。食った食ったぁ」


 サラマンダーはお腹をポンポン叩きながら満足気だ。


「ごちそうさまですわ」


「…ごち」


 残りの二人もペコリとアタマを下げる。


「あっ!見てみてっ!『ノンカーブス』が出てるよっ!」


 興奮した様子のサラマンダーがテレビを指差す。

 見るとお昼のワイドショーに5、6人の若者が新曲について語っていた。どうやらコイツらが『ノンカーブス』らしい。

 俗に言うV系バンドのようで、メンバーは皆個性的なメイクを施している。ちなみに全員綺麗なストレートヘアだ。

 ナメんな。


「そーいやシルフもロックが好きなんだってな?」


「…すき」


 見た目は確かにパンクだが、他にロックっぽいイメージはないよな。


「シルフはねー。ギターがすっごい上手いんだよっ!」


「ギターを持った時が本来の姿ですわ」


 へぇ。人は見かけによらないもんだな。


「そんなに上手いのか?なら今度聴かせてくれよ」


 シルフはフルフルと首を振っている。


「あとねー。歌もすっごい上手いんだよー」


「へー、そりゃ是非とも聴いてみたいな」


 フルフルフルフル。壊れたオモチャのように首を振り続けるシルフ。

 ちょっと可愛いな。


「今度シルフのリサイタル開こうよっ!」


「久しぶりにシルフの美声が聞きたいですわ」


「そりゃ楽しみだ」


「…」


 ん?急に首を振らなくなったな。どうしたんだ?


「おいシルフ?大丈夫か?」


「…ファック!」


「ちょっ!シルフっ!?」


「言い過ぎましたわっ!」


「お助けぇぇぇえっ!」


 恥ずかしさが絶頂を超えたシルフによって彼方へと飛ばされる俺たちだった。



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