第21話:まさかのご都合主義!
ミーンミンミン。
日を追う事に気温が下がり、夏も過ぎ去ろうとしている最中。セミの声もどこか元気がないように感じる。
季節は秋へと移ろうとしているようだな。
ギラギラと燃え盛る太陽ですらその輝きを自粛し始める季節。そんな中我らがサラマンダーさんはというと。
「お~ぅいえ~!雨の日は憂鬱で~い♪」
よく分からん歌にハマってました。
なんでも街で偶然流れてた曲に一目惚れしたんだとか。
えーと、確か曲の名前は…。
「『天然パーマリスペクト』っ!」
らしい。
「べいべ~♪天然は神~♪養殖は外道さ~♪バカにしない~でよ~♪」
天然パーマの少年の心情を歌ったロックチューンなんだとか。
「すっかりハマっちまったみたいだな」
「うんっ!天然パーマへの複雑な想いを歌った詞に心打たれたの」
全国の天然パーマも心強いだろうよ。
お前が直毛でさえなければな。
「そーいやその曲歌ってる奴ら何て名前だっけ?」
「んーとね。『ノンカーブス』」
馬鹿にし過ぎだろ。
「それにしてもお前がロックにハマるとは意外だ」
イメージ的には童謡がしっくりくる。
「どちらかと言えば童謡がピッタリですわ」
「ははっ。俺も今同じ事を考えてたよ」
「あら、奇遇ですわね」
「うん。つーかいい加減不法侵入やめろコラ」
隣に座っている青アタマを小突いてやる。
「痛っ!これが噂のDVですのね」
どっかで聞いたセリフだな。
「あーっ!ウンディーネ!」
天然パーマの世界から帰ってきたサラマンダーがウンディーネを発見して騒ぎ出す。
「ご機嫌ようサラ。天然パーマにハマってるらしいですわね」
「まあね」
微妙に違うけどスルーしておく。
「それにしてもロックとは…貴女もシルフみたいになりますわよ」
「シルフほどロック馬鹿じゃないよーだ」
そうだな。こいつはただの馬鹿だ。
「ん?シルフ?そのコも精霊なのか?」
初めて聞く名前だ。と言っても俺が知ってるのはチャライーナくらいだが。
「うんっ!シルフはねー、風を司る精霊なんだよっ!」
「まぁ私たちの仲間のようなものですわね」
サラマンダーとウンディーネが交互に説明する。
「そのシルフってのもロックが好きなのか?」
「ええ。シルフは真性のロック野郎ですわ」
苦笑しながら話すウンディーネ。
「シルフかぁ。懐かしいねー」
「私も貴女の監視役になってからは会ってませんわねぇ」
昔を懐かしむように物思いにふけるサラマンダーとウンディーネ。
二人の様子を見るにシルフってコとはかなり親しい間柄のようだな。
「会いたいなぁ。人間界に遊びに来たりしないかなっ!?」
「そんな都合の良い話ありませんわよ」
有り得ない。と首を振るウンディーネ。
しかしその時、丁度サラマンダーとウンディーネの間あたりに光輝くゲートが現れた。
「ひゃあっ!何なにっ!?」
「これは…転送ゲート?」
この展開は…。
光のゲートはみるみるうちに肥大していき、輝きを増していく。
「誰か出てくるよっ!」
サラマンダーの言う通り、光の中に人影が見える。
成長したゲートはやがて眩い光を放ちながら消滅する。
その跡には1人の少女が立っていた。まさかこのコが…。
「シルフっ!」
まさかのご都合主義キター!
「…」
シルフと呼ばれた少女は無言で辺りを見回している。
精霊ってのは皆身長が低いのだろうか。サラマンダーやウンディーネと同様に、シルフも幼稚園児のように小さな体躯だ。
ボサボサの頭髪は黄色いクセっ気で何とも言えない個性が溢れている。
黒革の着衣を纏っており、所々に黄色がさしてある。実にパンクな格好だ。
常に眠そうな表情からは無気力さが感じられる。
「…」
俺がまじまじと眺めていた事に気付いた様子のシルフは、じっとこちらを見つめている。
「や、やあ。君がシルフか。俺は秋、サラの契約者だ」
「…」
俺が自己紹介をしても、シルフは黙って俺を眺めている。無口なコなのか?
ひょっとしたら人見知りなのかもしれんな。もしそうなら俺から歩み寄らねばなるまい。
「よろしくな?」
とりあえず握手を求め手を差し出す。
シルフは差し出された手に目もくれず、ただ俺を見つめている。 そしてただ一言。ぽつりと呟いた。
「ファック」
「んなアホな」
まさかの第一声に普通に突っ込んでしまうのであった。
はい。新キャラ登場です。
その名はシルフ!性別は女です。彼女の今後にご注目下さい。
ちなみに作者は天パーです。
白月