第2話:契約と精神的死
「つまり。お前は火を司る精霊で、俺を助けるためにわざわざ精霊界ってところからやってきたと。」
「いやーん!お前なんて、他・人・行・儀♪サラって呼んで~」
「…」
「呼んで~」
「…」
「呼んで~」
「…」
「呼んで~」
めんどくせぇっ!
「つまりそういうことだな?サラ。」
「あい。つまりはそういうことなのです。」
何故か敬礼する少女。
さっきは気が動転して分からなかったが、一見人間の女の子に見えるこの精霊。しかしよく見ると所々が人間とは異なっている。
まず髪だ。炎のように赤い頭髪。いや、赤いというより…紅い。深紅のショートヘアだ。
それと目。瞳が赤い。よくイギリス人とかは瞳が青いっていうけど、赤い人間はまずいないだろう。
紅い髪に赤い瞳。それに真夏だというのに真っ赤なポンチョを被っている。見てるこっちが暑いわ。
容姿はガキのくせに右耳にはピアスが揺れている。ご丁寧にこいつも真っ赤な宝石が付いている。ルビーか?
「うん。まぁせっかく来てくれた所悪いんだが帰ってくれ。お前必要ない。」
「がっびーん!」
マンガみたいなリアクションの自称火精霊は両手で顔を挟んでショックさをアピールしている。
「嘘!嘘だよ秋クン!」
「な、なにがだ。」
半ベソでしがみつくな!
「秋クンの人生は冷えきってる筈だよっ!」
こりゃまた手厳しい。ぶっ殺すぞ。
「だって秋クン!今現在友達と呼べる人間が1人もいないじゃないっ!」
グサッ!
<秋は精神に108のダメージを受けた!>
「しかも過去に起こしたある事件のせいでクラスはおろか学年でも完全に浮いた存在じゃんっ!」
ズババッ!
<秋は精神に225のダメージを受けた!>
「さらに両親には愛想を尽かされて現在は1人暮らし。お金が無くなった時くらいしか親に電話すらできない状況じゃん!」
ズビシャドゴゴグシャラリーン!ぱい~ん!
<会心の一撃!秋は精神に999のダメージを受けた!秋は死んだ!精神的に死んだ!>
「これでも秋クンの人生は冷えきってないって言うのっ!?」
「はい、スミマセンでした。私の人生は南極よりも冷えきってます。コキュートスです。寒いです。」
あれ?変だなぁ。ハハッ!涙が止まらないや♪
「ね?だからアタシが助けてあげるよ♪」
何故だろう。この時俺の目にはコイツが女神に見えたんだ。
「だから居候させて♪家賃食費その他全部秋クン持ちで♪」
前言撤回。疫病神でした。
こうして俺はサラマンダーと契約を交わした。
え?契約?
「一瞬でも精霊と人間の利害が一致したら即契約成立だよ♪」
前言撤回。死神でした。